「それにしても、桂さんとさんって本当に仲良いですよね」

なんだかんだと騒動を巻き起こしつつも、漸く帰って行った桂とを見送った新八は、ため息混じりに・・・―――けれどどこか感心したようにそう呟いた。

そんな呟きに、疲れ果てた様子を隠そうともしない銀時が、気のない様子で相槌を打つ。

「ああ?・・・まぁ、そうだな」

「でも意外ですよね。さんって確かに悪い人ではないんですけど、やる事めちゃくちゃだし手段選ばないし・・・。桂さんって真面目だからそういうタイプは好きじゃないと思ってましたけど」

「ああ、そうだな」

「それにさんも、桂さんって真面目は真面目だけどちょっと抜けてるとこあるし、融通利かない人っぽいし、冗談通じないところもあるし・・・。そういうタイプって好きじゃないと思ってましたけど」

「ああ、そうだな」

「・・・銀さん、人の話聞いてます?」

めちゃくちゃに散らかった部屋を片付けながら話をしていた新八は、変わりばえのしない銀時の返事に恨めしげな面持ちで視線を向けた。

っていうか、どうして僕だけが片付けしてるんですか。という思いも含まれていないわけではなかったけれど。

しかしそんな新八の無言の訴えなど気付く気はさらさらないのか、銀時は床に放置されていたジャンプを拾い上げると大きく欠伸を1つ。

そうして手にしたジャンプをぱらぱらと捲りながら、面倒臭そうに相槌を返した。

「あー、聞いてる聞いてる。ヅラとだろ?―――まぁ、昔っから仲良かったわけでもねーぞ、あの2人は」

「え、そうなんですか!?」

「ああ。ヅラの奴は昔っからの事気に掛けてたみたいだけど。ほら、アイツって優等生タイプだから。でもなぁ・・・、はヅラの事毛嫌いしてたぜ」

「えぇ!?」

思いもよらない情報に、新八はこれ以上ないほど驚きに目を見開いた。

確かに銀時の言う通り、桂はそういうタイプだろう。―――だから桂に関する情報にそれほど意外性は感じなかったけれど。

しかし今あれほど仲が良い・・・もっと言えば、桂に対しては過保護なくらいのの様子を見ていれば、銀時の言葉はにわかには信じがたい。

けれど普段のを見ていれば、そちらの方が真実味があるのも事実だった。―――まさに今、自分がそう感想を漏らしたのだから。

そんな新八をチラリと横目に見やり、銀時は更に言葉を続けた。

「どっちかってーと、は俺や高杉の方が仲良かったんじゃねーか?まぁ、高杉の場合はアイツが妙にの事気に入ってただけだが、の方も別に拒否はしてなかったし」

「高杉って誰ですか?」

「あー、昔馴染みだよ」

聞き覚えのない名前に首を傾げれば、銀時は面倒臭そうに手を振ってジャンプに視線を戻す。―――どうやら高杉なる人物についての説明をする気はないらしい。

「ともかく、はヅラの事マジで毛嫌いしてたぜ。やる事成す事口出ししてくるわ、やれ女らしくなれだのもうちょっと慎みを持てだの、俺が聞いてても煩いくらいだったからな〜」

自分が言われていたわけでもないだろうに、心底嫌そうに眉を顰める銀時を見返して、新八は乾いた笑みを浮かべた。

新八がその場にいたならば、お前はの父親か。という突っ込みを入れただろう、きっと。

「へ〜・・・。桂さんなら解る気もしますけど。―――それじゃ、そんな2人がどうやって今みたいに仲良くなったんですか?」

「・・・さぁな。いつの間にか毛嫌いしなくなってて、いつの間にかよく一緒にいるようになってたからな。俺もまさか、攘夷戦争終わった後もあいつらが一緒にいるとは思ってなかったけどな」

どこか遠い目をしながらそう語る銀時を見つめて、新八は思わず口を噤んだ。

なんとなく・・・なんとなくだけれど、口を挟んではいけないように思えたのだ。―――もっとも、その理由までは解らなかったけれど。

しかしすぐさま銀時はいつもの表情へと戻り、それに何故かホッとして新八は改めて口を開いた。

「・・・いつの間にか、ですか」

「でもまぁ、そんな事どーでもいーんじゃねーの?今あいつらが一緒にいるって事に違いはねーんだから」

「それはそうですけど・・・」

「ただ1つ言える事は・・・」

「言える事は・・・?」

意味ありげに言葉を切った銀時を食い入るように見つめて、新八は掃除をしていた手が止まっている事にも気付かず、ググッと身を乗り出す。

それを知っているのか知らないのか、銀時はジャンプを捲っていた手を止めて、彼にしては珍しく穏やかな笑みを浮かべた。

と一緒にいるようになってヅラの奴には余裕が出たし、ヅラと一緒にいるようになっては穏やかに笑うようになった。―――それだけは確かだ」

「銀さん・・・」

銀時の声に穏やかさや優しさが滲んでいる事に気付いて、新八も釣られてやんわりと微笑む。

昔の桂やの事は知らないけれど、今の2人が一緒にいる事は確かだ。―――2人の雰囲気が、ピッタリと納まっている事も。

桂の世間知らずなところをが補佐し、の自由奔放なところを桂が宥めているのも。

「銀ちゃん、実はちょっと悔しいアル」

「うるせーぞ、この酢昆布娘」

なるほどと1人納得していた新八を他所に、今まで静かに話を聞いていた神楽が、からかうようにそう声を上げる。

それに不機嫌そうな表情を浮かべて、銀時はジャンプを顔に乗せると長いすに寝転がった。

 

一緒にいる理由


第十七訓のその後の万事屋での会話。

今は仲の良い2人の、意外な過去。(でもないか)

いつかその頃の2人と、主人公の心境の変化を書いてみたい。(笑)