「それで?わざわざ助けにきてくれるなんて・・・何かあった?」

の背に乗ってクイーン・ジョーカー・二世号の上空に待機して、は訝しげにそう聞いた。

の千里眼を使えばが今どこで何をしているのかはすぐに分かるし、彼の戦闘能力を持ってすれば先ほどのように船の一部を破壊して侵入するのもわけない。

それなのにが趙公明に拉致されても行動に移さなかったのは、がそれほどピンチではなく・・・―――寧ろその状況を楽しんでいたからだ。

しかしそんながああいう方法をとってまでを連れ出したのなら、それだけの理由があるのだろう。―――はそういう想いを込めて、に質問したのだ。

『まぁ、それほど大変な事が起こったって訳でもないんだがな。ずいぶんと珍しい奴が崑崙から降りてきたから一応知らせとこうと思って・・・』

は言葉を濁しながらも、ある方向へチラリと視線を向けた。

同じように視線を向ければ、クイーン・ジョーカー・二世号の傍に佇む人の影。

はしばらく考え込むようにその影を眺めていたが、ハッとその影が何者なのかを察し、慌ててに命じた。

「急いであそこまで行って!!」と。

 

黄天祥くんの冒険

 

「久しいな、・・・」

ヒラリと舞い降りたとその背に乗っているを見て、竜吉公主は小さく微笑んだ。

「・・・こんな所で何やってるの?」

そう問い掛けるの顔は、いつもと違って真剣そのもので。

竜吉公主は困ったとばかりに眉を寄せて微笑み、どう答えようかと思案していた時、彼女の後ろから2人の少女が顔を出した。

「公主様は土行孫様に借りを返すために、ここに参られたのですよ」

竜吉公主の代わりに応えたのは、以前土行孫に助けられたという碧雲。

そしてもう1人の少女・赤雲はにっこりと微笑みながらの前まで来て一礼した。

「お久しぶりです、師叔」

「・・・久しぶり。元気そうで何よりだわ」

は頭を下げた赤雲の頭をポンポンと軽く叩き、頬を緩めた。

と竜吉公主。―――2人の接点はそれほどないように見えるが、周りが知らないだけで実は茶飲み友達という関係にある。

その体の弱さ故にほとんど外に出られない竜吉公主の元に訪れては、他愛ない世間話を肴にお茶を濁す。

そう頻繁ではないが、それでも長い時間の中でその習慣は未だに残っている。―――最もが崑崙山を降りた後は、一度も顔を合わせていないが・・・。

話によると、竜吉公主は昔土行孫に弟子を助けてもらった恩を返したいと機会を窺っていた。

そんな時、土行孫が趙公明に捕まりピンチだという事を知ってここまで来たのだという。

「無茶ばかりするんだから・・・」

赤雲からここに至るまでの事情を説明してもらい、は渋い顔で竜吉公主を見た。

心なしか竜吉公主の顔色が悪い。

それもそうだ。―――本来ならば崑崙山を出るだけでも、彼女の身体にはキツイ筈なのだ。

その上、人間界に来るなんて・・・―――それはまさしく、毒を吸い続けているようなものだ。

はそっと手を伸ばし、竜吉公主の頬に手を当てた。

ふんわりと柔らかい風が竜吉公主の周りを包み込むと、少しだけ顔色が良くなったようだ。

「・・・かたじけない」

「そんなことはいいから、さっさと用事を済ませて帰りなさい。私だってこれくらいしかしてあげられないんだから・・・」

そう言ってはゆっくりと竜吉公主の頬から手を離す。

人にあまり関わろうとしない

彼女が崑崙山で好きで関わってきた人物は、十二仙と太公望・・・そして竜吉公主位だろう。

その中でも(太公望はさておき)、竜吉公主のことをはとても気に入っていた。

こうして無意識の内にも手を差し伸べてあげたくなる位に・・・。

それがどうしてなのか、は話そうとしなかったが。

「折角会えたのに残念だが、私はそろそろ行かなければならない。先ほど魂魄が飛んだのも見えたしな・・・」

その魂魄が誰のものなのかは分からなかったが、早く行かなければ折角ここまで来た意味がなくなってしまうかもしれない。

「・・・分かってると思うけど」

「ああ、無茶はしない。私の実力は知っているのだろう?」

そう言われると返す言葉がない。

は苦笑気味に笑うと、クイーン・ジョーカー・二世号に向かう竜吉公主と碧雲・赤雲の姿を見送った。

彼女の体調には心配するべきところは山程あるが、彼女が封神されるという心配は皆無だ。

は小さくため息をつき、さてこれからどうするか・・・と視線を彷徨わせた。

そして水面に視線を移して・・・―――そこにあった人物の姿に思わず頬を引き攣らせる。

「・・・・・・これは、また」

また厄介なことが起きそうだと、は思わず天を仰いだ。

 

 

太公望たちがクイーン・ジョーカー・二世号に乗り込んでからしばらく経った頃、天祥は泳いで船へ渡り、上がりこんだ。

「なぁ〜んか変なのがいっぱいあるなぁ。――――――うわぁっ!!」

キョロキョロと辺りを見回していると、突然後ろから襟首を捕まえられ大きな声を上げてしまい、思わず手で口を抑えてゆっくりと振り返った。

襟首を捕まえられているので完全には振り向けなかったが、そこにいたのは―――。

「こんな所で何やってるのかな?」

姉ちゃん!?」

自分の父親と一緒に人質として連れて行かれたを目の前に、何がどうなっているのか分からず、思わず目をぱちくりさせた。

「逃げ出して来られたの!?」

「・・・まぁ、そんなところかな」

実際には少しだけ違う。―――最初からは人質でもなんでもなく、ただお茶する為だけに連れて行かれたようなものだからだ。

それでもそんなことをわざわざ説明する必要もないし、逃げてきたのは確かなのだからとはそう返事した。

「それで?天祥はお父さんを助けに来たの?」

「うんっ!!ぼくだって戦えるんだから、絶対お父さんを助けてあげるんだっ!!」

「・・・・・・・・・天祥」

眩しいくらいの笑顔でそう宣言する天祥に、は眩暈を覚えた。

こういう素直で一直線な人物を説得するのは、簡単な事ではない。

それはもう既に武吉を相手にしていて経験済みだ。

だからと言って、このまま彼を見過ごすわけにもいかない。―――それくらいの良心は、とて持ち合わせているのだ。

「・・・あのね?今、太公望と天化が助けに行ってるから、貴方は大人しく待ってなさい。天化にもそう言われたでしょう?」

「ヤダ!ぼくだってちゃんと鍛えてるんだからっ!!ぼく強いんだよ!?」

「・・・それは分かってるけど・・・」

何となく分が悪くなってきたと思いつつも、はため息を吐いた。

天祥の気持ちも分からない訳ではない。―――だからこそ強く出れないのだが。

果たしてこの少年を説得できるのだろうか?と考えて、はすぐにフルフルと頭を振った。

「分かった。その代わり、私も付いていくからね?」

「うんっ!!」

満面の笑みを浮かべ、元気良く返事をする天祥に思わず笑みが零れる。

念の為にをその場に残し、どこかに道はないかと捜しながら歩いている天祥の隣に並んで、は今さらながらに気付いた。

ナタク・武吉・そして天祥。―――自分は純粋で素直な子供に弱いのだということを。

 

 

「お父さん、どこにいるんだろう?」

「・・・・・・この迷路のどこかじゃない?」

はウンザリとした思いで、どこを見ても同じに見える景色を眺めた。

入り口付近で4F行きのエレベータを発見し上がってきたまでは良かったが、他の階とは違いどうやら複雑な造りになっているらしい。

迷わないように目印代わりのボタンを置いて、ひたすら歩き続ける。

そろそろ何か変化が欲しいところだな・・・とが勝手な事を思っていたその時、床が小さな音を立てて・・・―――そちらに意識を向ける前に、太い何かが地面から飛び出してきた。

反射的に攻撃を避け視線を向けると、そこには巨大な何かが・・・。

「ミ、ミミズだぁ〜!!」

は天祥の上げた声に、それがミミズだと気付いた。

よく見れば・・・確かにミミズだ。―――サイズがかなり大きいので筒のようにも見えるが。

天祥が慌てて武器を構えると、奥の通路からミミズを身体に巻きつけた男が現れた。

「なんでショ?太公望か黄天化だと思ったら・・・ただのガキが来たネ」

妙な喋り方の男を見て、こいつがこの階を守る趙公明の召使い(弟子)なのかとが納得したその時だった。

「うわぁ、うん●頭ーっ。きったねぇー」

「・・・プッ!!」

ある意味衝撃的な言葉を吐いた天祥に、思わず笑い出しそうになったは慌てて口を塞いだ。

しかし相手の男にはの吹出し笑いまできっちり聞こえていたようで、余裕を装いながらも額に青筋を浮かべたままミミズをけしかけて来る。

しかし相手は巨大なだけあり、動きはそれほど早くはない。

それを見切れないはずもなく、はいとも簡単にミミズの攻撃を避けたが、天祥の方はモロに攻撃を食らい壁に叩きつけられてしまった。

「天祥っ!?」

は慌てて駆け寄ろうと踵を返すが、次の瞬間にはすぐにミミズは押し返され、攻撃を真正面から食らった天祥がケロリとした様子で壁の穴から這い出てきた。

そう言えば天祥は天然道士だったっけ・・・と今さらながらに思い出し安堵する自分に、ずいぶんと調子を狂わされているなと苦笑する。

天祥はまるで玩具で遊ぶ勢いで、次々と襲ってくるミミズを引っ張り回し、団子状態にして無邪気に笑った。

その後はずいぶんと呆気ないもので、『武成王はもう死んだ』という発言で天祥を怒らせた敵の男はミミズの塊に押しつぶされ、その上原型に戻ったところをそうとは知らない天祥にあっさりと踏み潰され封神された。

「・・・天然は恐ろしい」

「どうしたの、姉ちゃん?」

不思議そうな表情を浮かべている天祥の頭を軽く撫でて、はにっこりと笑った。

「なんでもないわ。それよりも武成王を助けるんでしょう?」

「もちろんっ!!」

「まぁ、あの武成王のことだから砂くらいどうってことないだろうけど、助けるのは早いに越した事はないからね。急ぎましょうか?」

「うん!早く助けてあげないとね!!」

元気が有り余っているのか、凄い勢いで走り始めた天祥の後を慌てて追いかける

そんな天祥を見つめながら、自分の体力はいつまで持つだろうか・・・と、は少しの不安を覚えた。

 

 

どこかで魂魄が飛んだ気配を感じ、は思わず足を止めた。

「どうかしたの?疲れちゃったとか??」

正直言えばかなり疲れていたが、天祥について来たのはの勝手なのである。―――それを天祥に言うつもりはなかった。

「ううん、そうじゃなくて・・・まさかね」

思わず浮かんだ考えに、慌てて否定した。

今の魂魄が、武成王のものではないか・・・という考えが浮かんだのだ。

しかし武成王はそんなに簡単に封神されるような人でないと思い直し、さっきの魂魄はおそらくこの階についているだろう太公望と天化が倒した敵の者なのだと結論付ける。―――否、そうであってくれなければこちらが困るのだ。

「ねぇ、行こうよ・・・姉ちゃん」

クイクイと袖を引っ張られ、我に返ったは先を促す天祥の後に続く。

そうしてまたもやどこからか物凄い破壊音まで聞こえ、急がなければとしばらく走り続けた後、角を飛び出した天祥が誰かと衝突した。

その勢いでコテンと転ぶ天祥の前方へと視線を向ければ、そこには見慣れた人物の姿がある。

「あっ、兄様!?」

「・・・天祥!?」

同じように角を飛び出してきたのは、やはりこの階に辿り着いているだろうと思われた太公望と天化だった。

天祥は嬉しそうな笑顔を浮かべて天化に飛びつき、衝突されたらしい太公望はまたもや地面を転がる。

そんな兄弟の心温かな再会の最中、ふと何気なく視線を上げた天化は、そこに思わぬ人物の姿がある事に気付いて思わず目を瞠った。

「ああ、もいるさっ!?」

「なに?おぬし何故ここにおる?人質になってたのではなかったのか!?」

地面を転がっていた太公望も、天化の声に弾かれたように立ち上がる。

しかし走りっぱなしで息が切れていたは、驚いた様子で質問してくる2人の説明するのが面倒臭くなり、説明のすべてを天祥に任せる事にした。

姉ちゃんはね、脱出してきたんだけどお父さんを助けたくてぼくと一緒に来てくれたんだ!!」

「・・・・・・合ってるような合ってないような」

なんとも掴み所のない説明に、流石のも説明しなおそうと思い口を開いたが、しばらく考えた結果どう説明すれば波風が立たないかを思案し、そのうちに面倒臭くなってきたのでそのままで押し通すことに決めた。

「実はそうなのよ」

にっこりと笑顔を浮かべて言い切るに、太公望は胡散臭そうな視線を送る。

の人となりを知っている太公望としては、天祥の説明を丸呑みなどできるはずもない。

「その前にずいぶんと『間』が空いていたが・・・?」

「気にしないで。そんなことばっかり考えてたら・・・禿げるよ?」

の発言に、太公望は慌てて頭に手をやる。

ずっと帽子を被っているので蒸れて・・・とまったく関係のない考えまでが頭に浮かび、慌てて首を振ってその思考を追いやった。

「そっ、そんなことはどうでもよい。それよりも何故おぬしがここにおるのだ!?」

「なによ。人質にされてた方が良いって言うの?」

「そうは言っとらん!しかしおぬしスープーと一緒だったのではないのか?あやつはどうした!?」

「・・・・・・・・・知らない」

「おぬし・・・スープーを見捨ててきたな」

恨めしげに自分を見やる太公望の視線から逃れるように何処かへと視線を投げ、は何食わぬ顔で欠伸を1つ。

そんな太公望との様子を見ていた天祥が、不思議そうに首を傾げて傍らに立つ兄へと問いかけた。

「ねぇ、太公望と姉ちゃんって仲悪いの?」

「・・・微妙なところさ」

状況をまるっきり無視した言い合いに、天化はどう口を挟んでいいのか分からず、とりあえず深く関わらない方が身の為だと判断した―――下手に関われば、火の粉が飛んでくるのは避けられないだろう。

しかしいつまでもそうしているわけにはいかない。

そう結論付けた天化は、何か変わったものはないかとキョロキョロと辺りを見回して・・・―――そうして『おいでませ』と書かれた部屋を発見してニヤリと口角を上げた。

「あそこに親父がいるに違いないさ」

根拠のない自信を抱きながら、抱き上げていた天祥を下ろし、未だ言い合いを続けている太公望の襟首を引っ張ってその部屋に向かう。

そうして進入した部屋の中は、無数の瓦礫で埋め尽くされており・・・―――そして、その中央には。

「おやじ!?」

「お父さん!!」

天化と天祥の驚きに満ちた声が響き渡る。

瓦礫で埋め尽くされた部屋の中央には、確かに武成王の姿があった。―――ただし、それはまったくの無事な姿ではなかったけれど。

部屋の状況から察するに、激しい戦いがあったのだろう。

同じく傷だらけになっている武成王の背中には、変形した剣が深々と刺さっていた。

背中からはじわじわと血が滲んでおり、振り返った武成王は・・・―――けれど何もなかったかのように軽く笑った。

「おめぇら、よりにもよってこんなみっともねぇシーンで来るなよな。かっちょ悪ぃ」

「なっ!!効いていないのですかっ!?」

瓦礫の向こうから丸いサングラスをかけた鬚面の男が、驚いたように声を上げる。

天然道士である武成王にそんな攻撃が効くはずないじゃない。―――と心の中で呟いて、は戦いに巻き込まれないようにと部屋の隅に移動した。

戦いに参戦しようとする息子たちを制して、武成王は1人で鬚面の男・・・余化に戦いを挑む。

そんな親子をまるっきり他人事のように眺めていたは、ふと視線を傍らに向けて呆れたように呟いた。

「あんたまでこんな所にいていいの?」

いつの間にか、と同様に太公望も避難している。

「手を出すな・・・とあやつも言っておっただろう?」

しかし太公望は、のそんな問いかけに軽く笑ってそう答えた。

それもそうだ・・・と笑って、は再び始まった武成王対余化の戦いに視線を戻す。―――ここで太公望が出張る理由はまったくない。

そんな2人をそのままに、余化はボール型の宝貝・化血神刃を使い、そこから繰り出される刃を武成王に向けて仕掛けるが、対する武成王は飛刀を使いそれを退ける。

「ぎゃー!痛い、痛いって!!」

それと同時に上がる悲鳴。

一体どこから・・・と目を凝らせば、どうやらそれは武成王の持つ剣から上がっているらしい。―――言葉を操る剣とはずいぶんと珍しいが、余化は珍しい武器集めが趣味らしいので、きっとどこから見つけてきたのだろう。

もっとも、にとってはまったく興味のない話ではあるが。

そんな事を考えているの耳に、飛刀の悲痛な叫びが届く。

この悲鳴だけを聞いていると、ずいぶんと激しい戦いのようだ。―――対してそれを操る武成王の表情に、それほど焦りの色はないように見えたが。

しかしいつまででも避けきれるわけもなく、舞うように放たれた2つ目の化血神刃が武成王の背後に回り、その刃が武成王の背中に深く突き刺さる。

その攻撃に、武成王の動きが止まった。

先ほど剣で刺されたときでさえ致命傷にはならなかったはずの彼が、一体どうしたのだろうかと疑問を抱く間もなく、余化が得意げに笑った。

どうやら刃に毒が塗られていたらしく、その毒が武成王の身体を蝕んでいるらしい。―――流石に毒に対する耐性まではないのか、武成王は体が硬直したように立ち尽くした。

「武成王!」

隣の太公望が心配したようにそう叫ぶ。

その声を受けて、武成王はすべてを振り切るかのように声を上げた。

「こんな・・・毒・・・効くかよっ」

そうして武成王はぎこちなく動く手で飛刀を握ると、新しい武器を手に取ろうと背を向けた余化に向かいそれを振り下ろした。

同時に、余化の悲鳴が響き渡る。

たとえどれほど優位な立場にいようとも、戦いの場で敵に背を向けるとは・・・―――あまりにもお粗末過ぎて、は呆れたように息を吐く。

そうして切られた余化は悔しそうな表情を浮かべながら、地に叩きつけられた。

「やったぁ!!」

「大丈夫か、おやじ!!」

天化と天祥は歓声を上げて、力が抜けたように寝転がった武成王の元に駆け寄った。

しかしその時、太公望が勢いよく3人の下に駆け出し叫ぶ。―――たとえどれほど優位な立場にいようとも、戦いの場において一瞬の油断は許されないのだ。

「気を抜くでない!まだ魂魄は飛んでおらん!!」

太公望のその声を合図に、一振りの剣がどこからか3人に向かい飛んで来た。

「原型かっ!?」

それを見て武成王が声を荒げる。

妖怪仙人には、人間の姿とは別に本来の姿を持っている。―――それが余化の場合は、一振りの剣だったのだろう。

力尽き原型に戻った余化は武成王を道ずれにしようと攻撃を仕掛けてきたが、しかし太公望の忠告もあってか、その攻撃に真っ先に気付いた天化によって吹き飛ばされこなごなになる。

しかしその瞬間、こなごなに砕け散った破片の1つが天化のわき腹を掠り、薄く血の筋が出来たのをは目撃した。

天化の攻撃により原型さえも破壊されてしまった余化の魂魄は飛び、そうして趙公明が用意した4階の敵との戦いは終わりを告げる。

そんな安心感が漂う中、太公望が天化のキズを気にする様子を遠くから眺めながら、は残った余化の剣の破片に歩み寄り、苦々しい表情を浮かべつつ破片を踏み潰す。

妖怪仙人の怨念。

少し前に戦った魔家四将の原型が大地を腐らせたように、余化の怨念が何をもたらすのか・・・―――はそれを考え、床を見つめていた視線を天化に向ける。

そこには勝利を喜び合う親子と、心配気な表情を浮かべた太公望がいた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

最後の方では力尽きたのか、かなりめちゃくちゃな文になっています(待て)

欲望の赴くままに天祥を出し、そして自爆。

天祥ってこんなんだったっけ・・・とか思い首を傾げてみたり?(笑)

竜吉公主とか思いっきり趣味に走ってます。

かなり好きです、彼女。もっと出番増やしたいな〜なんて思ってます。

次は太公望と趙公明の戦い。・・・どうしようかな?

作成日 2003.10.31

更新日 2008.1.25

 

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