ジリリリリン!!ジリリリリン!!!

静かな空間に、場違いなほどやかましい電話の音が鳴り響いた。

「・・・ほいさ、こちら太公望」

黄巾力士に備え付けられてある受話器を面倒臭そうに取り、だるそうな口調で答える。

「おお、太公望か!?」

「・・・・・・じじぃ」

王天君のダニにやられ、体力がかなり危なくなって来た太公望たち。

これからまだまだやらなくてはならない事が山済みで、じじぃの相手はしていられないと正直者の太公望は速攻で判断した。

だから相手が自分の師匠である元始天尊でも問答無用で電話を切ろうとしたのだが。

「楊ゼンがいなくなったのじゃ!!」

電話を切る寸前、受話器から聞こえてきたその言葉に、思わず動きを止めた。

「崑崙中を捜したが、どこにもおらん。おそらくは・・・」

「・・・王天君のところ、ですな?」

目の前で父親同然に慕っていた師匠を封神されたのだ、楊ゼンの王天君に対する憎しみは計り知れないほどであろう。

気持ちは痛いほど分かるが・・・―――しかしそれでも予想外の出来事に、太公望は思わず頭を抱えたくなった。

その時、ハッとある事を思い出す。

「元始天尊様、はどこにおるのですか?楊ゼンを見ているように言っておいたのだが」

「・・・・・・の姿も見当たらん。おそらくは楊ゼンと一緒に・・・」

返ってきたその言葉に、太公望は今度こそ頭を抱えた。

 

われし者

 

「きっとさ〜、あれよね・・・」

の背に乗って、前を飛ぶ楊ゼンの後を追いかけていたは、思い出したようにポツリと呟いた。

「・・・・・・あれってなんです?」

少しは回復したのか。―――辛そうにはしているものの、動けなかった頃程ではない楊ゼンは不思議そうに首を傾げ問い返す。

それを見て小さくクスリと笑ったは、人差し指を口元に持っていき悪戯っぽく呟いた。

「今ごろ崑崙は大騒ぎ」

「・・・・ですね」

2人は顔を見合わせて、クスクスと笑った。

実際には笑い事ではすまないのだが、そんなことを気にするや楊ゼンではなかった。

ひとしきり笑いあった後、少しだけ真剣な表情を浮かべた楊ゼンは、戸惑いさえ感じられるような眼差しでをジッと見つめて。

さん。1つ聞いても・・・・・・いいですか?」

遠慮がちにそう声をかけると、当のは楊ゼンを見つめてにっこりと微笑んだ。

「別にいいわよ。答えるかどうかは別だけど・・・」

返ってきたらしいその返事に、少しだけ余裕が戻る。

聞きたい事を心の中で反芻して・・・―――それは少しの時間だったが、ようやく考えがまとまった楊ゼンは、自分で自分の言葉を確かめるようにゆっくりと口を開いた。

「・・・王天君とは、どういう関係なんですか?」

聞きにくいと思っていたが、いざ口に出してみるとそれは思ったよりも簡単だった。

恐る恐るの顔を覗き込むと、いつにもまして無表情で。

「あの・・・僕が王天君に捕まっていた時、貴方の事を聞かれたんです」

楊ゼンは自分が『と王天君の関係』が気になった経緯を話した。

最初は単なる興味本位で質問されているのだと思っていた。

こう見えてもは有名だし、強い相手と戦いたいと思っている仙人ならば知っておきたいと思ってもおかしくはない。

王天君がそういうタイプかと言われると少し疑問を感じるが、実のところのことを聞かれるのはそう珍しい事でもなかったため、楊ゼンはさして気にしていなかった。

王天君の、あの言葉を聞くまでは。

「変わりはないんだろうな、あいつは・・・」

ポツリと呟くような・・・おそらくは誰にも聞かせるつもりはなかったのだろうその言葉は、確実に楊ゼンの耳に届いていた。

その時、思ったのだ。―――2人は知り合いなのだろうか、と。

しかし楊ゼンは、2人が知り合いだった事に驚いたわけではない。

長く生きている上に、妙に交友関係が広いのことだ。―――十天君と知り合いでも、不思議ではない。

楊ゼンが驚いたのは・・・他でもない王天君の態度だった。

『変わりはないんだろうな、あいつは・・・』

そう呟いた王天君の声色は、今までとは比べ物にならないほど柔らかで。

まるで仲の良い友達同士が、『あんな事もあったなぁ〜』などと昔を懐かしむように穏やかで。

嫉妬とか羨望とかいろいろな思いもあったが、何よりも先に好奇心が頭を出した。

2人はどんな関係なのだろう?

楊ゼンは純粋に、それが気になった。

そのときの王天君を思い出していた楊ゼンは、思い出したようにに視線を向けた。

するとは複雑そうな表情をしながらも、意を決したように顔を上げて。

「実はね・・・」

「・・・はい」

そうしては、楊ゼンが予想もしていなかった言葉をいともあっさりと口にした。

「王天君は・・・私の弟なのよ」

・・・・・・間

「・・・・・・は!?」

楊ゼンにしては珍しく、かなり間の抜けた顔で彼はただを見返した。

それを無表情で受け止めたは、もう一度同じ言葉を言う。

「だから、王天君は私の弟なのよ」

言葉は確かに耳に届いているのに、それが一向に脳に辿り着かない。

これが頭の中が真っ白になるという事なのか・・・と、案外呑気にもそんなことを考える楊ゼン。

彼は今、かつてないほど混乱していた。

 

 

今、さん何て言った?

王天君が弟だって言わなかった?

それってさんは王天君のお姉さんっていう事?

まさかほんとに、あの2人が姉弟?

似てない・・・っていうか、そんなオチってありなのか?

確かにあの策士っぷりを考えると似ていない事もないかも・・・―――いやいや、そんなこと言ったらさんに失礼か。

それよりも、大体姉弟って成立するのか?

王天君ってたしか、妖怪仙人なんじゃなかったっけ?

ってことは、さんも妖怪仙人とか!?

それなら妲己とか趙公明とか、金鰲島の仙人に知り合いが多いっていうのも頷ける。

でも、金鰲島にいるからって妖怪仙人とは限らないよな。

もしかしたら王天君は普通の人間・・・って、じゃああの尖った耳はなんだっ!?

突然告げられた予想外の言葉に、頭の中が真っ白になった楊ゼンは脳内を駆け巡る推測に思わず頭を抱えたくなった。

どうでもいいような考えが脳内を駆け回り、そしてとうとうなんの答えも見つけられないまま、すがるようにを見る。

その視線を受けて、は大きく息を吐いてからゆっくりとした口調で話始めた。

「私とあいつは、幼い頃に両親を亡くしてね。ある日私たちは仙人骨があるってスカウトされたんだけど・・・厄介な事にスカウト先が違っててね。私は崑崙、あいつは金鰲。このままだと2人とも生きていけないって判断して・・・迷った末にお互いスカウトされた仙人界へ入ったの」

「・・・・・・」

「別に場所が違っても、すぐに会えるって思ってたの。でも・・・見ての通り、崑崙と金鰲って仲が悪いでしょ?結局、最初に別れて以来、一度も会えなくて・・・。やっと会えると思ったらこんな事に・・・」

辛そうに・・・本当に辛そうに俯いて、搾り出すような声でそれだけ言った。

楊ゼンはそんなを見て、どうしていいか分からなかった。

王天君は、自分の師匠を殺した憎むべき相手だ。

もちろん許すことなど、断じて出来ない。

しかしは、自分が好意を寄せる相手。―――そのの弟を、自分は倒そうとしているのだ。

「・・・そんな、バカな・・・」

行き場のない、もやもやとした思いを吐き出すように楊ゼンはただ呟いた。

そんな風に否定してみても、どうにもならないということは分かっているのに。

「・・・楊ゼン」

優しい声色で名前を呼ばれ、顔を上げると優しい笑みを浮かべたの顔。

そして―――。

「・・・まぁ、嘘なんだけどね」

満面に綺麗な笑顔を浮かべたは、その声色のまま悪びれもなくきっぱりと言い放った。

・・・・・・間

「・・・さん?」

「あんたも懲りないわねぇ。この間騙されたばっかりなのに・・・」(水面下の戦い参照)

呆れた・・・というよりも寧ろ同情を含んだ視線を向けられ、呆然とを見つめていた楊ゼンはがっくりと肩を落とす。

こんなにも本気で悩んだというのに、それがすべて演技だったとは・・・。

普段から人に化けて相手を騙くらかしている自分が人の事を言えた義理はないが、それでも本気で悩んだ分だけ遣る瀬無さは消しようがない。

なんだか妙に疲れた。

身体が・・・というよりも、精神的に。

この人にはまともな答えを望んじゃいけないんだろうか?なんて思いさえも浮かんでくる。

「それでね、私と王天君の関係についてなんだけど・・・」

「・・・いえ、もういいです」

気を取り直して意気揚揚と話し出したを、楊ゼンは慌てて止めた。

どんな話を聞いても、素直に信じる事が出来そうにないからだ。

「そう?折角面白い話、いっぱい用意したのに・・・」

残念そうに呟くに、一体どんな作り話を用意したのか興味を引かれたが、今はそんな話を聞いている場合ではない事を思い出し慌てて首を横に振る。

今はそんな時ではないのだ。

ここは敵陣で、自分たちは敵の下へと向かっている。―――本来なら、一瞬でも気を抜くわけにはいかないというのに・・・。

楊ゼンが改めて心の中でそう決意を固めたその時、コウ天犬が甲高い声で鳴いた。

もうそろそろ王天君のいる場所を突き止めたのだろうかと、楊ゼンが前方を睨んだその瞬間。

「・・・おい!」

少しだけ低いその声に、楊ゼンは視線を巡らせる。

「あら、ナタク。こんにちは、ずいぶんと・・・久しぶりに感じるのは気のせい?」

先にその人物を見つけたが、にこやかに挨拶をする。

しかし当のナタクはどこ吹く風でを見下ろすと、不思議そうに小さく首を傾げた。

「・・・、お前がなぜここにいる」

「散歩よ」

「・・・・・・そうか」

あっさりと言い切ると、あっさりと騙されるナタク。

突っ込みたいところだったが、その気力も体力もない楊ゼンはそのまま放置することにした。

しかしナタクがそれで終わらせるはずもなく、次なる矛先は楊ゼンへと向けられる。

「おい、お前。なぜここにいる!キサマは俺が殺すんだ。なのになんだ、その弱々しさは!足手まといだ、帰れ!!」

人差し指で指され、怒気さえも孕んだその口調に、楊ゼンは少しだけ笑みを浮かべる。

分かっているのだ。―――彼が自分を心配してくれているということが。

口が悪く、素直に感情を表に出すのが苦手な彼が(ある意味素直だが)口に出した、精一杯の労わりの言葉。

「ありがとう、ナタク」

嬉しくなって礼を告げると、ナタクは照れたようにそっぽを向いて鼻を鳴らした。

「だけど、やっぱりナタクも無事だったんだね。崑崙側で無事なのは・・・僕たちくらいかな?」

同意を求めるようにに向かい話し掛けると、小さな笑みを返される。

それが肯定を表しているようには思えず、楊ゼンは不思議そうに首を傾げた。

さん。僕たち以外にも無事な人っていそうですか・・・?」

「うん、いるね」

きっぱりと断定する

そのあまりの自信に、楊ゼンは更に首を傾げた。

どうやら宝貝人間には、王天君のダニは効果がないらしい。―――王天君のダニの気配を察して、被害を被る前に防御していたはともかく、他にそんなマネが出来そうな人物など思い当たらない。

だからこそ、不思議なのだ。

がそれほどまでに自信たっぷりに断言する、その根拠が。

「それって・・・誰のことですか?」

「う〜ん、誰とは言えないんだけど・・・」

楊ゼンの疑問には言葉を濁すとおもむろに上空を見上げ、それからナタクの方へと視線を向ける。

「そこにいると危ないわよ、ナタク」

「合体っ!!」

の声を遮るように響き渡った声。―――その声の主は発した言葉に違わず、いきなり落ちてきたかと思うとナタクの背中に彼の言葉でいうならば『合体』した。

「ちゅーす。俺は道行天尊の弟子で韋護ってんだ。同行させてもらうぜ」

お世辞にも立派だとは言えない服。

帽子を深く被っており、はっきりと人相は分からないが・・・―――悪い人間ではないと、楊ゼンは直感的だがそう思った。

「降りろ!!」

「どわぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

背中に乗られたナタクが、怒りのあまり攻撃を加える。

それを避けているところから見て、それなりの強さもあるようだ。

「・・・止めなくていいの?」

「そんな体力はありません」

そう言い切ると、は『なるほど・・・』と呟きながら、その戦いを見守った。

彼女にも、止める気はないらしい。

そんなやり取りの中、再びコウ天犬が甲高く吠える。

さっきの事もある。―――今度は何が来るんだろう・・・などと楊ゼンが思ったなんて事はさておいて。

今度こそ王天君の居場所を見つけたのだろう。―――コウ天犬の視線の少し先に、真っ黒の『星』が見えた。

その『星』には、王天君がつけているアクセサリと同じ物が張り付いている。

間違いなく王天君の部屋なのだろうと、楊ゼンはぎゃあぎゃあと騒ぐ2人をそのままに、勢い勇んで『星』に向かった。

ちょうどその時だった。

王天君の部屋だと思われる『星』のまん前に、八卦図が浮かび上がる。

「しまった。この陣の印は王天君では・・・!!」

気付いた時にはもう遅かった。

八卦図からはすでに白い光が放たれており、どこからか聞いた事のない声が響き渡った。

『ようこそ。貴方たちがここに来る事は、すでに王天君は予測済み。代わりにこの私たちが貴方たちの相手をしよう。この姚天君と金光聖母がっ!!』

その言葉と共に、今までいたその空間は彼らの亜空間に飲み込まれてしまった。

そこはちょっとした広さのある、円形の長い筒のような空間で、周りには多数のお札のようなものが浮かんでいる。

「これが噂の空間宝貝ってやつか・・・」

韋護が感心したように呟き、上空に浮かんでいる2つの影を見上げた。

1人は黒いマントに包まれていて、どんな姿をしているのか分からない。―――こちらが姚天君で、もう1人いる女性の姿をした方が金光聖母だろう。

挑発するような韋護の視線を受け、金光聖母は冷たく言い放った。

「多重空間で迷うがいいわ、ぼうやたち・・・」

 

 

「こうしてあっさりと罠に嵌ったのだった・・・まる」

はただポツリとそう呟いた。

『んな呑気な事、言ってる場合か・・・』などと突っ込んでくれる相棒はいない。

辺りは真っ暗闇に包まれており、そこにいるのはただ1人だ。

つい先ほどまで、は楊ゼンやナタクたちと一緒にいた。

謎の声を聞いたことは覚えている。―――おそらくは十天君なのだろうと予測がついた。

しかしその後が分からない。

言ってしまえば、一瞬にして暗闇に包まれた。―――としか言い様がない。

広さも高さも分からない、まさに一寸先は闇状態に思わずため息を吐く。

とりあえずボケをかましてみたが、突っ込みもないのではそれもなんだか空しくなり、する事もないのでとりあえずその場に座り・・・―――そうして待った。

この空間を作り出した人物を。

この空間に自分を引きずり込んだ、張本人を。

「よぉ、久しぶりだな・・・

張本人は程なくして現れた。

それほど高くない身長に、人を食ったような笑みを浮かべた不健康そうな少年。

「ついこの間会ったと思うけど?―――王天君

状況的には不利に間違いないこんな時でも、はいつもと変わらない様子でやんわりと笑みを浮かべる。

しかし王天君はそれに気を悪くした様子もなく、寧ろ楽しそうに笑いの傍まで歩み寄った。

そしてどこにでもあるような小ぶりのナイフを彼女の首元に当てて。

「ここでお前を殺したら、俺の名前が上がるな」

そんな物騒な台詞を吐きながら、王天君はゆっくりと浅くナイフを引く。

しかしは抵抗する様子もなく、うっすらと流れる血をそのままに相手を挑発するような笑みを浮かべた。

「私は広告塔じゃないんだけど・・・?」

その言葉に、王天君はさらに楽しそうに声を上げて笑った。

そのままナイフを懐に直し、少しだけと距離を置いて立つ。

それを認めたは、僅かに流れる血を無造作に拭いながら不機嫌そうに王天君へと視線を向けた。

「それで、一体何の用なの?私をこんなところに引きずり込んだんだから、それなりの用があるんでしょ、王天・・・」

「なぁ・・・」

の言葉を遮って、王天君はニヤリと笑った。

「その呼び方やめろよ。前みてぇに呼べばいいじゃん?」

その言葉に、は表情を歪めた。

2人が対峙して、初めて起きた変化である。

「・・・・・・何が目的なの、王奕」

「はっ!久しぶりだな、そう呼ばれんのは・・・」

思った通りの反応に、王天君は嬉しそうな表情を浮かべる。

「実はな、お前と話がしたいと思ったんだよ。久しぶりにな」

「・・・話ね。私もちょうどそう思ってたところよ」

そう言い睨むに、しかし王天君はさらりと告げた。

「だがよ、俺も多忙の身でな。やらなきゃいけないことがある。先ずは通天教主と楊ゼンに感動親子対面させてやらねぇとな。それまでお前にはここで待っていてもらうぜ?」

そう言い放つと、王天君は空間を渡って少しづつから遠ざかっていく。

「・・・・・・」

「嫌なら、俺を殺せばいい。そうすればこの空間から出られるぜ?お前なら俺を殺すなんて造作もないことだろう?」

クツクツと笑い声を響かせて、王天君はさらに言葉を続けた。

「まぁ、お前にそれができるなら・・・の話だがな」

そう言って、王天君は少し離れた場所に姿を現した。

離れているとは言っても、攻撃が届かない距離ではない。

倒そうと思えば・・・できる距離だ。

しかしは、座ったままピクリとも動かなかった。

ただ王天君を睨みつけ・・・―――しかし少しだけ眉を寄せるとスッと視線を外す。

それを確認した王天君は楽しそうな笑みを浮かべ、そして今度こそ完全に姿を消した。

誰もいなくなった空間。

どこからかザアザアという水音が響き、立ち上がってそちらの方に行ってみると、ある一定の空間から外は雨が降っていた。

何気なく手を伸ばしてみると、簡単にその雨に触れることが出来る。

しかしすぐにジュッという耳障りな音と共に何か焦げたような匂いがし、ふと手を見てみると手袋の一部が解けてなくなっていた。

「・・・酸性。・・・『血の雨』か・・・」

玉鼎が罠に嵌った時にも降っていた紅い雨。

ここは間違いなく、王天君の作り出した亜空間の中なのだろう。

ふと遠くを眺めると、微かに明かりが漏れているのに気付いた。

ここはどこか部屋の中で、もしかするとあれが部屋の出口なのだろうか?

この雨の中を通り抜けて行けば、外に出られると?

少しの間考え込んでいただったが、しかし小さく首を振ると先ほどいた場所まで戻り再び腰を下ろした。

こうして1人きりになったのは、いつぶりだろう?と思う。

考えてみれば大抵はが一緒にいたし、最近は太公望たちとにぎやかな毎日を過ごしていた。

たまに1人になりたい・・・と思う時はあったが、それでも今こうして1人になってみると、なんだか物寂しい気持ちになる。

静かな空間に1人。―――他にする事もなく、考えるのを避けていた問題が次から次へと頭の中に溢れかえってくる。

『お前なら俺を殺すなんて造作もないことだろう?』

『まぁ、お前にそれができるなら・・・の話だがな』

さっきの王天君の言葉が、グルグルと頭の中を回る。

は身を縮こめるように膝を抱き、その間に頭をうずめるようにして目を閉じた。

深く、深く、搾り出すように息を吐く。

少しだけ落ち着いた頭で、読みかけの歴史書を持ってきてれば良かった・・・などと、いつもの調子を少しだけ取り戻しそんなことを思った。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

主人公、王天君に拉致られる・・・の巻。

そしてまたもや、戦闘シーンはすっ飛ばしです。

っていうか、王天君メインですか。

もっと楊ゼンとかナタクとか天化とか出せよ!それ以前にこれは太公望寄りの逆ハーなんだから太公望出さないとね、とかいろいろ思ったりもするんですが。

こんなんになりました。(笑)

次は、久々にあの人を登場させられるかな?ついでにあの人も・・・。

作成日 2003,12.3

更新日 2008.8.29

 

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