既に原型を留めていないほど崩れ落ちた崑崙山に、2人の男が立っていた。

1人は十二仙を下し、崑崙山に乗り込んできた聞仲。

そしてもう1人は―――。

「武成王・・・?王天君・・・?」

何が起こったのか、現状を把握できずただぼんやりと相手の顔を見つめながら、聞仲はポツリとその名を呟いた。

『クククク・・・らしくねぇなぁ、聞仲。ハトが豆鉄砲食らったようなツラぁしてんじゃねぇよ』

空中に浮かび上がった四角い物体に映し出された王天君は、喉を鳴らして可笑しそうに笑った。

「キサマは封神されたはずでは・・・」

ようやく少しだけ平静を取り戻した聞仲はキツク王天君を睨みつけるが、そんなものをさらりと流して王天君は再び笑う。

『オレがあんな下らねぇ死に方をするかよ!イカれたな、聞仲』

 

王天君の

 

謎の少年・・・―――王天君によって崑崙山に連れてこられた飛虎は、現状がわからず辺りをキョロキョロと見回した。

無残にも崩れ落ち、瓦礫と化してしまった崑崙山。

少し離れた場所には、瀕死状態の元始天尊とそれを見守る竜吉公主の姿。

そして・・・・・・酷く傷つき、動く事さえ出来ない多くの仙人の姿。

「・・・これは?」

未だにどこかで爆発音が聞こえ、さらに被害が拡大しそうな気配さえある。

飛虎は眉をひそめ、そして己の前に立つ聞仲を睨みつけた。

「聞仲!オメーがやったのか!?」

「武成王・・・」

「オメーがそのムチでやったのかっ!?」

声を荒げて問いただす。

本心で言えば、否定して欲しかった。

自分の心を許した友が、こんな酷い事をしたなんて・・・信じたくなかった。

「・・・・・・そうだ、私がやった」

「・・・聞仲!!」

だが非情にも返って来た答えは肯定で。

飛虎は悔しさのあまり、強く自分の手の平にギュっと爪を立てる。

その一部始終を見ていた王天君は、ニヤリと口角を上げて、消えた。

 

 

「よぉ、くそジジイ!」

一瞬にして場所を移動した王天君は、四角い物体から姿を現し、動く事も出来ない瀕死状態の元始天尊の顔を蹴り上げると、楽しそうに笑った。

「テメェもヤキが回ったな!」

「おぬしっ!!」

「おっと、やめときな公主。あんた燃費の悪ぃ崑崙を動かしてカラッポなんだろ?それじゃあ俺は倒せねぇなぁ・・・」

思わず宝貝で攻撃を仕掛けようとした竜吉公主を牽制して、王天君は挑発するように元始天尊の頭に乗せた自分の足をぐりぐりと動かす。

「よい、2人とも下がっておれ・・・」

それを受けてもなお、元始天尊は声色を変えず、心配そうに見守る竜吉公主と白鶴に向かいそう声をかけた。

「これは・・・わしの業よ。命令じゃ、下がっておれ」

搾り出すようなその声に反論する事が出来ず、渋々といった風に竜吉公主は嫌がる白鶴を連れてその場を去った。

それを見送った王天君は小さく鼻を鳴らし、そして再び元始天尊に向き直ると、つい先ほどまで浮かべていた笑みを引っ込めて。

「あんただけは知ってたはずだよなぁ・・・、俺が生きてたってことをよ。何せ俺の魂魄を分裂させたのはあんただからなぁ・・・」

王天君は力を緩める事無く、再び元始天尊の頭を踏みにじる。

「こんな俺の特異性が『楊ゼンと同等』と評価されて、人質交換のネタにされたり、妲己にも目ぇつけられる結果となったわけだ」

「・・・・・・ぐっ」

「だが、いまじゃあ感謝してやってるんだぜ?おかげで死の快楽も味わえたし。さらに殺す快楽も味わえる・・・」

「・・・・・・そういう・・・こと」

不意に声が響き、王天君は慌ててそちらに目を向けた。

「・・・

王天君たちがいる場所よりもさらに高いところ。―――そこに、彼女はいた。

見下ろすようにその場に立って、心なしか少しだけ表情を歪めている。

「・・・おかしいと思ってたのよ。人質交換が、どうして私じゃダメなのか。いいえ、どうして王奕じゃなきゃダメなのか・・・ってね」

つまりは、こういうことだ。

突然訪問してきた通天教主に、『友好の証』と称しての人質交換を持ちかけられた。

妲己を前にして、金鰲島ともそれなりに友好関係を築いておきたかった元始天尊はそれに応じる事に決めたが。

崑崙でも力のある仙人を、むざむざ渡したくはなかった。

欲を言えば、すばらしい才能を秘めているだろう楊ゼンも手元に置いておきたいと考えた。

だから彼は、王奕に白羽の矢を立てたのだ。

魂魄を分裂させるという、特異性を持った彼を。

元始天尊はまず、王奕の魂魄を2つに分裂させ、その1つを金鰲島に差し出した。

そこまで考えて、は小さく首を傾げた。

もしこの話が本当ならば。

もしこの話が本当ならば、その時分けられた魂魄の片割れは、どこに行ったのだろう?

今目の前にいる王天君が、そうなのだろうか?

。あんた俺の亜空間を抜け出してきたのか?」

そう声をかけられ、ハッと我に返ったはにこりと微笑んだ。

「あんなもの、抜け出すのにそう手間はかからないわよ」

「ハッ!簡単に言ってくれるな」

実際に、王天君の作り出した亜空間を抜け出すのはそれほど難しくない。

彼の亜空間は外から入る事は難しいが、中から出るのは自由なのだ。

出口付近で降っていた紅い雨はそれなりに厄介だが、それさえ何とかできれば脱出はそれほど難しくなかった。

は立っていた場所からフワリと飛び降り、王天君のすぐ傍で着地すると、彼の腕を強く握る。

「もう、やめよう。こんな事をしても・・・もうどうにもならない」

こんな事をしても、過ぎてしまった時はもう戻っては来ないのだから・・・。

そう言葉に含めて呟くが、王天君は自嘲気味に笑い。

「関係ねぇよ。俺は俺が思うとおりにする。俺が楽しければ、それでいいんだよ」

腕を掴んでいるの手を振り払うと、少しだけ距離を取って再び笑った。

「・・・俺を殺すか?」

告げられた言葉には一瞬怯むが、俯き深呼吸をしてから顔を上げて。

「・・・・・・ええ。あなたが太公望に手を出すっていうなら、ね」

きっぱりとそう告げた。

迷いのないその瞳で・・・―――まっすぐ自分を見つめてくるに、今度は王天君が目を見開いた。

「ククク、傷つくなぁ・・・。そんなにあいつが大切か?俺を殺してまでも・・・?」

「・・・・・・そうよ」

「へぇー、変わったなぁ、あんた。昔は何にも興味を示さなかったってのに・・・」

「人は変わるわ。貴方もでしょう?今の貴方は崑崙にいた頃とはまるで別人だもの」

の言葉に、王天君はニヤリと笑った。

本当に、崑崙山にいた頃とはまるで別人のよう。

姿形ではない。―――心の、奥の部分が。

「ま、とりあえず。今はあんたと戦う気はねぇから・・・。俺の用意したショーを楽しんでくれよ」

王天君はそれだけ言うと、再び現れた四角い物体の中に姿を消した。

それと同時に、下でにらみ合っている聞仲と飛虎の周りに光の線が浮かび上がり、それは彼らを取り囲むように正方形の紅い箱へと姿を変えた。

『ククク。ジジイはそこで待ってろ。後で遊んでやるからよ』

嘲るようなその声を残して、王天君の気配はその場を去った。

それを確認したは深くため息を吐いて、目を細めて空を仰ぎ見る。

結局、こんな結果にしかならなかった。

止めたいと思っていたが、それも失敗に終わってしまった。

「・・・王奕」

元始天尊が呟いた掠れたその声に、は岩に背をもたせ横たわる老人へ視線を向けた。

聞仲との戦いで、既にボロボロになっているその姿。

自分から大切な人を奪った。―――逆恨みと知りつつも、彼女がずっと憎んできた相手。

この人は、いつからこんなに弱々しいものになってしまったんだろう?

今の元始天尊は、身体だけではなく、心も・・・とても弱く見えた。

「私は・・・」

はぼんやりと元始天尊を見つめ、小さく口を開いた。

「私は・・・やっぱり貴方のことが嫌いだわ。とても・・・・・・嫌い」

「・・・・・・

「これから先、何があっても・・・私が貴方を認めることなんてない」

、わしは・・・」

「でもっ!!」

急に声を荒げて元始天尊の言葉を遮ると、じっと見つめてくる彼に背を向けた。

「・・・でも、太公望を仙人界に連れてきてくれた事には、感謝しています。そうでなければ私は・・・今でも変わることなんて出来なかったから・・・」

それだけを言い捨てるように呟くと、元始天尊には見えないようにかすかに微笑み、の背に乗ってその場を去った。

 

 

四不象は太公望と楊ゼンを乗せ、猛スピードで崑崙山へ向かっていた。

つい先ほど、彼の行く手を阻んでいた強力な重力が途絶えたからだ。

「な、何てことだ!崑崙山がボロボロじゃないかっ!!」

次々と目に飛び込んでくる痛ましい光景に思わず声を上げた楊ゼン。

そんな彼と同じような思いを抱いていた太公望は、しかし用心深く辺りを見回して。

「楊ゼン!あれを見よ!!」

岩と岩の隙間に隠れるようにしてあった四角い物体を発見した太公望は、楊ゼンに声をかけそれを指さした。

「あれは・・・十天君が使う空間!」

まだ十天君の生き残りがいたのか・・・と小さく呟くが、パッとそこに現れた人物を見て驚愕の表情を浮かべた。

『よお、太公望に楊ゼン!遅かったじゃねぇか!』

「王天君!!」

現れたのは、彼らの予想だにしない人物で。

目を見開きその名前を呼んだ太公望に、楊ゼンは声を荒げて否定した。

「バカなっ!生きてるなんてありえない!ボクはこの目で確かに・・・!!」

しかしそうは言いつつも、目の前にいるのは確かに王天君本人で。

王天君はからかうように笑い、チラリとある方向へと視線を向けた。

そこには瀕死状態の元始天尊と、顔色の悪い竜吉公主の姿。

『知るかよ。あの死にかけのジジイにでも聞きな!』

岩場に降りた2人に向かいそう言い放つと、すぐ傍にもう1つ四角い物体が現れ。

『おお、そうだ。こいつらを忘れてたぜ』

「・・・む?」

王天君の言葉と同時に、新しく現れた四角い物体から何かが勢い良く飛び出してくる。

それはお世辞にも優雅とはいえない叫び声を上げて、太公望の足元に転がった。

「いちー。何なのさ、これは・・・」

「天化!天祥!!」

飛び出してきたのは、どこかに強くぶつけたのか・・・―――頭を押さえて顔をしかめている天化と、現状が把握できずにきょとんとしている天祥。

「おぬしら人間界におれと言っといたであろうっ!!」

「へへー、来ちゃった!!」

顔を真っ赤にして怒鳴る太公望とは裏腹に、天祥は無邪気な笑顔を浮かべて笑う。

「来ちゃった、ではない!おぬしらいつからここにおる!今まで一体どこにおったのだ!」

「いつからって、まぁ話せば長く・・・・・・」

「あっ!!」

怒り心頭の太公望に少し押されぎみの天化が恐る恐る説明しようとしたその時、辺りをキョロキョロと見回していた天祥が大きな声を上げた。

「天祥!一体どうしたさ!?」

話を遮られた天化は天祥にそう声をかけ、彼が見ている方へと視線をやり・・・。

「あら、皆さんおそろいで・・・」

この場にそぐわない呑気な声色でそう挨拶してきたのは、黒い霊獣に乗った1人の女性。

「「「!!」」」

まるで信じられないものでも見るかのような目つきで自分を見ている太公望たちを無視して、はヒラリとその場に降り立った。

少し汚れてしまった白いコートをパタパタと叩いて、それからその場にいる全員に向かいにっこりと微笑みかける。

「何となく長い間会ってない感覚だから・・・取りあえず久しぶり。みんな目立った怪我がなさそうで良かったわ」

「こんな状況で口にする言葉がそれかっ!!・・・・・・っていうか、おぬしにそんな言葉を掛けられると気持ち悪・・・」

いつものらしくない言葉に思わずツッコミを入れた太公望の言葉を遮って、は太公望の胸倉を掴むと笑顔のまま一言。

「何か言った?」

「・・・・・・・・・イイエ、ナニモ」

顔を真っ青に染めて、首が取れそうなほど激しく横に振って否定する太公望。

それを見て満足そうに頷いたは、漸く彼の胸倉から手を離した。

「・・・・・・それにしても、さん無事だったんですね。突然いなくなって・・・しかも王天君に捕まったなんて聞いたから心配しましたよ」

何とか場の雰囲気を盛り上げようと口を開いた楊ゼンに、はにっこりと微笑む。

「ありがとう、楊ゼン。貴方もすっかり回復したみたいで良かったわね。それよりも・・・」

そこで言葉を切って、ゆっくりと未だ座り込んだままの天化へと視線を向ける。

「・・・天化、あなたも無茶ばかりするわね。お腹の傷の方はどうなの?」

「へへ、大丈夫さ。も大丈夫そうさね・・・」

「・・・・・・?」

天化の言った言葉の意味が分からず小さく首を傾げるに、天化は小さく笑った。

仙界大戦が始まる前の、沈んだ表情はもうない。

今のは何かが吹っ切れたような、さっぱりとした顔をしている。

時々、笑顔が悲しそうに見えるときもあるけれど・・・。

「・・・何でもないさ」

小さく笑ってそう言うと、は困ったような笑顔を浮かべた。

「まぁ、何はともあれ。おぬしらが無事でホッとしたわ・・・」

言葉通り安堵の息を吐いた太公望に、は視線を戻して。

「本当にね。無事でよかったわよ・・・」

本心からの一言を告げると、太公望の頭をポンポンと軽く叩いた。

「子ども扱いするなっ!」

そう声を上げの手を払いのけた太公望だが、その顔は微笑んでいて。

そんな太公望の表情を見て、も穏やかな笑みを浮かべた。

『おい、てめぇら!俺を無視するなんていい度胸じゃねぇか!!』

の登場により、すっかり忘れ去られてしまっていた王天君の不機嫌そうなその声に、全員が思わずそちらに顔を向けた。

「あら、ごめんね。すっかり忘れてたわ」

「・・・煽るな」

王天君ににっこりと微笑みかけ、しれっとそう答えるに太公望は力なく突っ込む。

そんなに複雑そうな表情を浮かべつつも、王天君はその場に巨大なモニターのようなものを出現させた。

『まず言っておくぜ。この紅水陣第二形態は外からは決して入れねぇ。だが中にいる奴は出るのは自由って仕組みだ。それを踏まえた上で・・・』

意味深に王天君が言葉を切ったその時・・・―――現れた巨大モニターにある風景が浮かび上がった。

立派なつくりの大きな城。―――も何度か訪れたことのある、朝歌・禁城。

そしてその前に立つのは、王天君に捕らえられた飛虎と聞仲の2人。

『この面白いショーを見てくんな』

 

 

小さく喉を鳴らして笑う王天君の声が響く中、紅水陣の中に捕われた飛虎は突然浮かび上がった見慣れた風景に首を傾げた。

「・・・禁城?」

「違う。これは王天君が作り出した亜空間に過ぎない」

自分は確か、仙人界にいたのではなかったか?

そう不思議に思いつつも目の前に立つ聞仲に視線を向けると、彼が親切にもその疑問に答えてくれた。

「王天君め。何を考えているのか知らないが、この禁鞭で亜空間自体を粉砕してくれるわ」

怒りに燃え禁鞭を唸らせる聞仲から視線を逸らし、辺りに漂う紅い霧を確認した飛虎は、自分の身体がピリピリと痛む事に気付いた。

「この霧・・・強ぇ酸なのか・・・?」

確かめるようにポツリと呟いたその声は、頭に血が上っている聞仲には聞こえていないようで。

しばらく何かを考え込んでいた飛虎は、パッと顔を上げると今にも暴れだしそうな聞仲に向かって足を踏み出した。

「やい、聞仲!俺と話をつける方が先だろが!話題そらしてんじゃねぇぜ!!」

「・・・・・・話?もうお前と話すことなどないが?」

「うるせぇ!こっちにゃああるんだよ!!」

静かに睨んでくる聞仲の胸倉を掴み、きっぱりとそう言い放つ。

「オメー、いいかげんに目ぇ覚ませよ。何してんのか分かってんのか?」

まるで小さい子供に言い聞かせるような口調でそう言われ、聞仲は瞬間的に自分の胸倉を掴んでいた飛虎の手を払いのけた。

「うるさい!軽々しく私に触れるな!!」

「オメーは力で敵をねじ伏せるようなやつじゃねぇはずだ!自分より弱ぇやつを簡単に殺せるヤツじゃねぇんだよ!!」

降ってくる飛虎の言葉に、聞仲は思わず耳を塞いでしまいたい衝動に駆られた。

聞きたくなかった、何も。

殷を守らなければならない。―――それだけが自分に残された、最後のものなのだから。

「・・・そうか、分かったぞ武成王。お前の考えが・・・」

必死に飛虎の言葉を頭から追い出そうとしていた聞仲は、何かに思い当たったかのように小さく笑った。

「このような命を賭けた状況下で私を説き伏せるつもりだな?昔話で私の心を動かし情に訴えかけて!―――浅い考えだな、武成王!そんなことでは私は揺るがない!!」

聞仲の言葉に、飛虎は何も言い返さなかった。

ただ無表情で、聞仲を見返している。

「もう私は誰にも心を開かぬと決めたのだよ。今の私には殷しかない!殷のためならば何でもしよう!!」

その言葉はまるで自分に言い聞かせているようだと、飛虎には聞こえた。

何も言わず、ただ自嘲気味に笑う聞仲を見つめる。

その時、ふと身体に水滴が落ち・・・―――顔を上げると紅い雨がポツポツと降り出してきた。

『ぎゃー!痛ぇー!!』

突然、飛虎の持つ黒い大剣がそう悲鳴を上げた。

「飛刀!?」

それは趙公明の弟子・余化戦で手に入れた命の宿った大剣で。

珍しい剣ではあるが、本人はどうにも戦いに向きそうにない性格をしている。

『お2人さんよぉ、退屈な話は止めて早く決着つけた方がいいと思うなぁ。じゃねぇと頭蓋を酸が侵食して脳がとろけるぜ?』

不意にどこからか嘲るような声が響いた。

『見物人も退屈してる事だしよ』

その言葉に、飛虎は初めて傍らに浮かぶ四角い物体に目を向けた。

その向こうにいるのは必死な形相を浮かべている2人の息子と、太公望と

『オヤジ!今の聞太師は危険さっ!』

『お父さん、早く出て!!』

聞こえてくる必死に叫び声に、しかし飛虎は手元の飛刀に視線を向けると。

何の躊躇もなく、それをそちらの方へ投げ出した。

『お父さん!!』

困惑した様子で彼を呼ぶ天祥が無事それを受け取ったのを確認すると、紅い雨に身を晒しながら再び聞仲に向き直った。

「俺ぁさみしいぜ、聞仲・・・。昔のオメーはいなくなっちまったんだな」

同じように赤い雨に身を晒しながら、聞仲は自嘲気味に笑う。

それを見つめて。

飛虎は小さなため息とともに、自分の拳を握り締めた。

「ならば、せめて・・・・・・俺がテメーを殺す!!」

それが、飛虎が苦悩の末に下した決断だった。

 

◆どうでもいい戯言◆

中途半端なところで切ってみたり。

漸く主人公と太公望が合流しました。

長かったなぁ・・・。(笑)

作成日 2004.1.8

更新日 2009.4.3

 

 

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