戦場から離れたある街の衣料店で。

今まで自分には縁のなかった女性物の服が並ぶその場所で、リカルドは居心地悪そうに視線を泳がせる。

戦場でボロボロになってしまった事に加えて、の治療の為にリカルドの手によって引き裂かれた彼女の服は、すでに着るに耐えない哀れな姿になっていて。

それを見かねたリカルドが、彼女に服を買うように勧めたのだ。

もっとも、お金を持っていないは酷く躊躇いを見せたが、いつまでもボロボロの服を着ていられては目のやりどころにも困るのだ。―――加えて、自分の代わりの服では彼女には大きすぎる。

そんな経緯で店へ訪れた2人。

そこで店員に捕まったは強制的に試着室へ。

そうしてそれを待つ身のリカルドは、やはり1人で来させれば良かったと今更ながらに後悔していた。

「お客様、サイズの方はいかがですか?」

「う〜ん・・・。うん、ちょうどいい感じ!」

そう言って勢い良く引かれたカーテンを開いたは、所在なげに立ち尽くすリカルドを見てにっこりと微笑んだ。

「どう、リカルド?似合ってるでしょ〜?」

リカルドとは対照的な白いコートに、こちらも真っ白なパンツ。―――髪の毛は結ばれる事もないまま背中に流されている。

「・・・白は目立つぞ」

「いいじゃない。リカルドと対照的で、でもお揃いみたいで」

随分気に入ったらしいは、満足そうに笑う。

戦場ではあまり褒められた格好ではないが、本人が気に入ったのなら別にいいだろう。

あれから訓練と称してと手合わせをしたリカルドには、彼女の力量がそんな事で左右されるものではないという事も解っていた。

「リカルド、出世払いで返すから」

「期待はしていない」

支払いの途中でそう口を挟んだへそう返し、チラリと横目で彼女の姿を見やる。

何がそんなに楽しいのか、くすくすと笑みを零す

けれどその服装があつらえたように似合っている事も確かで。

そういう意味で言えば、あの店員の腕はそう悪くないのかもしれないとそう思う。

「・・・行くぞ」

「りょうか〜い!」

自分の掛け声にご機嫌な声を上げるを横目に、リカルドはほんの僅かに口元を緩めた。

 

 

素のままの自分が好きだと、そう告げてくれたから

 


楽しい楽しい、お買い物。

 

作成日 2007.12.18

更新日 2008.2.3

 

戻る