「さ、寒い・・・」

用意されていた船に乗り、進む内に少しづつ冷たさを帯びていく空気に、しいなは思わず身を震わせる。

無意識に擦り寄ってくるしいなに、は呆れた視線を投げ掛けた。

「そんな格好してれば、寒くて当然でしょ?」

「そ、そうは言ってもねぇ・・・って同じ薄着なのに、何であんたは平気なんだい!?」

しいなほどではないが、が着ている服とて防寒に優れているとは決して言えない。

それなのにも関わらず、何時もと変わらない様子のに、しいなは思わずそう声を荒げた。

「何言ってんの。私だって寒いわよ?」

当然でしょ?と、やはりいつもと変わらない表情で言ったに、しいなは最早言葉も無かった。

 

テセアラからこんにちは

 

レネゲードの基地についたしいなは、外とは比べ物にならないほど快適な暖かさに、ホッと息をついた。

「ここはずいぶん暖かいわね」

やはり先ほどと変わらない様子で呟くに、しいなは溜息をつく。

「あんた・・・全然、寒がってる風には見えなかったんだけど・・・」

「寒いと思えば、余計寒く感じるものよ?だから自分にこれくらいの寒さなんて大丈夫って言い聞かせて、平静を装ってたのよ。私の並々ならぬ根性で」

「根性・・・。あんたにメチャクチャ似合わない単語だねぇ」

「放っといて」

レネゲードの人間に連れられて基地内を進みながら、どうでも良いような会話を続ける。

文明が進んでいるテセアラでも滅多に見られないような高度な設備に、しいなは物珍しげに辺りを見回した。

「あれ、なんだろうねぇ・・・」

「ああ、あれは・・・」

「こちらです」

しいなの疑問に答えようとが口を開いたその時、遮るように男が声を発した。

それに反応して、しいなは部屋の中に視線を向ける。

しかしは固まったように身体を強張らせ、しいなが先ほど指差した機械を呆然と見詰めていた。

あの機械がなんなのか、は知っている。―――それが戸惑いを生んだ。

何故、自分はあれがなんなのかを知っているのだろう?

テセアラの研究所などに行った事はあるが、あんな機械は見たことが無かったというのに。

記憶を探っても、あの機械を見た記憶は無い。

は急く気持ちを抑えて辺りを見回し、そうしてホッと息を吐く。

大丈夫だ。―――この場所を、自分は知らない。

、何してんだい!?」

しいなの呼ぶ声に、はハッと我に返って2人の後を追う。

駆け込んだ部屋の中では、既に男が何事かの説明を始めていた。

「確実にシルヴァラントに行くには、現在1つの方法しかありません。これに乗って次元の裂け目を通り、シルヴァラントにある我々の基地へと飛んでもらいます」

そう言って男が示した先には、大きな翼の生えた機械が数台。

「これ・・・なんだい?」

訝しげに問い掛けるしいなに、男は自慢気に口角を上げた。

「これは『レアバード』です。先ほど言ったように、シルヴァラントへ行く時や・・・あと空を飛ぶ事も可能です」

「空を!?こんな機械がかい!?」

思ったとおりに驚きの声を上げるしいなに気を良くしたのか、男は更にレアバードの特性やら機能性の良さなどの説明を始める。

けれどは、そんな2人に構っている余裕など無かった。

「・・・レアバード」

レアバードの事も、は知っていた。

勿論こんなものテセアラには無い。―――こんな高度な機械は、まだ発明されていない。

先ほどの機械と違い、見覚えは無かった。

それだけが救いであり、またそれが更に疑問を生む。

見たことも無い機械を、どうして知っているのか。

答えがあるのだとすれば、それはきっと失った己の記憶の中にあるのだろう。

「それじゃあ・・・行こうか」

少し不安げな面持ちでそう促すしいなに、は戸惑いを押し隠し微笑み頷く。

しいなと違い、には不安は無かった。

なぜならば、これがちゃんと飛ぶという事を彼女は知っていたから。

レアバードに乗ると、微かな振動の後一気に加速し、そして大空に舞い上がる。

目前に迫った次元の裂け目を目に映しながら、は首を振った。

今の自分には、関係が無い。

過去など自分には必要ないのだ。

ゼロスの護衛であり、しいなの友。―――それだけで十分だ。

そう自分に言い聞かせるけれど、騒ぎ出した心中はそう簡単に収まってくれそうにはなかった。

 

 

次元の裂け目を抜けた2人の目に、広い世界が広がった。

しかしそれをじっくりと見る前にすぐさまレネゲードの基地へと誘導され、2人はレアバードに乗ったまま基地内へと収容される。

テセアラで見た基地内と大差ない格納庫で、レアバードから降りたしいなは思わず大きく安堵の息を吐き出した。

「め、滅多に出来ない経験をさせてもらったよ」

「声が震えてるわよ、しいな」

心臓を抑えて強張った顔のまま言うしいなに、はサラリと言葉を投げかける。

恨めしそうなしいなの視線を軽く流して、格納庫内をゆっくりと見回した。

「それにしても・・・」

漸く落ち着いたのか、しいなが何時もの様子を取り戻してポツリと呟く。

「さっきチラッと見えた景色が、シルヴァラントなんだろ?なんか・・・淋しいっていうか・・・味気ない風景だったねぇ」

「・・・衰退世界だからね」

テセアラが繁栄していればいるだけ、シルヴァラントは衰退の一途を辿るのだろう。

見慣れたものとはあまりに違いすぎる風景は、見ていて物悲しい気分になる。

「あたしがシルヴァラントの神子を暗殺すれば・・・このままこの世界は衰退していくんだろう?それが続けば、この世界はどうなるんだろ?」

「滅ぶでしょうね」

「・・・・・・」

「別にこの世界が滅んだって、それはしいなのせいじゃないわ。貴女が手を下さなくたって、神子の世界再生が成るとも限らないんだし・・・。それにしいながやらなくても、他の誰かがまた暗殺者として送り込まれるだけよ」

黙り込んでしまったしいなに、は淡々と言葉を続ける。―――そんなを見て、しいなは戸惑いを浮かべつつも口を開いた。

「あんたは強いね。あたしもそう思い切れれば良いんだけど・・・」

苦笑を浮かべるしいなに、も同様の笑みを浮かべる。

「そんなんじゃないわ。ただ・・・護りたいモノがあるだけよ。何を犠牲にしても、絶対に護りたいモノが・・・」

どこか遠い目をするに、きっと彼女は遠い地の青年を思い出しているのだろうとしいなは思う。―――そして何事かを吹っ切るように、少し無理をしてでも何時も通りの明るい笑顔を浮かべた。

「そうだね、あたしにもあるよ。・・・何を犠牲にしても、絶対に護りたいもの」

お互い顔を見合わせて、笑う。

が居てくれて良かったと、しいなはそう思った。

そんな穏やかな空気を裂くかのように、遠くから床を踏みしめる靴音が響き、そうして今は2人しか存在しない格納庫に、数人の兵士を引き連れた男が入ってきた。

揃ってそちらに視線を向けた2人の目に、明らかに一般の兵士とは違うだろう雰囲気を纏う1人の青年の姿が映る。

空色の艶やかな髪を後ろに束ね、ゆったりとしたマントを纏っている青年。―――彼はテセアラから派遣された暗殺者であるしいなとに目を向け・・・そして固まった。

3メートルばかり離れたところで立ち止まり、一向にこちらに向かってこようとしないレネゲードたちに、としいなは不思議そうに首を傾げる。

「どうしたのかしら?」

「もしかして・・・あたしらが女だからって侮ってるんじゃないのかい?」

不機嫌そうに声のトーンを落とすしいなに苦笑を浮かべて、向こうから来ないのならとは青年に向かって足を踏み出した。

一歩一歩近づくにつれ、男が驚きの表情を浮かべているのには気付く。

どうしてそんな顔で見られなければならないのかと眉を寄せるけれど、青年はそんなの様子にすら気付いてはいないようだ。

最後にコツリと靴を鳴らして、青年の前に立つ。―――どう声を掛けようかと思案し始めたその時、よりも先に青年が口を開いた。

「何故、お前がここに居る?」

「・・・・・・何故って言われても」

暗殺を命じられたからに決まっている。―――いや、実際に暗殺を命じられたのはではなく、しいななのだけれど。

「何を企んでいるのだ。今更・・・今更我々の邪魔をする気か?」

苦々しげに吐き出された言葉に、先ほどとは比べ物にならないほどはっきりと、の眉間に皺が寄せられた。

「初めまして、と申します。貴方のお名前は?」

「何を今更・・・」

「名前を名乗りなさい」

困惑したように・・・けれど呆れを浮かべて笑う青年に、は強い口調でそれだけを主張する。―――すぐさま青年の顔が強張り、訳が解らないと言わんばかりの表情を浮かべつつ、己の名前を名乗った。

「ユアンだ」

「・・・・・・ユアン?」

訝しげな表情を浮かべて、は探るような視線をユアンに向ける。

そんなを見据えて、ユアンは同じく探るように慎重に口を開いた。

「今度はこちらが質問をする番だ。お前はどうして・・・」

「どうしたんだい、?」

しかし青年・・・―――ユアンの言葉は、を追ってきたしいなの声によって遮られる。

はそのまましいなの方へ振り返りながら、小さく肩を竦めて見せた。

「さあ?こっちが説明して欲しいくらいよ」

軽い口調でしいなにそう告げたは、心の中だけで青年の名前を反芻する。

ユアン。

その名前を、は聞いた事が無い。

聞き覚えも、勿論だが無い―――ユアンの顔も何もかも、見覚えすら無い。

完全な、見知らぬ人物。

それでも確信できる事があった。

ユアンは、のことを知っている。

しかも彼の口調から察するに、おそらくはとても親しい間柄なのだろう。

そして彼の目的は知りようもないが、ユアンが口にした『邪魔』という言葉から、自分はそれを阻む可能性を持っているという事。

は挑むような目でユアンを睨みつけた。―――そんな仕草を認めたしいなは、不思議そうに首を傾げる。

・・・もしかして、この男と知り合いかなんかなのかい?」

鋭いしいなの指摘に、はすぐさまにこやかな笑顔を浮かべて一言。

「まさか」

「だって・・・なんか2人の会話が・・・」

静かな格納庫内。―――しかもよく声が響くそこでは、少しばかり離れていてもしっかりと会話は聞こえていたのだろう。

しいなは躊躇いがちに言葉を切るが、それでもは微笑みを絶やさない。

「生憎と、レネゲードなんて妖しげな組織に係わり合いのあるような妖しげな男に知り合いなんて作った覚えは無いわ。人違いでしょう」

「・・・おい」

あんまりな言い草に、ユアンは思わず抗議の声を上げた。

ユアンはを睨みつけるが、彼女の目に宿った拒否の光を認めて思わず口を噤む。

その時漸く、何かが可笑しいと思った。

説明をしろと言われれば難しいが、敢えて言うならば雰囲気だろうか。

ウィルガイアに居た頃纏っていた、近づくものすべてを切り裂いてしまいそうな鋭い雰囲気は今のには無い。―――代わりに柔らかい空気のようなものが、彼女を取り巻いている。

「あんた・・・ユアンって言ったっけ?もしかしての事、知ってるのかい?」

「しいな」

身を乗り出すようにして問い掛けたしいなを嗜めるようには声を掛けるが、しかししいなはそれを無視して強い口調で言い放つ。

「あんたは黙ってな。いいかい?確立が低くても、あんたの失った記憶を知ってる奴かもしれないだろ?聞くだけ聞けば良いじゃないか」

「だから・・・私にはこんな怪しい知り合いは居ないって」

「どうだろうね。実際あんたも謎に満ちてて、怪しいっていえば怪しいよ」

「失礼な」

心外だと言わんばかりに顔を顰めるに、ユアンは驚きを隠せず目を見開く。

が誰かとこんな風に親しげに話をしている姿など、久しぶりに見た。

人一倍警戒心が強く、簡単に心を許さない。―――それがテセアラの使者である少女に、間違いなく心を許している。

以前ならば、それは自分たちだけだった筈だ。

笑った顔も怒った顔も、自分を含めた4人だけが見られるものだったというのに。

そしてそれは、最近では全く見る事など出来なくなっていた。―――何時の頃からか、は自分たちに対しても、堅く心を閉ざしていたのだから。

それと同時に、しいなから発せられた言葉がじわじわと心の中を侵食していくのを、ユアンは感じていた。

「・・・失った、記憶だと?」

呆然と呟いたユアンに、しいなは視線を彼に戻す。

「そうだよ。は記憶喪失なんだ。あんたの事、なんか知らないかい?」

逆に問い返され、ユアンはジッとを見据えた。

記憶喪失。―――それが本当の事なのか、見極めようと探る。

そんなユアンの行動に、は不快そうに顔を顰めた。

「人の事をジロジロと見るなんて、失礼でしょう?」

「あ、ああ・・・すまない」

鋭い声色に、反射的に謝る。

昔から、ユアンはに弱かった。―――不器用な生き方しか出来ない彼女に、ついつい甘くなってしまうからだ。

伏せた目を再びに向けると、彼女の目に戸惑いの光を認める。

そこに恐怖の感情を見たユアンは、溜息を吐き出すと言葉を選んで声に出した。

「残念だが・・・人違いのようだ。私は彼女に会った事など一度もない」

「・・・・・・そうかい」

残念そうに肩を落とすしいなとは対照的に、は明らかにホッと安堵の息を吐く。

そんなの様子に、ユアンは少なからずショックを受けた。

大切な仲間であり、また唯一の理解者でもあったは、そのすべてで自分を含めた過去を拒絶している。

そうするまでに、彼女は追い詰められていたのだろうか。

そうするまでに、もう自分たちは必要でないと。

そこまで考えてふと思う。―――確かに自分を含めるかつての仲間たちは、が必要だと求めたけれど・・・反対に求められた事は一度としてあっただろうかと。

ユアンはシルヴァラントの神子暗殺の為に送られてきたしいなを、これからの事を説明すると別室に促した後、残ったを見据えて口を開く。

。私は君を知っている。君が失った記憶も、過去もすべて。聞きたいか?」

静かな口調で問うユアンに、は冷めた視線を向けてキッパリと言い切った。

「いいえ」

予想していたその答えに・・・けれど肯定の言葉を望んでいたことに、ユアンは気付く。

しかしそんなユアンの心中など気にした様子もなく、は更に言葉を続けた。

「必要ないわ。私は・・・記憶を取り戻したいとは思っていない」

「・・・・・・

「私は、貴方なんて知らない。そして・・・―――知りたいとも、思わない」

それだけを言い捨て、は別室に移動したしいなの後を追う。

絶望感に包まれながら、ユアンはただ無言でその後ろ姿を見送った。

 

 

少しの支度金と、シルヴァラントの地図と、そして神子たちの情報を受け取ったしいなとは、レネゲードに見送られながらその基地を後にした。

初めて見る砂漠に呆気に取られながらも歩き出すと、同行者であるがついてこない事に気付いて、しいなはその足を止める。

振り返った先には、目を細めてレネゲードの基地を見上げるの姿。―――しかしその目が基地ではなくどこか遠くを見ている事に気付いたしいなは、躊躇いがちにに向かい声を掛けた。

「やっぱり・・・あたしに付いて来ない方が良かったんじゃないのかい?」

遠慮がちに掛けられた声に、はしいなを見据えると苦笑する。

「今ごろ何言ってるの。私は私の意思で、しいなに付いて来たのよ?」

「そりゃまぁ、そうかもしれないけどさ」

言い淀むしいなに、はにっこりと微笑みかける。

「心配ないわよ。ちゃんとゼロスには別れの手紙も置いてきたし・・・。私が居なくなっても、彼には他に護衛なんて腐るほどいるわ」

それでもゼロスの身が心配である事には変わらないけれど、せめて心配くらいしてもバチは当たらないはずだ。

「別れ?別れってどういう意味だい?留守にするの間違いだろう?」

「いいえ、別れよ。どんな事情があろうと、私はゼロスの護衛を放棄したんだから。そんな私がおめおめと彼の元に戻るわけには行かないでしょう?」

何でもないことのように告げるに、しいなは絶句した。

自分に付いて来る為に、は今までの生活をすべて捨てたというのか?

まさかそんな大事だとは思ってもいなかったしいなは、本当に今更ではあるけれど慌てての元に駆け寄る。―――混乱する思考に、上手く言葉が出てこない。

「しいな、落ち着いて」

「これが落ち着いてなんていられるかい!それならそうと、何で言わなかったんだよ!!」

「言ったら、絶対に同行を拒否したでしょう?」

「当たり前だろ!!」

「だから、言わなかったのよ」

キッパリと言い切り、は混乱するしいなの背中を優しく叩いて、貰ったばかりの地図を確認しながら歩き出す。

その後ろ姿が酷く淋しげに見えて、しいなはやるせない想いで口を開く。

「それで・・・あんたはそれで良いのかい?ゼロスの為に、あんたはここに来たんだろ?それなのに・・・」

上手く言葉に出来ない自分が歯痒くて、しいなは強く唇を噛んだ。

悔しさを滲ませた声色で自分に問い掛けるしいなに、は漸く足を止めて苦笑を顔に張り付かせたまま、聞こえるか聞こえないか解らないほど小さな声で呟いた。

「失う事には・・・慣れてるもの」

勢い良く顔を上げたしいなの目に、淋しげな笑みを浮かべるが映る。

そんな風に、大切なモノを簡単に諦めてしまうが悔しくて・・・だからしいなは強い眼差しでを見据えると、先ほどの動揺など感じさせない強い口調でキッパリと言い切った。

「テセアラに帰ったら、あたしは絶対にあんたをアホ神子の所に送り届けてやる。あんたが嫌だって暴れても、無理やり押さえつけて絶対にアホ神子の前に引きずり出す。覚悟しとくんだね」

「・・・・・・しいな」

「アホ神子だって・・・ゼロスだって、絶対にあんたの帰りを待ってる筈なんだから」

絶対的な自信を秘めて伝わるしいなの言葉に、は漸く何時も通りの柔らかい笑顔を浮かべる。

「そうだと良いけど」

「そうに決まってるさ」

即座に返って来る言葉に、クスクスと笑みを零す。

「なら、ゼロスが私のことを忘れないうちに、とっととテセアラに帰らないとね」

「ああ、そうだね」

お互い顔を見合わせて、ごく自然な動作で砂漠を歩き始めた。

少しづつ遠ざかっていくレネゲードの基地を首だけで振り返って、はその姿を自分の目に焼き付ける。

自分を知っている青年。

思い出したくないと言った時に浮かんだ傷付いた目が、の脳裏から離れない。

それでも記憶を取り戻したくないと、強くそう思うから・・・―――だからどれほど心が痛もうと、引き返す事は出来ない。

記憶を失って2年。

もう思い出すことはないのだろうと、そう思っていたけれど。

シルヴァラントに来てから、は無くした筈の記憶がすぐ側まで迫ってきている事に気付いた。―――見えなかった姿が、少しづつその姿を現し始めている。

もしも・・・もしも失った記憶を取り戻して、そして過去の自分に戻ったならば。

自分は再び、元のようにゼロスの元に戻れるのだろうか?

どういう経緯で、どういう理由で自分がゼロスの護衛となったのか。―――それを不思議に思ったことがないわけではない。

その理由が、もしも今の自分が抱くモノとは全く別のものなのだとしたら。

胸の奥で疼き始めた不安に、は苦しげに眉を顰めた。

思い出したくなどない・・・出来る事ならば。

心の中でそう強く願い、不安を振り切るかのように、はレネゲードの基地から目を背けた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

書いてる本人もびっくり、ユアン再登場。

そしてユアンのキャラが、全く解りません(今更)

なんだか本格的にしいな夢になってきた感じが否めないこの話ですが、あくまでこれはクラトス夢です!(説得力皆無)

そしてギャグで行こうと思ったのにも関わらず、内容は相変わらず暗いのはどうしてなのか。題名だけが、ギャグの名残を残してます(笑)

 

更新日 2007.10.28

 

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