「さて・・・と」

足には黒い業務用の長靴、手にはゴム手袋と箒、エプロンをつけて頭には薫ちゃんがしてるのと同じようなバンダナを巻いた。

準備万端、と小さく呟いてから、あたしはテニス部の部室を開けた。

、(ほとんど強制的に)テニス部のマネージャーになった初日の出来事。

 

れ、マネージャー!!

の長い1日〜

 

強制的にテニス部に入部させられて、部室に来たのはつい昨日の事。

とりあえず昨日は見学だけと説得して、練習風景を眺めるだけで終わって。

その後部室に行って―――思わず目を疑った。

汚い!!

そりゃあもう、尋常じゃないよここ!!

なんだかんだ言って部長の手塚は綺麗好きみたいだから見える所はそれほど汚いって言うわけじゃないけど(汚いけど←どっちだ)普段あんまり使わないところとか、パッと見えないところは酷かった。

はっきり言って、あたしは潔癖症じゃない―――ごく普通の綺麗好きだ。

だけどここは、食べ終わった弁当が入ったビニール袋をその辺に捨ててあったり、埃被った衣類があったり、ぐちゃぐちゃになった雑誌はあったりとそれは酷い有様。

その上、まだ洗濯をしてないタオル類がカゴに3つ分。

使ってない用具もその辺りに放り出してあるから埃被っちゃってるし、救急箱を覗いてみればほとんど中身が入ってない。

いや、確かに忙しいのは分かるんだけどさ、誰かケガでもしたらどうするの?

医務室行くの?じゃあこの救急箱は何のためにあるの?―――って言う状態(どんなだ)

とりあえず昨日帰り際に見つからないようにバルサンを焚いておいた。

だってなんか未確認生物とかいそうだったし。

でも見つかると失礼かと思って、黙ってやっておいた。

そんなわけで、私の今日の仕事はテニス部の影の部分を何とかする事。

一日がかりになっちゃいそうだけど・・・、まあ仕方ないか。

 

 

まずは溜まりに溜まった洗濯物から片付ける事にしたあたしは、部室の裏手にある洗濯場まで往復して何とかカゴ3つを運んだ。

一回の洗濯に1カゴが限度か・・・。

なんだかんだ言っても、全自動なので放り込めば洗濯機が頑張ってくれる。

洗剤を放り込んでスタートボタンを押すと、次に部室の掃除にかかった。

まずは大量のゴミを捨てる事から始めないといけない。

食べ残しの弁当の入ったビニール袋が圧倒的に多い。

っていうか、ゴミくらい捨てようよ。

全部食べたつもりでも漬物とか残ってるでしょ?

一夏を見事に過ごしたゴミはすごい事になってるんだよ!

なんとなく匂ってきそう。

っていうか絶対いるよね、未確認生物。

バルサン焚いといて良かったと心から思いながら、次々とゴミを捨てていく。

そんな事をしてるうちにドリンクを作っとかないといけないことを思い出したあたしは、さっそく水飲み場に直行してあらかじめ用意しておいたドリンクをそれぞれの容器に移す。

それを渡しにテニスコートに行くと、みんな頑張って練習してる姿が見えた。

「はい、ドリンクここ置いとくね」

「・・・・・・ああ」

それだけですか、手塚くん。

なんていうか・・・『ありがとう』の言葉もナシですか?

マネージャーってそういうもの?―――まあ、いいけど。

ふと何気にコートに目を向けると、なんとも言えない複雑なものを感じた。

何でみんな、そんな微妙な視線をあたしに向けるの?

あそこのちょっと髪の毛の長い・・・荒井だっけ?

彼あからさまにあたしの事、睨んでるんですけど。

「・・・じゃ」

なんだか居づらい雰囲気が漂ってたから、練習を見てた手塚にそう言ってコートを出ようとすると、

「・・・どこへ行く?」

とこれまた厳しい視線を向けられた。

「どこって・・・まぁ、いろいろ?」

そろそろ洗濯も終わった頃だろうし、すぐに干さないと皺になっちゃうし。

「あたしもいろいろと忙しいんだよ、手塚」

そう忙しいんだよ、やらなきゃいけないことばっかりで。

もうちょっとあんたたちがしっかりしてくれてたら、こんなに苦労はなかったのにね。

いまだ渋い顔であたしを見ていた手塚をほっといて、部室に戻った。

ちょうど終わった洗濯物を、ちょっと離れた場所にある洗濯場まで干しに行って。

それを何回か繰り返してるうちに、呆気なく朝練が終わってしまった。

 

 

あ〜、疲れた。

朝練が終わって教室に着くと、あたしは思いっきり机に突っ伏した。

結局、大量の洗濯物と大量のゴミの始末しか出来なかった。

予定では部室の掃除まで終わらせるつもりだったのに。

放課後は買出しに行かなくちゃいけないし、朝干した洗濯物を取り込んで・・・部室の掃除も今日中には終わらせたい。

それから・・・と考えをまとめてると、不意に視線を感じてそちらに顔を向けた。

すると隣の席に座ってる手塚が、訝しそうな表情であたしの事を見ているのに気付いた。

何かな、その目は?

なんか朝からずっとそんな目で見てたよね?

「・・・なに?なんか用??」

聞いてみると、手塚はちょっと言いずらそうに口ごもってから、

「お前、朝練の時・・・」

さん!」

そう切り出した途端、クラスメートから声がかかった。

声を掛けてきたのは知らない女の子。(いや、クラスメートなんだけど転入したてだし)

「・・・はい?」

「これ、渡してほしいって頼まれたんだけど・・・」

そう言って差し出された一枚のメモ用紙。

なんだろう?

きちんと折りたたまれていて、そのままでは中が見えない。

「・・・誰からだ?」

「さぁ?」

渡されたメモ用紙を凝視するあたしと手塚。

だけどすぐに先生が教室に入ってきたので、そのメモ用紙をポケットにしまって慌てて教科書を出した。

授業が始まってしばらく経ってから思いついた事。

そう言えばさっきの手塚、何の話をしようとしてたんだろう?

 

 

ああ、なんかこういう光景って見たことあるよ。

マンガとかドラマとかで。

ほら、よくあるじゃない?屋上とか校舎裏で誰かに呼び出されてさ、ねちねち文句言われるヤツ。

今あたしの身に起こってるのは、まさにそんな非現実的な出来事だった。

昼休みに入ってようやく朝に渡されたメモの事を思い出したあたしは、トイレに行ったついでにそこで読んでみた。

内容は簡潔に『昼休みに屋上まで来てほしい』というもので。

危ない危ない、下手したら家に帰るまで忘れてるところだったよ。

そしたら昼休み中、相手にずっと待ちぼうけ食らわせることになるとこだった。

今にして思えば、そのまま忘れてればよかったと思う。

っていうか、あたしはこの人たちのこと知らないし、何で呼び出されたのか見当もつかない―――いや、相手の話を聞いてれば分かるのかもしれないけどさ、なんか嫌な口調で話し出すから聞く気しないんだよ。

「ちょっと!聞いてるの、あんた!!」

降りかかってくる言葉を右から左に聞き流してると、それに気付いたのか1人の女の子があたしの胸倉掴んでそう怒鳴った。

「・・・はぁ・・・」

「とにかく、あんたテニス部のマネージャー辞めなさいよ!今すぐ!!」

「はぁ?」

女の子の言葉があんまり思いがけなかったもので、あたしは思わず間の抜けた声を出してしまった。

「なによ、何か文句でもあるって言うの?」

いや、文句って言うかさ。

「あたし別に好きでやってるわけじゃないんだけど?」

「なによ、それ!それならさっさと辞めなさいよ!!」

辞めれるもんなら、辞めたいよ。

「今まで男テニは女マネはいらないなんて言ってたのに!」

なに?お嬢さん方、マネージャーになりたいの??

きつそうだよ、仕事?それに地味だし、雑用ばっかで大変だし・・・。

「あんた乾くんの幼なじみなんだって?どうせ乾くんや竜崎先生に取り入ってマネージャーになったんでしょ!?その上、手塚くんや不二くんにまで取り入ろうとして!!」

・・・はい?

えーっと・・・今までの話をまとめると―――皆さんは手塚や不二のことが好きということですか??

っていうか、今目の前で叫んでる(?)人たちの話を聞くと、みんな少なからずテニス部レギュラーに好意を持っていると??

・・・・・・・・・あいつらって、そんなにモテるのか!?

いやいや・・・あたしの認識不足でした。

確かに顔だけ見れば、手塚や不二らレギュラー陣は世間一般で言う『いい男』の部類に入るのかもしれない。

ということは、昨日の放課後の練習の時にテニスコートの周りのフェンスに群がってた女の子たちは、みんなあいつらの事が好きな人たちなんだな?

あたしはてっきりみんなテニスが好きなのかと思ってたよ。

いつの間にテニスブームに火がついたのかと不思議に思ってたけどね。

っていうか、その中に乾も含まれてる事に正直言ってびっくりした。

あいつは付き合うにはかなり大変な相手だと思うよ、あたしは。(←失礼)

「ちょっと、何とか言いなさいよ!!」

さっきから黙ったまんまのあたしの業を煮やして、女の子が怒鳴った。

だから・・・何かって言われてもさ。

辞めるって言ったって手塚たちがそう簡単に納得してくれるとは思えないし。

っていうか、それで納得するなら昨日の鬼ごっこにまで発展しないだろうし?

あたしはまあ・・・特別やりたいって訳じゃないから、辞めてもいいんだけど。

「・・・取りあえず、君たちの言いたいことは分かった」

胸倉を掴んでる女の子の手をやんわりと解いて、同意したようにうなずいてやる。

「だから、そういうのは部長か顧問に直接言ってくれ、以上!」

そう言い捨てて、脱兎の如く屋上を飛び出した。

後ろの方から女の子たちの叫び声が聞こえるけど、気にしちゃいけない。

一応、武術は習ってたからあの子たちフッ飛ばすくらいわけないけど、やっぱり女の子相手じゃねぇ?

なんかやっかいだな、男テニのマネージャーって。

もうかなり面倒くさくなってきたよ、あたしは。

急いで教室に駆け込むと、手塚が怪訝そうにあたしを見た。

「・・・どこへ行ってたんだ?」

「ちょっとね・・・」

これは言わない方がいいだろう。きっと手塚は気にするだろうし。

「さぁてと、お弁当でも食べようかな?あ〜、お腹空いた!」

あたしがそう言ってカバンからお弁当を取り出したとき、昼休み終了のチャイムが鳴った。

「・・・マジで?」

まだお弁当食べてないんだけど・・・。

「うろうろしているからだ。自業自得だな・・・」

手塚のそんな声が聞こえてくる。

自業自得ですか、アレが!?

あたしのせいなの?寧ろテニス部のせいじゃないの??

いや、別に手塚たちの差し金じゃないんだけどさ。

「・・・う〜!!」

「唸るな。授業が始まるぞ」

厳しい手塚の一言で、仕方なくお弁当をカバンになおして教科書を出した。

あ〜、朝から動きっぱなしなんだよ!お腹が空いたよ!!

空腹を訴えるお腹を何とかたしなめて、5時間目の授業を受けた。

5時間目が終わったら、速攻でお弁当食べよう。

ほんとに面倒くさくなってきたな、マネージャー。

 

 

放課後、先に朝干した洗濯物を取り込みに行っていた為か、部室に行くともう誰の姿もなかった。

ちょうどいいと思って何とか部室の掃除を済ませ、パッと見は綺麗になったと思う。

「さぁて、と。次は・・・」

先に買出しに行った方がいいか、それともドリンクの用意をしておいた方がいいか?

時計を見て―――先にドリンクの用意を済ませておいたほうが良さそうだと思ったあたしは、すぐに準備を始めた。

この作業も結構大変なのだ。

他の部活と比べて、テニス部は部員の数が多い。

そいつら全員の分を用意するとなると、結構な重労働になる。

それでも何とか短時間で用意をすると、さっき取り込んだばかりのタオルと一緒にテニスコートに運んだ。

これが結構重い―――こんな事続けてたら腰痛持ちになっちゃうよ。

「あ、手塚〜。これドリンクとタオル。ここ置いとくね〜」

朝と同じようにベンチの傍に立って練習を見ている手塚に声を掛けて、持ってきたドリンクとタオルをベンチに置いた。

っていうか、あんた練習しなくていいの?朝から見てるだけじゃん??

そんなあたしの視線に気付いたのか、手塚はいつも以上に眉間に皺を寄せると小さく返事をして頷いた。

「みんな楽しそうにテニスしてるね〜」

「・・・そうだな」

手塚の傍に立って練習風景を眺めてると、何故かテニス部員たちの視線が集まった。

しかも朝と同じで、その視線はやっぱりキツイ。

だから、なんでよ?あたしなんかした??

「なんかさ、あたし睨まれてる気がするんだけど・・・なんでだろ?」

黙っておこうかと思ったけどやっぱり気になったので、隣にいる手塚にそう聞いてみる。

すると手塚は他のテニス部員同様の厳しい顔であたしを見た。

「・・・お前は」

「手塚!!」

手塚が何かを言おうとした時、副部長の大石が声を掛けてきた。

どうやら練習メニューについての相談らしい。

大石は手塚があたしと話している事に気付いてちょっと戸惑ってたけど、大丈夫と軽く手を振ると再び手塚と話し始めた。

ちょっと待ってようかなとも思ったけど、あたしにはまだ買出しに行かなければいけないという仕事が残ってる事を思い出して、テニスコートを出た。

声を掛けてきた方がよかったかな?とも思ったけど、まぁいいか。

すぐに手塚から預かっていた部費を持って、ちょっと遠い所にある薬局チェーン店に向かった。

テニス部の帳簿を見ていて気付いた事―――それは無駄遣いが多いという事だ。

いや、買っているものに無駄はない。

消毒液や冷却材、包帯にバンドエイドなど・・・全部必要なものだけど。

問題は、その値段だった。

あんまりそういうことは気にしないのか、全部が高いものばっかり。

他の店に行けばもっと安く売ってるものもあるのに・・・。

帳簿を見ると、月末には必ず苦しくなっている―――まあ、値段を気にせずに買い物を続けてれば、そうなるのも当たり前だ。

ということで、あたしはちょっと遠いけどモノが安い薬局チェーン店にまで足を伸ばして、そこで大量の買い物をした。

ちょうどセールの期間だったのか、いつもよりもずっと安くて帳簿に書いてあった半分の値段で買うことが出来たことにちょっと上機嫌になる。

あたしって根っからのおばちゃん属性?なんて複雑な思いを抱きつつも、大量のビニール袋を下げて青学まで戻った。

「・・・先輩?」

ふとかかった声に顔を上げると、そこには驚いた表情の薫ちゃん。

「あれ〜、こんなとこで何やってんの?練習は??」

「今は休憩中です。それよりもその荷物・・・」

「ああ、買って来たんだよ。テニス部買出しサボってたでしょ〜」

そうからかうように言うと、薫ちゃんはちょっとバツが悪そうに俯いた。

いや、そこまで気にしなくても・・・冗談なんだからさ。

「・・・あの、それ運ぶの手伝います」

「え〜?でも休憩中なんでしょ?ちゃんと休憩した方が・・・」

「いえ、大丈夫っすから・・・」

きっぱりと言い切る薫ちゃん。

なんとなくこれ以上断るのも悪い気がして、

「じゃあ、お言葉に甘えて・・・」

と荷物を半分持ってもらった。

「・・・っ!」

「・・・どうした?重い??」

「・・・はい。先輩、よくこんなの平気で持ってましたね」

「何言ってんの?これくらい!」

薫ちゃんに渡したの軽い方だよ?と言うと、信じられないという風な顔をされた。

まだまだ鍛錬が足りないね。

そう言うとがっくりと肩を落とした薫ちゃんは、

「・・・がんばります」

とだけ返事をした。

荷物を部室に運び終わった後、片付けを手伝うという薫ちゃんをコートに追い返して、買ってきたものを片付け始めた。

朝には空っぽだった救急箱も消毒液や包帯でいっぱいになって。

とりあえず今日やろうと思っていた事は全部終わった。

時計を見てみると練習が終わるにはまだちょっと時間があったので、あたしはみんなの練習を見るために再びコートに向かった。

練習メニューを作るのに必要な体力測定のチェックとか、あと部室に置いてある使ってない用具のチェックとかやっといたほうがいいんだろうけど・・・今からやりだしても今日中には終わらないだろうし。

全部を今日中に終わらせる必要もないか、と思ったのだ。

テニスコートの入ってベンチに座ると、一気に疲労が襲い掛かってくる気がした。

なんか普通にスポーツやるよりも疲れたよ。

なんていうか・・・精神的に?

「あれ?もう終わったのか、

のんびり〜と練習を眺めてると、それに気付いた乾が近づいてきた。

「うん、まぁ粗方ね。まだ細々としたのは残ってるけど・・・今日の分は終わり」

「へぇ〜、相変わらず仕事が早いね」

乾のその言葉を誉め言葉と受け取って、誉められた事が嬉しくて思わず笑みをこぼす。

「それで、どうだい?うちのテニス部は??」

ふと感想を求められて、あたしは思わず首をひねった。

「そうだね〜。みんなレベル高いほうなんじゃない?あたしいまいち今の中学生の実力とか分からないんだけど・・・」

とりあえず思った事を言ってみると、乾はなにやらノートに書き込みだした。

他の人の前でやったら嫌がられるんじゃないの、それ?

いや・・・もう慣れたけどね、あたしは。

「あ、さん。今日こうやって会うのって初めてだよね?」

横目で乾の行動を見ていると、不意にそう声を掛けられた。

視線を戻すと、ニコニコとした笑顔を浮かべた不二。

「・・・そうだね」

なんでだろう?ニコニコと笑ってるのに、そう感じられないのは・・・。

「今日は一日、何をしてたの?」

「なにって・・・まぁ、いろいろ?」

確か朝練の時もこんな会話したような気がするな〜、相手は違うけど。

そう思って手塚のほうを見れば、未だに不機嫌そうな顔をしたまま。

ふと周りを見てみると、みんな同じような表情でこっちを見てる。

「ねぇ・・・、何であたしみんなに睨まれてるの?」

やっぱり気になって聞いてみる。

っていうか、あたしが睨まれてるんだよね?乾や不二じゃなくて。

そんな事を考えていると、不二が毒気のない笑顔で答えた。

「ああ、みんな女子のマネージャーのこと、あんまりよく思ってないんだよ」

なんか・・・サラリと言ったけど・・・。

・・・それって本人を前にして言う事?

「・・・なんで?」

一応聞いてみる。

「今まで来た女マネってロクなのがいなくてね。だから男テニでは女マネはとらないことにしてたんだけど・・・」

ああ、昼間女の子たちが言ってたのって本当のことだったんだ。

「・・・じゃあ、あたしがマネージャーになったのが気に入らなくて、みんなあたしの事睨んでるの?」

「そういうことだね」

「それって、手塚も?」

「うん、そうみたい」

いや、だからそんなにサラリと答えられても・・・。

不二って綺麗な笑顔してる割には、言う事に遠慮がないね。

って、そんな事はどうでもよくて。

何でみんなに疎まれながら、あたしはマネージャーをしなきゃいけない訳?

何気に怒りが湧いてくる。

朝から頑張って仕事してきてさ、昼にはテニス部のファンの女の子に呼び出されて。

別に誉めてくれなんて言わないけどさ―――これってあんまりじゃない?

っていうか、あたしを引っ張り込んだ張本人でもある手塚が、何で他の連中と同じようにあたしの事睨むの?そんな権利、あんたにあるわけ??

自分で言うのもなんだけど、あたしは決して短気じゃない。どっちかっていうと、気が長い方なんだけど・・・。

朝からの疲労と、なんともいえない雰囲気の悪さに、あたしは正直嫌気がさした。

あたしはこちらを見ている手塚に歩み寄って、にっこりと笑顔を浮かべると言い切った。

「今日限りで、マネージャーを辞めさせてもらいます」

「・・・・・・」

手塚は何も言い返さなかった。

 

 

退部宣言をした後、すぐにテニスコートを出た。

学校からの帰り道の途中、スーパーに寄って高級な牛肉を大量に買う。

ああ、腹がたつ!

こんな日は美味しいもの食べて、楽しいことして、早めに寝るのが一番だ。

なんとも言えないもやもやとしたものを抱えて、あたしは家に帰った。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

無駄に長くなってしまいました。そして内容がかなり薄い。

もう何が書きたかったのかわかりません。

とりあえず後は、手塚編とまとめ(?)があります。

どうぞよろしければ、見てくださると嬉しいです。

 

更新日 2007.9.13

 

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