3年生になってしばらく過ぎた頃。

授業が終わった帰りのHRで、先生が一枚の紙を配った。

『進路希望書』って書かれた紙。

もうそんな時期になったんだ、とかしんみりと思ったりして。

 

神様ヘルプ!!

 

う〜ん、いきなり進路希望って言われてもなぁ。

今はテニスで全国制覇!くらいしか考えてないし。

しかも青学ってエスカレーター式の学校じゃん。

ほとんどがこのまま高等部に上がるんじゃないの?

そう思って周りを見回してみれば、考えることはみんな同じみたいで真剣に悩んでる子なんていないみたい。

やっぱりね〜とか思って紙をカバンに放り込んで、さぁ部活に行こうと立ち上がったとき、難しい顔して紙を見てるが目に入った。

「にゃに難しい顔してんの?もしかして高校、別んとこ行くとか?」

「へっ?あ〜、そういうわけじゃないけど・・・」

なんだか様子がいつもと違う

俺の視線に気付いたのか、曖昧な笑顔を浮かべる。

「いや、なにね。ちょっと将来のことを真面目に考えてみたりして?」

いや、俺に聞かれても。

って何かなりたいものとかあるの?将来の夢とか・・・?」

「それがないから悩んでるんだよねぇ・・・。今のあたしって白紙の状態だからさ。つまり・・・赤ちゃん?」

「14年生きてきて赤ちゃん状態なの?」

「バブウ」

いや、真似しなくていいから。

何かいろいろ大変なんだな・・・、他人事じゃないけど。

そんなことを考えてたら、いつの間にか来て話を聞いていた不二が突然言った。

ってアメリカに留学してたんだよね?語学留学・・・だっけ?」

突然なんなんだろう?

そう思ったのは俺だけじゃなくて、も不思議そうな表情を浮かべてる。

「・・・そうだけど?」

「何かなりたいものとかあったんじゃないの?あんまり無目的で語学留学なんて考えられないんだけど・・・」

そうかな?そう言われれば、そうかも。

語学留学って事は英語が喋れるようになるためにって事でしょ?

英語が喋れないとダメな職業ってなんだろう?―――通訳とか?

でもさっき、白紙状態とか何とか言ってなかったっけ?

「別になりたいものがあったわけじゃ・・・。ただ英語が喋れるようになったらかっこいいかと思って!」

そんな理由なの?

らしいと言えばらしいけど・・・、そんなことで留学決めちゃうの?

そうおどけたように笑うに、不二は納得がいかないのか食い下がる。

「それだけ?」

「他に何があるというのだ、不二よ」

なんとなく話をお終いにしようとしてる様子の

「ふ〜ん・・・」

俺からは不二の背中しか見えないけど、なんだか黒いオーラが出てるような・・・。

「何気に開眼するのやめようよ。エージ怯えてるから・・・」

俺の心中を察してくれたのか、が不二をなだめる。

「ほらほら、無駄話してると部活に遅れるよ?遅れたら手塚にグラウンド走らされちゃうよ〜。急いだ急いだ!」

は机の上に出したままの進路希望書をカバンに入れて、俺と不二を押し出すように教室を出た。

なんか不二の様子が変だ、どうしたんだろう?

そんなことを思いながら、に急かされて部室へ急いだ。

 

 

「あ〜、薫ちゃん!もう自主練してるの?練習熱心だねぇ・・・」

部室に行く途中、早々と着替えて柔軟している海堂を発見したは、そのまま海堂の柔軟を眺めながら(一方的に)話し始めた。

どうせは男子部員が着替え終わるまでは部室使えないんだし、と不二と2人で部室に向かう。

「ね〜、どうしたんだよ不二。さっきから黙ったまんまで・・・」

教室にいた時から様子のおかしい不二は、今もそのまま。

さっきみたいに黒いオーラを出してはいなかったけど、何か不機嫌っていうか自分の世界に閉じこもってるっていうか・・・。

「ねぇ・・・英二」

「にゃに?」

って・・・、やっぱりいいや」

いや、そんなところでやめられるとすっごく気になるんだけど。

「にゃんだよ、不二。って・・・の続きは?」

「ううん、なんでもないんだ。さぁ、早く着替えよう」

なんでもないって顔じゃないじゃん。

そう思ったけど、多分どんなに聞いても教えてくれないんだろうなって事はわかったから、諦めて着替えを始めた。

着替え終わる頃には不二の様子もいつも通りで、そんなに深刻なことでもなかったのかなとか思って。

2人揃って部室を出て、多分まだ海堂と一緒にいるのところへ向かった。

楽しそうに話しながら海堂の柔軟を手伝ってるの姿を確認して、飛びつこうかと思ったその時。

「ねぇ、英二。あれ・・・誰だろう?」

不二に促されて視線を辿れば、青学の生徒じゃない同じ年頃の女の子。

青学の生徒じゃないっていうか・・・、その子は日本人でもない。

映画の中で見るみたいな綺麗な金髪と青い目。

それにモデルかと思うぐらい可愛い。

その女の子は近くにいる俺たちなんか目に入らないみたいで、ただ一点を見つめてる。

女の子の視線の先にいるのは、と海堂。

どっちかの知り合いなんだろうか?

っていうか、普通に考えてだよね?

アメリカに留学してたんだし、向こうの友達なのかもしれない。

海堂にあんな可愛い女の子の知り合いなんていそうにないし。

!!」

思ったとおり、その女の子はの名前を呼んで。

呼ばれて顔を上げたが、びっくりしたのか目を見開いた。

「・・・ジュリア?」

「久しぶりね、

ジュリアって呼ばれた女の子は、見とれるくらいの笑顔を浮かべてそう言った。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

とうとう主人公の素性が明らかに。

謎のオリキャラ・ジュリアの登場です。

これからいろいろとめちゃくちゃな設定が飛び出してきますが、気にしちゃダメです。気にしちゃ負けです。(笑)

日本人ではないジュリア用に、主人公の名前をカタカナで呼ばせようかと思いましたが、名前変換できない事に今更気付きました。(今更?)

なのでかなり不自然ですが、漢字呼び。日本語ぺらぺらなんです、彼女。(笑)

あまり面白い内容ではないと思いますが、

最後までお付き合いいただければこれ幸いです。

作成日 2003.8.23

更新日 2008.11.9

 

 

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