地区予選、決勝。

不動峰戦シングルス3、海堂対神尾の試合が始まった。

試合の前にいろいろとハプニングはあったものの、何とか無事に試合開始。

うん、まぁ試合は無事に開始されたんだけどね。

「リズムに乗るぜ!!」

「あはははははははははははははっ!!」

試合中の神尾のセリフに、が大爆笑。

緊迫したコート内に、の笑い声だけが響いた。

 

地区予選でGO

〜後編〜

 

「笑わないで下さいよ、さん!!」

試合中だというのに、神尾は爆笑するにそう訴えた。

ある意味余裕?っていうか、せっかくの緊迫感が台無しだね。

まぁ相手の戦意を無くすって言う意味で役に立ってるのかな?

それ以前に、うちの戦意も削がれちゃうけどね。

それでも、試合は神尾有利で進んでいるようだ。

海堂が打ったスネイクは、ことごとく打ち返されている。

神尾はスピードが半端じゃなく早い。

「海堂にとって一番相性の悪い相手だね」

不二の言葉に、まだ笑いをこらえていたがコートの中の海堂を見た。

ちょうどその時、スネイクを打とうとした海堂が足を滑らせて・・・。

シャオォッ!!

俺たちがあっと思うその前に、海堂が打ったボールはあっという間に神尾のコートに戻っていた。

・・・っていうか今、ボールがすごい曲線を描いて飛んでいかなかった?

いや、流石の俺も海堂がこんな球を打つなんて想像してなかったが・・・。

「ポールの外側を通って戻ってくる『ポール回し』。れっきとした技だよ」

さっきの海堂の技を見て騒いでいる1年にそう教えてやる。

それにしてもあんなすごいのは初めて見たよ。

ちゃんとデータを取っておかないとね。

そう思ってノートにさっきのポール回し(みんな『ブーメランスネイク』って言ってるけど)のデータを書いていると、がこちらを見ているのに気付いた。

「・・・なんだい?」

「いや、何ってことはないんだけどね・・・」

「・・・?」

いつも思ったことははっきりと言うらしくなく、言葉を濁す。

「・・・?」

「いや・・・、やっぱり乾、嬉しそう・・・っていうか、楽しそうだなと思って」

「・・・そう?」

「うん。乾ってさ、いっつも新しいものとか変わったものとか見つけると、目が輝いてるんだよね。至福の時・・・っていうの?そんな感じ」

へぇ、俺ってそんな顔してるんだ。

自分じゃ分からないからな、いいデータが取れたよ。

「まぁ、それが第三者にしてみれば怖いところなんだけど・・・」

一言余計だよ、

そんな他愛のない話をしている間に試合はどんどん進んでいたようで、いつの間にか神尾のマッチポイントという佳境を迎えていた。

せっかくの海堂の試合のデータがほとんど取れなかった。

試合はこう着状態で、海堂がポイントを取れば神尾が取り返すという展開。

まさに一進一退。

そんな試合展開の中でも息1つ乱していない海堂。

まぁ俺が作った特別強化メニューをこなしていれば、それも当然かな。

「この勝負、どっちが勝つと思う?」

隣で黙ったまま試合を見ているにそう聞けば、チラリと視線を向けて笑う。

「神尾には悪いけど、この勝負・・・薫ちゃんの勝ちだよ」

自信満々で言い切る

がそう言うと、絶対に海堂は負けないと思うのは何故だろう?

結果、海堂は粘りに粘って勝利を収めた。

 

 

、ちょっと聞いていいかい?」

越前の試合が始まる少し前、相変わらず呑気そうな表情でコートを眺めるにそう声をかけた。

「なに?」

「不動峰のメンバーと知り合いって言ってたけど・・・」

「・・・どんなテニスするのか、っていうのなら知らないよ?」

質問する前にきっぱりと言い切られた。

「知らないの・・・?」

「知らない。だってテニスしてるとこ、見たことないもん」

残念、せっかくデータ収集ができるかと思ったのに・・・。

っていうか、さっきから思ってたけど不動峰とどういう関係なの?

テニス関係で知り合ったかと思えば、相手のテニスは全然知らないっていうし。

ずっと疑問に思ってたことを聞いてみると、は少し渋い顔をして。

「前にね・・・あたしがこっち帰ってきて間もない頃に、道に迷っちゃってさ。その内に不動峰に迷い込んじゃったんだよね・・・」

目的地がどこだったのか知らないけど、他校に迷い込むってどんな迷い方?

思わず突っ込みを入れたくなったけど、ここで話の腰を折ると聞きたいことも聞けないのは経験上解っているから、余計な言葉は挟まないけど。

まぁ、聞きたければ後で聞けばいいし。

そんなことを思ってるうちに、越前対伊武の試合が始まった。

いきなりツイストサーブで相手を威嚇する越前。

それを見ながら、俺はさらに疑問を解消するべくに話し掛けた。

「・・・他に知り合いとかいたりする?他校で・・・」

何かってたまに行動予測できないことがあるから・・・ありえそう。

そんな事を考えていると、あっさりと肯定の返事が返ってきた。

「・・・それってどこの学校?」

「え〜っとね、不動峰でしょ?それから氷帝でしょ?氷帝は前に乾に偵察頼まれた時に知り合ったんだよね・・・」

懐かしそうに遠くを見つめながら話す

そう言えばあったね、そんな事も。

あの時は本当にいい写真が撮れたよ。

まぁ、そのせいで氷帝テニス部と妙な繋がりが出来ちゃったのは困りものだけど。

「それから?」

「それから〜、山吹とルドルフ・・・くらいかな?」

くらいって・・・、それってこの辺りのテニスの有名校ほとんどじゃない?

本当にどうして知り合ったのか、俺にも想像つかないんだけど。

「山吹はね、全員知ってるわけじゃないんだけど・・・こっち帰って来てすぐに街で遭遇して意気投合したんだ」

街で遭遇?

って部活に出てるからほとんど街をぶらつく時間なんてないはずなのに・・・。

もしかしてすごいタイミングで知り合ったの?

これだから困るんだ。―――まぁ、本人はものすごく楽しそうだけど。

「・・・ルドルフは?」

「ルドルフは別にそんなに知り合いはいないよ?裕太くらいだもん。裕太がルドルフに転入しなかったら、1人も知り合いいないだろうし・・・」

裕太って・・・確か不二の弟?

それもそれで疑問だよ、いつ不二の弟と知り合ったの?

っていうか、交友範囲広すぎだよ。

そんな試合中にはどうでもいい考えに陥っていると、不意にコートが騒がしくなった。

見てみると、越前が左眼から血を流している。

どうやら折れたラケットの破片が、運の悪い事にまぶたを掠めたようだ。

「うわ、痛そう・・・」

は顔をしかめつつ、傍に置いてあった救急箱をベンチにいる大石に手渡した。

試合は一時中断。

棄権かと思われたその時、越前は続けると言い放った。

竜崎先生に応急処置をしてもらい、10分という制限時間付きだったが・・・。

無茶するね、越前。―――まぁ、俺でも止めないだろうけど・・・。

再び試合が再開された。

「ああ、またボヤいてる。―――飽きないなぁ、伊武も」

試合中、隣にいるの呟くような声が聞こえてきたけど、あえて無視した。

っていうか、意味分からないし。

しかも呆れた口調なのに、何でそんなに楽しそうなの?

確かに伊武ボヤいてるけど・・・それってそんなに楽しいの?

伊武の技を二刀流でやり過ごして、最後の最後で逆回転のスマッシュを打って、越前は竜崎先生との約束どおり、10分以内に試合を終えた。

これで青学の勝ちは決まった。

手塚と・・・あと不動峰の大将の試合が見れなかったのは残念だけど、まぁ妥当な結果かな?

「地区予選、準優勝、不動峰中学!優勝、青春学園中等部!!」

コートにアナウンスの声が響き渡る。

「やっぱり正式名称はつらいよね、青学」

感想はそれだけなの?

もっと他にないわけ?優勝した喜びとか。

「でもあれだね。せっかくだから手塚と橘くんの試合見たかったな・・・」

「・・・確かに」

ポツリと呟いたの言葉に同意すると、にっこりと笑顔を向けられた。

「まぁ、このまま勝ち進めばそのうち見られるでしょ!」

楽しみは後に取っておこうと伸びをしながら笑うに、今度は心の中で同意する。

そうだ、楽しみは後に取っておこう。

俺だって強くなった不動峰と試合してみたいからね。

 

こうして波乱に満ちた地区予選は、青学の優勝で幕を閉じた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

やっぱり面白みのない内容に・・・。

これは、この先どうすればいいのか悩みますよね。(聞くな)

やっぱり原作通りにするとなると、変なチャチャが入れにくいって言うか・・・。

まぁ、原作を書いている以上、そこを何とかしなきゃダメなんですけどね。

とりあえず今回は主人公の交友関係について、少しだけ暴露。

というか、それほどたいしたものでもないんですけど。

更新日 2008.8.17

 

 

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