ギルドの巣窟、ダングレスト。

いつも夕日のような赤い光に照らされたその街を、1人の少女が忙しそうに駆けていく。

「おー、!調子はどうだ!」

「ありがと、おかげさまで絶好調よ!」

人の多い大通りを人波を縫うようにして駆けるは、露天で果物を売っている男に向かいにっこりと微笑みかける。

「おい、!時間あったら今夜どうだ?」

「ごめんね〜、実はちょっと用事があるのよ。また今度誘って!」

また別の男からの声にも明るい声色でそう答えて、ひらひらと手を振りながらはユニオン本部へと向かう。

そんな彼女の後姿を見送った露天の男は、微笑ましいと言わんばかりの面持ちで今まさにに振られた男を見て小さく笑った。

「相変わらず忙しそうで」

がダングレストに来てから、早くも3ヶ月の時が過ぎていた。

 

 

「こんにちは〜!」

おざなりなノックをしてから、返事が返ってくる前に扉を押し開けたは、部屋の一番奥にどっかりと座って笑っている男を認めてにっこりと微笑む。

「遅くなってごめんね、ドン。今から準備するから」

「構わねぇよ。ゆっくりやってくれ」

ドンの言葉に微笑みを崩さないまま、は勝手知ったるなんとやらで、あらかじめ部屋に常備されてある茶器類を手にお茶を入れ始めた。

がダングレストに来てから、早3ヶ月。

その間にドンから回された仕事やらなんやらで少しの間ダングレストを空ける事はあれど、ほとんどの時間をこの街で過ごしていた。

元々ザーフィアスで暮らしていたにとっては、街の雰囲気もしきたりも何もかも違う場所だったけれど、意外と居心地は良い。

それは、この街には貴族の姿がほとんどない事も要因かもしれない。

一応仕事関連で貴族は避けては通れない相手ではあったが、基本的には貴族が好きではない。

人を見下した態度。

人を人とも思わない言動。

その全てが癇に障る。―――おそらく貴族ではない者にとっては、大抵の場合は共通した意見だろうが。

確かにこの街にも荒くれ者は多いし、明らかに人を見下した人間や横暴な人間もいるが、しかし歯向かったり反論したくらいで投獄されるわけでもない。

勿論そうした結果の責任は負わなくてはならないが、そんな自由なところがは気に入っていた。

そうして気付けば3ヶ月。

「・・・なんかあっという間だったなぁ」

「何がだ?」

「ううん、別に何も。―――はい、お茶」

ポツリと呟いた言葉にドンが不思議そうに首を傾げたけれど、は軽く首を横に振って淹れたてのお茶をドンへ差し出す。

そうしてここに来る前に買ってきておいたお菓子をお皿に乗せてドンに差し出しつつ、その1つをとって口に放り込んだ。

「うん、今日のも美味しい」

満足げに咀嚼して、淹れたてのお茶を口に含む。

ほんわりとした甘さと温かさにホッと息をつけば、それを見ていたドンがニヤリと小さく笑った。

「ほんとにお前ぇは甘いもんが好きだな」

「なによ、ドンだって意外と好きなくせに」

「俺はお前ぇに付き合ってやってんだよ」

豪快な笑い声と共にそう言われ、は憮然とした表情を浮かべながらもお菓子をもう1つ口の中に放り込む。

ドンの言葉が真実かどうかは解らないが、もしそうなのだとすれば非常にありがたい事なのだろう。

なにせ甘いものが嫌いなレイヴンは、絶対にに付き合ったりはしないだろうから。

「そりゃ、どうも」

「ははは!可愛くねぇなぁ、

「ほっといて」

からかうように笑うドンから拗ねたようにそっぽを向いて、はズズズとお茶をすする。

とドンがこうしてお茶を飲むことは、既に日常と化していた。

初めてダングレストを訪れたその翌日から、とドンは1日に1度は必ず一緒にお茶を飲んでいる。

それというのも、ドン自身がにそれを申し出たからだ。

いくらといえど、天を射る矢の首領・・・―――ユニオントップに君臨する男の部屋に軽々しく入り、お茶に付き合わせるなど出来るはずもない。

最初はどうして自分なのか、何が目的なのかと訝しんでいたが、3ヶ月経った今でも何の変化もないこのお茶会に、最初の疑惑などすっかり忘れてしまっていた。

ドン曰く、たまには若い娘と一緒にいねぇと老け込んじまうからな、だそうだ。

がお酒を飲めれば場所は酒場に変わるのかもしれないが、残念ながらまだ未成年のは酒は飲まない。

そんな事をドンが気にするとは思えなかったが、それでもこうしてお茶会に留まっているのは酒を飲まないに配慮してくれているからなのだろう。

やはり、ドンという男が解らない。―――未だにはそう思う。

なにもそれはドンに始まった事ではないけれど。

大抵はいつも一緒にいるレイヴンの方が、にとっては余程解らない。

シュヴァーンである時の彼とは、まるっきり違いすぎるのだ。

スパイとしてギルドユニオンに潜入しているにしては、どっぷりとギルドに浸かりきっている気がする。

確かに内部事情を知る為には相手の懐に深く入り込む必要があるにはあるが、レイヴンを見ているとそれだけが理由ではないような気がするのだ。

レイヴンは、ギルドを心から楽しんでいる。

勿論面倒臭い事もたくさんあるけれど、ここにいる彼は自由に見えた。

「おい、。それにしてもお前ぇ、こんなところでのんびりしてていいのか?」

「え、ああ。うん、別に大丈夫だけど・・・」

ぼんやり考え込んでいたは、ドンの不意の言葉にぼんやりしつつそう答える。

「騎士団の方からなんか命令でもされてんじゃねぇのか?こんなとこでゆっくりと茶なんて飲んでてホントに大丈夫なのかよ」

「だから大丈夫だってば。私は特に何も・・・―――・・・っ!!」

流れのままにそう答えたは、ふとドンの言葉と自分の返答に我に返り口を噤んだ。

ハッとしてドンを見やれば、当の本人はニヤニヤと楽しそうに笑みを浮かべている。

それに嫌な予感がしたは、誤魔化すようにヘラリと口元を緩めたが、しかし相手はそう甘くはなかった。

「やっぱりそうか。お前ぇも騎士だったんだな」

何の疑いもなく告げられた言葉に、は一瞬気が遠くなった。

こんなにあっさりバレるなんて・・・と己の不覚さを悔いるが、それも全て後の祭り。

ドンの声色に曖昧さが微塵もないところを見ると、既に確信していたとしか思えない。

「まさか、とは思ったがお前ぇが騎士とはな。悪ぃがあんまり見えねぇな」

それはそうだろう、は元々騎士ではない。

成り行きでついこの間騎士という立場を手に入れたに過ぎないに、そんな雰囲気がないのは当然の事だった。

しかもが騎士として仕事をしていたのは、ほんの数日の事。―――ある意味、自覚もないに等しい。

「・・・いや、ドン。何言ってんの。私が騎士なんてあるわけ・・・」

ないとキッパリ言い切りたいが、もう既に誤魔化しが利かないところまで来ている気がしては言葉を濁した。

それに相手はあのドンなのだ。―――とても誤魔化しきれるとは思えない。

「・・・え〜と」

自分はこれからどうなってしまうのだろうか。

騎士はギルドにとっては宿敵ともいえる相手なのだ。

そう簡単に見逃してくれるとはとても思えない。

しかもだけではなく、もしかするとレイヴンの正体までもがバレてしまうかもしれないと思うと、自分の失態に泣きたくなった。

しかしそんなを見つめていたドンは、気にするなとでも言うように豪快な笑い声を上げて。

「ははは!お前ぇ、なんて顔してやがる!まるでこの世の終わりを見たかのようだぞ!」

「いや、まさにこの世の終わりを見た気分なんだけど」

これからの自分の末路を思うと、まさにこの世の終わりを見た気分だ。

まず無罪放免などありえない。

このまま投獄されて情報を吐かされ、遠くない内に命も奪われてしまうのだろう。

折角1度は助かった命だというのに、まさかこんなところで失ってしまうとは。

己の迂闊さを恨まずにはいられない。

相手はあのドン=ホワイトホースなのだ。―――警戒しても足りないくらいだというのに。

「はっはっは!んな顔すんな、。別に取って食いやしねぇよ」

「・・・どうぞ、お手柔らかに」

笑顔のドンがやけに怖い。

一体自分はこれからどうなってしまうのか。

それに今まで上手く立ち回っていた筈のレイヴンを巻き込んでしまう事が申し訳ない。―――いや、そもそもこの事態にを巻き込んだのは彼自身なのだけれど。

「だから気にすんなって。ほれ、もうひとつ食いな」

そう言って皿に乗っていたお菓子を強引にの口元へ押し付けたドンは、いつもと変わらない笑顔を浮かべてを見ている。

その光景を見て少しだけ訝しく思ったは、促されるままにお菓子を咥えながらも恐る恐る問いかけた。

「・・・ドン、何考えてんの?私をどうするつもり?」

この笑顔に騙されてはいけない。

何せ相手はギルドのトップ。―――この世の酸いも甘いも体験した人間なのだ、油断はならない。

しかしそんなの警戒を振り払うように、ドンは豪快に笑って見せた。

「だからどうもしねぇっつってんだろうが。お前ぇも疑りぶかいヤツだな!」

まぁ、ここで生きてくにはそれくらいがちょうどいいかもしれねぇがな。

そう言って満足そうにお茶を飲んだドンを見やり、本当にドンがどうする気もないのではないかと気付いたは、訝しげに眉を寄せた。

「どうもしないって・・・、なんでどうもしないの?」

「なんでって・・・。お前ぇ、どうにかしてほしいのか?」

「いや、それは回避したいけど」

「なら、いいじゃねぇか」

あっさりとそう告げられ、それならいいのか・・・と納得しかけたは、そういう問題じゃないと慌てて首を横に振った。

「っていうか、可笑しくない?普通スパイを見つけたらそのまま放置しておかないと思うんだけど」

「んな心配はしなくてもいいんだよ。俺の寝首をかきたきゃ、いつでも来い」

余裕に満ちた態度でそう言い切るドンに、はますます理解出来ないと眉を寄せる。

しかしその時ふと、先ほどのドンの言葉を思い出し、はまさかと思いつつもためらいがちに切り出した。

「あの・・・さ、ドン」

「なんだ?まだ何かあるのか?」

「さっき・・・『お前も』騎士だったんだな・・・って言ってたけど」

確かに、ドンはそう言った。

『やっぱりそうか。お前ぇも騎士だったんだな』と。

それはどういう意味なのか。

レイヴンと以外に、まだ騎士がスパイとしてギルドにいるのか。―――それとも・・・。

ジッと自分を見つめるドンを見返して、はごくりとノドを鳴らす。

質問は慎重にしなければならない。

もしドンがカマをかけているだけだったなら、ここでボロを出すわけにはいかないのだ。

そんな思いを抱くを前に、ドンは何でもない事のようにさらりと衝撃的な言葉を口にした。

「なんだ、お前ぇレイヴンから聞いてねぇのか?ヤツが騎士団の人間だって事は、とっくに知ってるぜ」

「・・・・・・」

「だからヤツにも同じ事言ってやったんだよ。そん時のヤツも相当驚いた顔してたがな」

そう言ってその時のレイヴンの顔を思い出したのか、心底楽しそうに笑うドンを呆然と見つめて、は密かに拳を握り締めた。

「・・・あのおっさんめ」

の脳裏に、へらへらとした笑みを浮かべるレイヴンの姿が浮かぶ。

では今感じた絶望感や後悔や不安は、まったくの無意味だったという事ではないか。

あのおっさん、どうしてくれよう・・・と心の中で毒づいたは、とりあえず自身を落ち着けるために大きくため息を吐き出すと、やはり楽しそうに笑いながらお茶を飲んでいるドンを見つめて口を開いた。

「ねぇ、ドン。レイヴンが騎士団の人間だって知ってて、どうして傍に置いてるの?」

それは純粋な疑問だった。

確かにドンは強い。

そう簡単に寝首をかく事など出来ないだろう。

しかしギルドを潰すのは、何もドンの首を取るだけが方法ではないのだ。

身内に敵がいるという事は、組織の壊滅も在り得る。

だというのに、何故その敵であるレイヴンを放置しているのか。

そんな疑惑を言葉に乗せて放ったに、ドンは持っていたカップを置いて。

「・・・さぁな」

曖昧な言葉を零しつつ、ドンはニヤリと笑む。

その笑みは今まで見た中で一番優しく、穏やかなように見えた。

 

 

「ああ、そうなのよ。困った事にドンにはすっかりバレちゃってんのよね」

夜、お茶会を終えてドンの下を去ったは、酒場で待ち合わせをしていたレイヴンと顔を合わせてすぐにドンとのやり取りの一部始終を説明した。

そして返ってきたセリフが、これだ。

たとえでなくても怒るに違いない。―――だからこれは正当な怒りだと判断し、はへらへら笑いながらお酒の入ったグラスを傾けるレイヴンの頭に拳骨を振り下ろした。

それに痛い!と声を上げるレイヴンを無視し、注文した夕飯へと手を伸ばす。

なんだか色々なことが馬鹿らしくなってきた気がする。

そんな思いに襲われながらも、今後の為にとは厳しい眼差しをレイヴンへと向けて持っていたフォークを眼前に突きつけた。

「レイヴン、あんたわざとでしょ?」

「わざとって何が?」

「わざと私に黙ってたでしょ、ドンにバレてるって事!」

強い口調でそう告げれば、レイヴンはまたヘラリと笑う。

それが肯定を表しているのだと察して、は深い深いため息を吐き出した。

「・・・あんたねぇ」

「だって言っちゃったら面白くないでしょうよ。それにちゃんも俺と同じような立場なんだから、ちょっとは緊張感とか警戒心とか持ってもらわないとね」

「だからって、私本当に心臓止まるかと思ったんだから!」

ちゃんがボロ出すからでしょうが。そんなあっさりとバレちゃうなんて、おっさんだって思ってなかったわよ」

さらりとそう告げられ、はうっと言葉に詰まる。

確かに迂闊だったと自分で解っている。

あんな簡単なカマにあっさり引っかかるとは、本当に自分が情けない。

考え事をしていたとしても、そこはさらりと流せるようにならなくては、今後に大きな不安が残る。

ちゃんはさ、自覚がないのよ。騎士団員だっていう、さ」

他人には聞こえないよう小さく声を潜めてそう呟いたレイヴンに、はムッと眉を寄せる。

「自覚なんてあるわけないでしょ。私は元々騎士団員じゃないんだから。お城にいたのだって数日間だけだし、そんなんで自覚持てって方が無理よ」

「持ってもらわないと困るわよ。ちゃんがどう思ってようと、現実は変わらないんだからさ。―――少なくとも3年間はね」

ひそひそと囁かれるレイヴンの言葉に、は腹立ち紛れにフォークでこんがり焼けたポテトを突き刺した。

レイヴンの言う通りだ。

彼の言う通り、少なくとも3年はは騎士で在り続けなければならない。

それが契約なのだ。―――の、命を賭けた。

完璧に言い負かされた事を自覚しているは、ムッツリと黙り込んだままポテトを口の中に放り込む。

よりにもよってレイヴンに言い負かされた事が悔しい。

それが解っているのか、レイヴンはそれ以上言葉を続ける事無くお酒の入ったグラスを傾ける。

それを横目で見ていたは、気持ちを落ち着けるためにと深呼吸してから口を開いた。

「今回は私が迂闊だったわよ。これからは気をつける。だからあんたも変な隠し事しないでよね」

「了〜解、気をつけます」

本当かよ、と突っ込みたいところを堪えて、は皿の端に乗っているプチトマトを口へと運びながらため息を吐く。

こうしてレイヴンと夕食を共にするのもまた、の日常となっていた。

1日に1度、お互いの状況を話し合う場を作る。

それが本来の目的だったはずだというのに、気がつけば無駄話ばかりしている気がする。

まぁ、としても1人で食事をするのは味気ない為助かっている事は助かっているが、誰かに食事を誘われても断るしかないというのは少し困りもので。

見知らぬ人間との食事は気を遣って楽しいものではないが、広く情報を得る事と人脈を広げる事には一役買っている。

それが出来ないのは、情報屋として少し手痛かった。―――レイヴンがそこまで考えているのかは解らないが。

「んで、ちゃん。そろそろ聖核の情報とか集まってたりする?」

が注文したチーズを肴に酒を飲みつつ、レイヴンが大して気のない様子でそう問いかける。

本当に聖核を見つける気があるのかと疑いたくなるようなその態度に、呆れたように肩を竦めて。

「集まってるわけないでしょ。まだ集めてもないんだから」

「・・・は?んじゃ、ちゃん、この3ヶ月一体何してたのよ」

あちこち急がしそうに走り回っていたのは知っている。

てっきり正体も解らない聖核の情報を得る為に駆け回っているのかと思っていたが、どうやら違ったようだ。

そんなレイヴンの問いに、は呆れたようにテーブルに頬杖をして。

「んもー、おっさん全然解ってないんだから。情報屋って言ったって、そう簡単にこっちが欲しい情報なんて手に入らないんだからね」

どこの世界でも、新参者には厳しい。

彼女が主に活動していたザーフィアスならともかく、まだダングレストに来たばかりのはまさにその新参者に当たるわけで。

そんな誰が信用できるかも解らない場所で情報を集めるなど命取りだ。

情報によっては、一歩間違えば命に関わる事もある。

だからはここに来てから今まで、顔を覚えてもらう事と人脈を広げる事に時間を費やしたのだ。

それこそ酒場に集う人間から、怪しげな商売をしている者、はては普通の民間人や商売人まで。

それこそあちこち歩き回り、気軽に声をかけ、少しづつ少しづつ知り合いを増やしていったのだ。

「へ〜、情報屋ってのも大変なのね〜」

そう説明したに対し、レイヴンはまるっきり他人事とばかりに気のない様子でそう呟く。

私がこんなにも苦労してるのは一体誰のせいだと頬を引き攣らせつつ、はレイヴンが手を伸ばした先にあるチーズを横取りするようにフォークで突き刺し、恨めしそうな顔をするレイヴンなど知らぬ様子でパクリと口に咥えた。

「そうよ。大変なのよ、情報屋って。ただ単に人に話を聞きに行けばいいってもんじゃないんだから」

それで事が済むなら話は簡単だ。

誰もが正直に話してくれるなら、こんな苦労はしない。

しかし現実はそうはいかないのだ。

それぞれがそれぞれの思惑をもっている。

時には嘘の情報を提供されることもあるし、頑として語ってくれない事もある。

その嘘をどう見抜き、どう相手に話をさせるか。―――人間相手だからこそ余計に難しいのだ。

「・・・人は裏切る生き物だからね」

ポツリと呟いたの顔は暗い。

もしかすると過去に騙された経験があるのかもしれないと思ったが、レイヴンはあえてそこは突っ込まなかった。

聞いても答えてくれるとは思えない。

そう思ったからこそ、レイヴンは話題を摩り替えるように明るい声色で口を開いた。

「・・・んで、結局どうなのよ。情報屋として仕事できそうなの?」

あんまりのんびり待ってられないわよ、と言葉を続けて、レイヴンはグラスに残っていた酒を一気に煽る。

何せ相手は正体も何も解らない物なのだ。

手に入れた情報が正確かも解らない以上、多少面倒臭いが手当たり次第に当たるしかない。

そんな思いを込めたレイヴンの問いに、はニヤリと笑って見せた。

「ま、完璧とは言わないけどそれなりに地盤も固まったし・・・そろそろ集めますか、聖核情報」

「出来ればしょっぱなからヒットして欲しいけどね」

「ま、そこら辺はあんまり期待しない方が良さそうだけどね」

何度も言うが、そう簡単に見つかるものならとっくに見つかっているだろう。

長期戦を覚悟するしかない。

「契約の3年以内に見つかるといいわね」

「他人事だと思って・・・」

「だって他人事だもん、完璧に」

そう言って悪戯っぽく笑ったに、レイヴンは困ったように笑った。

 

 

ダングレストの

(っていうか、毎日毎日私と食事してるなんて、他に誘う人いないの?)

(ほっといてちょーだい)


折角ダングレストにいるんだから、ドンとの絡みもないとね。と思いまして。

決して、このままだとレイヴン以外のヴェスペリアキャラとの絡みがないから急遽入れた訳ではありません。

いや、本当に。(笑)

それにしても、今まで出てきたヴェスペリアキャラ2人ともが親父とは・・・。(なんとなくがっくり)

作成日 2009.11.29

更新日 2010.6.12

 

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