「これからあなた方を解放します。軍事機密に関わる場所以外は、全て立ち入りを許可しましょう。―――まず、私たちを知ってください」

連行と言う形でタルタロスに乗ったルークとティアは、真剣な表情でそう告げるマルクトの軍人を見返し、そうして2人顔を見合わせる。

「その上で信じられると思ったら力を貸して欲しいのです」

戦争を起こさせない為に、と付け加えられた言葉に、ルークは隠すでもなく表情を歪めた。

突然現れた少女と共に邸から遠く離れた場所へと飛ばされ、そうして訳も解らないまま捕まり、そうして聞かされた戦争が始まると言う話。

ルークにとっては寝耳に水な話な上に、どうして自分がこんな事に巻き込まれるんだと文句の1つも言いたいところだけれど。

とりあえず、このまま捕虜の身でいるよりはマシなのかもしれない、とそう思う。

ティアの言う通り、彼に協力すれば無事にキムラスカまで帰れるだろう―――自力で歩いて帰るよりも、確かにこの陸艦に乗っていた方が楽は楽だ。

けれど言われた通りに従うのも、なんだか面白くない気が・・・。

「決心がついたら呼んでください」

不貞腐れた面持ちでそっぽを向くルークにそう言い残して、おそらくは忙しい身なのだろうジェイドは早足で部屋を去って行った。

 

タルタロス検隊

 

ジェイド、そしてイオンが去った部屋の中は、ひっそりと静まり返っていた。

唐突に結論を迫られ、ティアとて動揺は隠せない。

どうしてこんな事になってしまったのかしらという呟きも、強制的にこの旅が始まってから一体何度目になるのだろうか―――その原因は自分にあるので、仕方がないといえばそれまでなのだけれど。

それよりも何よりも。

ティアは部屋の隅に積まれてある木箱の上に腰を掛け、足をブラブラとさせている少女を見やる。

ジェイド自身から、自分の副官だと紹介された少女。

マルクトではジェイド=カーティスと並ぶ程有名な名を持つ者は、しかし己とそう大して歳が違わないように見える。

噂で聞いただけでしかない人物ではあるが、想像していた人物像とは掛け離れている事は間違いない―――こんな見るからに隙だらけの様子で、本当に軍人が勤まるのだろうかと失礼な事さえ思う。

そして、どうして彼女はここにいるのだろうか?

ジェイドがこの部屋を去った以上、彼女にもここにいる必要などない。

「・・・・・・」

考えられる可能性としては、自分たちの監視。

しかしジェイド自身が艦内を歩き回る許可を出したのだから、わざわざそれに監視をつける理由が無い。

万が一にも、走行する陸艦から逃げ出すなど不可能だろう。

だとすれば、彼女は一体何の為に?

明らかに存在が浮いていると言うのに、には全く気にする素振りは無い。

「ティアさん、ティアさん。どうかしましたの?」

ボンヤリと考え事に意識が集中していたティアは、不思議そうに自分を見上げるミュウの声に我に返った。

「・・・あ、いいえ。どうもしないわ」

「そうですの?」

慌てて首を振って微笑むと、ミュウはそれ以上気にする事も無く素直に納得し、再び己の主人であるルークへと楽しげに話し掛けている。

ま、これ以上考えていても仕方がないわね。

ティアはとりあえずそう結論を出し、おもむろに立ち上がると面倒臭そうに肩肘をついて座っているルークへと視線を向けた。

「ルーク、艦内を歩いてみない?今世界がどうなっているのか、貴方にも少し解ると思うわ」

「ご主人様!探検ですの!!」

ティアの提案に興奮気味に飛び跳ねるミュウを一瞥して、ルークは大袈裟にため息を吐く。

「・・・めんどくせー」

といいつつ、その腰はすんなりと上がっているところを見ると、それなりに乗り気らしい。

それと同時に、木箱の上に大人しく座っていたも音を立てて床に降り立ち、一体何事かと目を丸くするティアとルークの傍まで歩み寄った。

「な、なんだよ」

「探検、するなら私が案内する」

「別に案内なんていらねーっつーの!」

「タルタロスは広い。道知らないと迷子になる」

「・・・つー事は、お前はもう迷子になった事があるんだな?」

「タルタロスには綺麗なところがいっぱいある。だから、私が案内する」

「つーか、無視してんじゃねーよ!」

ルークの突っ込みなど気にした様子も無く、言いたい事だけ言ったはくるりと踵を返し、ドアをあけて首だけで振り返った。

「早く」

「・・・ああ、もう!なんなんだよ、あいつは!!」

短く発せられる言葉に苛立たしげに髪を掻き毟りながらも、ルークはヤケクソとばかりにの後に着いて歩き出す。

その様子を呆気に取られて見詰めていたティアは、続けてルークを追いかけて行ったミュウの声に弾かれるように部屋を飛び出す。

こうして訳も解らぬまま、・ルーク・ティア・ミュウによるタルタロス探検が始まった。

 

 

「いやぁ〜ん。こんな所で会えるなんて、アニスちゃん感激ですぅ〜」

途中で偶然出会ったアニスを加え、更に賑やかさを増した一行は周りからの注目を集めつつ、楽しげに艦内を行く―――アニスに関しては、ルークを待ち伏せていたと思われるが、アニス本人が偶然と言い張るので偶然と言う事で収められた。

そして。

「ここが第32船室。―――ここも兵士が使ってる。今は、任務でいないけど」

「あー、もう!!」

先ほどから耳にタコが出来るのではないかと思われるほど何回も聞いた台詞を聞きながら、耐えかねたルークはとうとう苛立たしげに声を上げた。

突然の大声にビクリと肩を震わせたティアとアニスに比べ、やはりは驚くでもなく苛立たしげに髪をかき回すルークを見返す。

「どうした、ルーク」

「どうしたもこうしたもねぇよ!お前案内するとか言って、さっきから同じような部屋ばっかりじゃねぇか!!」

「・・・同じじゃない。さっきの部屋とここの部屋は、窓の形が違う」

「んな事、どうでもいいっつーの!」

「でもこの部屋の窓からはブリッジが見えないけど、さっきの部屋からはちょっとだけブリッジの影が見える」

「それもどうでもいい!」

激昂するルークとは対照的に、平然とした様子の

あまりにも対照的な2人に・・・そしてそんな2人の会話に、ティアもアニスも口を挟めずにいた。

ルークを擁護するわけではないが、確かに変わり映えのしない同じような船室を32部屋も案内されたティアたちには、彼の気持ちも解らなくは無い。

は確かにそれぞれの部屋の相違点を説明してはくれるが、それはティアたちにとってはどうでもいいような他愛無いものばかりだったし、ましてや言われなければ気付けないほどのものである。

しかし一方的にルークに怒鳴られているにも言い分はあった。

「だけど、ブリッジと機関室は入っちゃ駄目だってジェイドが言ってた。それなら後は船室と倉庫くらいしか見るところない」

タルタロスは軍用艦なのである。

定期便や、一国の皇女が所有する豪華客船のように、娯楽設備があるわけでもない。

それでもにとっては、どの船よりもタルタロスは綺麗だと思っていたから、彼女にしては珍しく積極的に案内を申し出たのだけれど。

しかしやはりそれはの感覚であり、他の人間も同じように感じるかどうかは難しいところだった。

自分の言葉に怒るでもなく謝罪するでもなく、ましてや悲しむわけでもなく。

ただ変わらない表情で自分を見詰めるに、ルークのイライラも募っていく。

「だったら早くそう言えっての!こんな無駄な時間使う必要ねぇだろ!?」

「ちょっとルーク、落ち着いて!」

「ルーク様!は確かにちょ〜っと変わってるけど、まったく欠片も悪気はないんですぅ。だから、許してあげてください!」

一向に治まる様子が無いルークの怒りに、ティアとアニスが漸く口を挟んだ。

主人の足元でおろおろと動き回るチーグルは心配げにを見上げるが、やはりは怒った様子も落ち込んだ様子もなく、感情の読めない表情で問答を繰り返す3人をボンヤリと見詰めていた。

マイペースなのにも程があるとティアとアニスは心の中でひっそりと思ったけれど、アニスに至っては、これがなのだから仕方がないと、もう既に悟りの境地を開いている。

「それよりも中・・・。聞きたい事があるのだけれど」

ティアは中佐と呼びそうになり、慌てての名を呼んだ。

本人から敬称ではなく名前で呼べと申し出られていたが、元来真面目な気質であり軍人であるティアにとっては、なかなかに難しい事だと言えた。

同じ神託の盾騎士団に所属するアニスならばともかく、ダアトは中立の立場とはいえ他国の軍人を呼び捨てにする事など有り得ない―――昔なじみの友達とでも言うならば、また別だろうが・・・。

多少ぎこちなさが残るものの、としてはちゃんと名前で呼ばれた事に満足しているらしい―――ティアの呼び掛けに視線をそちらへと向けて、は小さく首を傾げた。

「なに、ティア」

「あの・・・先ほどの話なのだけれど」

「先ほどの話?」

躊躇いがちなティアの言葉を反芻して、は今度こそ身体ごとティアと向き合う。

先ほどの話。

それがタルタロスに関する事ではなく、彼女たちに求めた協力の要請に関する事なのだという事は、いくらといえども理解できた。

「なに?」

「戦争は・・・止められるのかしら?」

ティアの口から零れた彼女らしからぬ弱気な発言に、アニスもルークも言葉無く問いを投げ掛けられたへと視線を向けた。

確かにジェイドとはマルクト帝国皇帝・ピオニー9世からの勅命を受けて、平和条約締結の為にローレライ教団導師イオンを伴い、キムラスカ王国へと向かっている。

しかしそれをキムラスカ側が受け入れるかどうかは、難しいところと言えた。

長らく続いたマルクト・キムラスカ間の反発。

今までの国のトップに立つ者たちがそれを望んだのか望まなかったのかは解らないが、未だ両国間の溝は深い。

大きな争いと言えるのは、僅か15年ほど前に起こったホド戦争だが、その後も小規模や中規模の諍いは絶えず起こっている。

そんな中、平和条約を持ちかけて、果たしてキムラスカがそれを受け入れるかどうか。

たとえ導師イオンの口添えがあったとしても、最終判断を下すのはキムラスカの王なのだ。

そしてもし万が一それが受け入れられなければ、ジェイドとの身の安全が保証されるとは言えない。

ジェイドとがマルクト軍において、果たしてどれほどの位置にいるのかは関係者ではないティアには解らないが、これほどの大役を任されるほどなのだから、それに違わぬ実力を有し、また皇帝の信任も厚いのだろう。

どこか聞き覚えのあるジェイド=カーティスとの名前―――どこで聞いたのかは生憎と思い出せなかったが、直接マルクトに関わりのないティアにも聞き覚えがあるというからには、余程有名なのかもしれない。

そもそも全く無名の、実力が伴っていないような軍人を相手国に向かわせる筈が無いのだ。

自分たちの本気を示す為には、それなりの使者を用意しなくてはならない。

それを踏まえて・・・―――今までとは違い、積極的に平和条約を持ちかけるのだからマルクト側の本気は見て取れるが、もしもそんな2人がキムラスカに捕えられ拘束されたまま戦争が始まれば、マルクト側にとっても痛手になるだろう事は予測される。

キムラスカがそこに付け込まないという保証があるだろうか?

最もキムラスカ王族に連なるルークとしては、自分の叔父がそんな非道な真似をするとは思っていないし反論もあるだろうが、幸いな事に今の彼にはティアの言葉の裏に隠されたそんな疑問を察する事は出来なかった。

「戦争は起こらない」

様々な葛藤を胸に自分を見詰めるティアを見返して、はキッパリとそう言い切った。

その発言に、ティアだけではなくアニスまでもが驚く。

確かにこの旅は戦争を起こさせない為のものだ―――それを目的に、彼女たちは動いている。

しかし不安要素は山ほど・・・はっきり言ってこの先どうなるか予測もつかないと言うのが本音だったりもする―――キムラスカの王が余程好戦的でなければ受け入れられる可能性は高いが、生憎と国は王の働きだけで成り立っているわけではないのだから。

一体その自信はどこから来るのだろうかという思いが顔に出ていたのだろうか。

しかしはやはり動じた様子なく、事も無げにサラリと言葉を続ける。

「陛下は平和条約を締結させて来いと言った。だから私たちは今、ここにいる」

とて、それがどれほど大変な事なのかは理解している。

いつ大規模な戦争が始まっても可笑しくは無い、まさに一触即発の現状。

けれど戦争は決して起こすべきではない問題だ―――避けられるのならば避けるべきだ。

そしてその手段である平和条約に関する使者を、ピオニーは自分たちに任せたのだ。

それはピオニーがジェイドとを誰よりも信頼している証拠でもある―――それに応えるのは部下であり友でもある自分たちの仕事だ。

「何があっても平和条約は締結させる。戦争は絶対に起こさせない」

「・・・

迷いの無い眼差しに、ティアは彼女たちとピオニー9世の揺るぎない絆を垣間見た気がした。

ここまで心から信頼されるピオニー9世というのはどんな人なのだろうかと、ティアは噂でしか聞いた事のない彼の国の皇帝を思う。

「・・・それに何かあっても、ジェイドがいるから大丈夫」

「・・・あのおっさんねぇ」

サラリと付け加えられた言葉に、今まで話の内容が理解できず不貞腐れていたルークが勢い良く食いついた。

「ほんとに大丈夫なのかよ。あのおっさん・・・口を開けば嫌味ばっかり言いやがって」

ルークの脳裏に人を馬鹿にしたような笑みを浮かべるジェイドの姿が浮かぶ―――第一印象どころか、彼にとっては良い印象など一つも無い。

「ジェイドはすごいよ。ジェイドが一度決めた事は、何があっても実現する」

「へ〜。・・・っていうか、私的にはその『何があっても』って言葉がすごく気になるんだけど・・・」

意気込むでもなくそう告げるに引きつった笑みを向けつつ、アニスが遠い目をしながら呟いた。

聞いてみたいような、でも聞きたくないような。

ルークとティアとは違い、少なからずジェイドと行動を共にして来たアニスは、彼がどういう人物なのかの想像は大体ついている―――それを察してしまえる自分を、アニスは初めて憎らしく思えたが。

「とりあえず、難しい事はジェイドが考えるから大丈夫。きっと上手く行くよ」

先ほどの説得力が嘘のように消えていく気がするのは、果たして気のせいなのだろうか。

おそらくはジェイドとの受け持ちは、作戦を立てる側と実行する側と綺麗に分けられているのだろう―――確かにその関係は、とても上手く回っている気もするが・・・。

それでもあまりにも楽観的過ぎる台詞に、本当に大丈夫なのかしらと言う疑問は消えない。

しかし今更そんな事を考えても仕方がない事も事実だった―――こうして捕虜となった今、選択肢はそれほど多くは無い。

ルークがどのように考えているかは解らないが、あくまで今の自分たちの立場はそれほど強いものではない。

たとえ彼がキムラスカの王族に連なる者だとしても・・・否、だからこそ。

「・・・ともかく、もう探検は十分だわ。そろそろ部屋に戻りましょう」

ティアは未だに何事かを言い合うルークとに視線を向けてそう言った。

からならば平和条約について何か聞き出せるかもしれないと思ったりもしたが、やはりも頼りなさそうに見えて軍人―――そう簡単に口は割らないようだ。

はぐらかされたのか、それとも天然なのか・・・肝心な事は何一つ解らなかった。

これ以上何部屋も同じような艦内を見て回っても、これ以上の収穫があるとは思えない。

ならばやはりジェイドに取次ぎを願い、正式な説明を受けるべきだろう―――ティアとて戦争を止めたい気持ちは確かだ。

問題はおそらく一番の切り札でもあるだろうルークだが、どれほど世界情勢に疎くとも、戦争を回避したいと思う気持ちは同じだろうとティアはそう信じる事にした。

。カーティス大佐に取次ぎをお願い。―――ルークもそれで良い?」

「・・・勝手にしろよ」

有無を言わさぬ口調で同意を求めれば、ルークはそれ以上反発するでもなく、しかし少し機嫌悪そうにそっぽを向いてそう吐き捨てる。

それを了承と受け取って、ティアは改めてを見詰めた・・・が。

しかし予想とは違うの困ったような表情に、ティアは内心動揺した。

「・・・あの、?」

「・・・・・・」

呼びかけても返事をしない。

確かにジェイドは、心が決まったら自分を呼べと言った―――だからそれに従ったまでだと言うのに、この反応はなんだろうか。

ただ困ったように視線を泳がせるその様子を訝しく思うティアを横目に、アニスは盛大にため息を吐き出す。

そうして一言。

「もしかしなくても・・・帰り道が解らない、とか?」

呆れた眼差しを向けそう言葉を放つアニスを見て、ティアは目を丸くする―――まさかそんな事ある筈がないと口を挟む前にが目を輝かせたのを認めて、ティアは嫌な予想が的中した事を悟った。

「アニスはすごい。どうして解った?」

「・・・解るよ。っていうか、解らない方がどうかしてるよ」

知り合って間もないとはいえ、共にいるようになってからの密度は薄くない。

その間が勝手にタルタロス内を歩き回り、1人でブリッジなり私室なりに戻って来れた事は一度としてなかった。

緊急時には道に迷う事も無いのに・・・―――時々わざとそう装っているのではないかとも思うが、そうではないらしい事は不本意ながら理解してしまった。

今回の探検も、偶然・・・というか意図的にアニスが同行しなければ、3人は捜索隊が組まれるまで広い艦内を歩き回る羽目になったに違いない。

勿論アニスの同行は玉の輿を狙う彼女自身の目的達成の手段でもあるのだが、その影に迷子の保護という切実な問題が隠れていた事は、アニスと彼女の上司しか知らない。

思わず眩暈を感じるような状況の中、ぶつくさと文句を言うルークとそれをおろおろと宥めるミュウの声を聞きながら。

本当に大丈夫なのかしら?

ティアがそんな疑問を抱いたとしても、仕方が無かったのかもしれなかった。

 

 

アニスのお陰で何とか元いた部屋に帰ってきたルークたちは、すぐさまジェイドに取次ぎを願い、これからの事についての話し合いを始めた。

そこで改めて、ジェイドたちが戦争を止める為にローレライ教団導師であるイオンに協力を仰ぎ、共にキムラスカに向かっているのだと言う事―――その為にはキムラスカ王を叔父に持つルークの『地位』が必要なのだと言う説明を受ける。

そして問題は、戦争が起こる事を望んでいる大詠師モース派の妨害があるだろう事も。

大詠師モースが何の為に戦争を望んでいるのか・・・それはその話を一概に信じきれないティアには理解出来なかったが、それを語ろうとはしないイオンにこれ以上追及する事は難しかった。

そうして一悶着あったにせよ、多少の不安はあれど漸く協力体制が整った事もあり、ジェイドはルークたちに自由を与えて部屋を後にした。

今度こそ自分に付いて来たをチラリと伺い、ルークたちのいる部屋から少し離れた場所で足を止めたジェイドは、自分よりも小さいを見下ろす。

「さて、。・・・どうでしたか?」

主語の欠けたその問い掛けに、しかしは疑問を返す事は無く。

ジェイドに何かを命じられたわけではない―――それでも何も言わなくとも、はジェイドの意図を正確に汲み取っていた。

ルークとティアがどんな人物なのか。

とて何も考えずに2人の案内役を買って出たわけではない―――勿論理由の大半が、彼女たちに述べた理由ではあったけれど。

それでもジェイドの望むだろう情報を、は彼女なりに収集していた。

そうしては、ルークたちと共にタルタロスを歩き回った先ほどの時間を思い出す。

全ての行動、そして言動を思い出し、は1つの結論に達した。

「・・・子供」

「・・・・・・?」

「あの子・・・ルークは、子供みたい」

今までの周りにはいなかったタイプだ―――確かには貴族のお坊ちゃんと呼ばれる人物と深く関わった事はあまりない。

それでもルークの言動は、その一言で片付いてしまう気がした。

「・・・なるほど。では、彼女は?」

「ティアはアスランみたい」

言葉は少ないながらも、その意図するところはジェイドにもしっかりと伝わっている。

もう一度なるほどと呟いて、ジェイドは小さく苦笑を漏らした―――扱いやすそうなタイプだと彼が思ったのかどうかは解らないが。

「悪い人たちじゃないよ」

「ま、確かに腹の探り合いには向いてなさそうですがね」

最後に付け加えられた言葉に笑みを零して、ジェイドは軽くの頭に手を置いた。

「ご苦労様でした、

「・・・ううん、楽しかったからいい」

そう言って微かに微笑んだを目に映して、ジェイドは僅かに複雑な心境を抱く。

また迷子になりそうになったけど・・・と付け加えられた言葉に、やはりアニスを同行させて正解だったと、意外に部下に振り回されている上官はひっそりとそんな事を思った。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

色々とすっ飛ばしつつも、とりあえず一区切り。

というか、肝心なところ飛ばしすぎですか。(しかも内容がぐだぐだですか)

一応ゲームでは主人公だと言うのに、ルークの出番が涙を誘うほど少ないです。

何とか重い暗い雰囲気にならないようにと頑張ってみたのですけども。(空回り感が)

作成日 2006.5.25

更新日 2007.9.18

 

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