数分前まで穏やかな雰囲気を漂わせていたタルタロス艦内は、突然の異常事態と共に緊迫感に包まれていた。

艦橋から伝えられる動揺を帯びた報告の声に、全員の身体に緊張が走る。

タルタロス前方20キロ地点上空に、グリフィンの集団が確認された・・・と。

つい先ほどまで人を食ったような笑みを浮かべていたジェイドは、表情を真剣なそれへと変え、艦橋に向かい指示を飛ばす。

それを不安そうな面持ちで見守るルークたちを横目に、は廊下の小さな窓から外の様子を窺った。

報告にあったグリフィンの大集団の姿はまだ、ここからは見えない。

一体何が起こっているのか状況を把握できていないルークに、ティアが早口で・・・けれど丁寧に説明する声を聞き流しながら、はチラリと視線をジェイドへと向けた。

そこに浮かんだ苦い表情に気付いたのは、おそらくだけだろう。―――予測していた事態が、現実になってしまったのかもしれない。

『前方20キロに魔物の大群を確認!総員、第一戦闘配備につけ!繰り返す!総員、第一戦闘配備につけ!』

艦内中に、艦長の強張った声が響き渡った。

 

 

予想の展開

 

 

これは予想された事態だった。

グリフィンの群れとライガの強襲という予想以上の事態はあったものの、それはまだ許容の範囲内ではあった筈だ。

ある少年の勝手な行動の末に、こちらの動きを制されてしまう以外は。

グリフィンとライガの強襲に、一番動揺したのはルークだった。

勿論彼は軍人ではないし、こう言った事態を体験するのは初めてだろう。―――ごく一般市民の感情としては仕方ない部分もあったけれど、それでも事態を最悪の方向へと導いたのは間違いなく彼が原因だった。

ライガの恐ろしさを身を持って知っていたルークが、魔物の襲来に恐怖を抱いた事はおかしな事ではない。

この危険な場所から逃げたいと思うのも、至極納得出来るものではあったが。

それにしてもこの状況はないだろう・・・と、ジェイドは呆れ混じりに息を漏らす。

身の安全の為に部屋に戻れと下した指示は、混乱する彼に当然の事ながら無視され、その結果・・・彼は絶対絶命のピンチにある。

勿論ピンチであるのは彼だけではなかったが。

「大人しくしてもらおうか。マルクト軍第三師団師団長、ジェイドカーティス大佐。いや、死霊使いジェイド」

壁に押し付けられたルークの首元に巨大な鎌を宛がい、ニヤリと笑む大柄な男を見詰めて、ジェイドは思わず漏らしそうになった舌打ちを飲み込む。

いっその事見捨てたい衝動に駆られるも、彼の地位が今回の特殊任務において有効な手札となることは承知済みである。

その上もしも彼がここで命を落とし、真相はどうであれジェイドにその責任の一端があると思われでもすれば、平和条約締結など不可能となってしまうだろう。―――それどころか、それをきっかけに戦争が起こらないとも限らない。

たとえルークがどんな人物であっても、彼が王族に連なる者である事に変わりは無いのだから。

「死霊使いジェイド。あなたが・・・!?」

ティアが驚きの声を上げるのを聞き流しながら、ジェイドはまるで何事も無かったかのようにやんわりと微笑んだ。

「これはこれは、私もずいぶんと有名になったものですねぇ」

「戦乱のたびに骸を漁るお前の噂、世界に遍く轟いているようだな」

「あなたほどではありませんよ。神託の盾騎士団六神将『黒獅子・ラルゴ』」

目の前の男を見据え、ジェイドは殊更明るい声色を向ける。

マルクト軍に入ってくる様々な情報。

そしてとアニスからの報告を照らし合わせて・・・―――おそらくは彼が黒獅子ラルゴなのだろうと予想をつけた。

その予想はどうやら当たっていたらしい。

ラルゴは微かに笑みを漏らし、真っ直ぐにジェイドを見返した。

「ふっ。・・・いずれ手合わせをしたいと思っていたが・・・ん、お前は?」

そうして再び口を開いたラルゴは、ふと視線をジェイドの背後へと向け・・・―――そこに立つ少女を認めて軽く目を見開いた。

「お前・・・やはりマルクトの人間だったのか」

確信に僅かな驚きの声を混ぜて、ラルゴは無表情のまま佇むへ楽しげな色を浮かべた眼差しを向ける。

ダアトで顔を合わせた時は軍服を着ていなかった為、がどこの誰なのかの判断が下せなかったのだろう。

まぁイオンがタルタロスにいる事が知られている時点で、の正体も自ずと知れてはいたのだろうが・・・。

「こんにちは、初めまして」

しかしの方は忘れているのか、それともとぼけているのか、この緊迫した空気とは正反対の空気を撒き散らしながら呑気に挨拶を返す。

「今更、惚けても無駄だぞ。お前の顔は忘れていないからな」

「・・・。六神将と知り合いなの?」

「・・・どうだろう?」

戸惑いを含みつつも問い掛けるティアに対し、は小さく首を傾げた。

「どうだろう?って。・・・もしかしてってば、本気で忘れてるとか?」

に限ってはありえそうで、アニスは引きつった笑みを浮かべる。

まさか本気で忘れているのだろうかと、ラルゴは微かに怒りを覚える。

たとえ相手が軍人であろうとも、自分よりも幼く華奢で一見するとか弱いと思える少女にしてやられた事実は、ラルゴにとっても不本意以外の何者でもない。―――だというのに相手の方が全く覚えていないなど、いくら六神将の中で一番心が広い彼といえども、思うところが無いわけではなかった。

しかしはそんなラルゴを気にした様子も無く、ゆっくりとした足取りでジェイドの隣へ歩み寄ると、腰元につけた小箱からチェーンを引っ張り出し僅かに身構える。

「速やかに彼を解放し、引きなさい。今度は見逃さない」

先ほどまで死んだ魚のようにドロンとしていた瞳に、鋭い光が宿る。

どうやらやはり覚えていたらしい。―――ダアトで見たその強い眼差しを見返して、ラルゴは面白いとばかりに笑んだ。

「決着を着けるのは望むところだが・・・残念ながら、今はイオン様を貰い受けるのが先だ」

「イオン様を渡すわけにはいきませんね」

戦闘モードに切り替わったを横目に、ジェイドは余裕に溢れた様子で毅然とそう言い放つ。

「おっと!この坊主の首、飛ばされたくなかったら動くなよ」

「くっ・・・!」

しかし状況は、圧倒的に不利な状態にあった。

イオンを渡すわけには勿論いかない。―――平和条約が結べるかどうかは、イオンの存在に掛かっていると言っても過言ではないのだ。

だからといってルークを見捨てる事もまた出来ない。

八方塞な状況に、ティアが悔しげに唇を噛んだ。

こうしている間にも、タルタロス内にいるだろうイオンが連れ去られようとしているかもしれない。

出来る事ならラルゴを倒してイオンの保護に向かいたいところだが、ルークが人質になっている今はそれも叶わない。

どうすれば良いのだろうかと、ティアが一際強くラルゴを見据えたその時。

「死霊使いジェイド。お前を自由にすると色々と面倒なのでな」

ラルゴが手の中にある何かを弄びながら、ニヤリと口角を上げた。

その意味深な言葉にティアが眉を寄せ、が首を傾げる。―――しかしジェイドは変わらぬ様子で悠然とラルゴを見返した。

「あなた1人で我々を殺せるとでも?」

どこからその自信が来るのだろうか、とティアは半ば感心しながらもそう思う。

しかしマルクト軍といえば第一に名前が上がるであろう死霊使いジェイドの言葉ならば、それも納得してしまえるから不思議だ。

そしてジェイドと同列で名前が挙げられるに、おそらくは彼女の実力も恐ろしく高いのだろうと推測した。

ジェイドのふてぶてしい笑みを見据えて、ラルゴは苦々しい笑みを零す。

確かに今自分で言った通り、死霊使いジェイドを相手にするのは色々と厄介だ。―――手合わせをしたいと思ってはいたけれど、果たすべき仕事がある今、それは歓迎できたものではない。

その上、ジェイドの隣にはがいる。

1度と手合わせをしているラルゴだからこそ解っていた。―――がどれほどの実力の持ち主なのかと言う事が。

確かについこの間と合間見えた時、ラルゴは一度はを追い詰めた。

しかしあの時、が本気を出してはいないという事も、戦闘経験が豊富なラルゴは察している。

手を抜かれた・・・訳ではないだろうが、あの時のはおそらく自分自身に様々な制約をつけて戦っていたのだろう。―――もしも彼女が何の制約も無く全力で戦っていれば、きっと今彼はここにはいなかった筈だ。

しかし今は違う。

奥の手ともいうべき手段が、今の彼にはあった。

不敵な笑みを浮かべるジェイドと、無表情で自分を見据えるを見詰めて。

自分1人で彼らを倒せるか?―――その答えは、ラルゴの手の中にある。

「お前たちの譜術を封じればな」

低くそう呟いて、ラルゴは手の中の小さな球体を2人に向けて投げつけた。

それは2人の頭上で発動し、電撃のような光の檻で彼らを包み込む。

「まさか、封印術!?」

気付いた時にはもう遅かった。

ジェイドとは苦しげな表情で膝をつき、口からは耐えかねた小さな声が漏れる。

!?」

初めて見るの苦しげな表情に、アニスは思わず声を上げ駆け寄りそうになるが、現在の状況を思い出し、咄嗟のところで踏み止まった。

「導師の譜術を封じる為に持ってきたが・・・こんな所で使う羽目になるとはな」

ラルゴの苦々しいとも楽しげともどちらとも取れる声色を聞きながら、ジェイドは搾り出すように指示を放った。

「・・・ぐぅ・・・!ミュウ!第五音素を天井に!早く!」

「は、はいですの!」

言葉少なく掛けられた声に、ミュウは訳が解らないまま言われた通り天井に火を吐いた。

天井に取り付けられた照明代わりの譜石が、強烈な光を放つ。

「今です、アニス!イオン様を!!」

「はい!!」

思わぬ目眩ましにラルゴが怯んだ隙を見て、アニスはジェイドの指示と共に駆け出す。

導師守護役として、自分がするべき事を果たす為に。

「落ち合う場所は解りますね」

「大丈夫」

すれ違いざま、ジェイドから掛けられた声に小さく返事を返し、アニスはチラリとを見た。

そうしての瞳に宿る、自分に向けられた何の疑いも無い信頼の光にニコリと笑みを返して、アニスはそのまま速度を緩める事無く駆けて行く。

「行かせるか!!」

すぐさま体勢を整えたラルゴが怒鳴りつつ鎌を振り上げるが、それはいつの間にか放たれていたのチェーンによって動きを止められていた。―――その一瞬の隙をジェイドが見逃す筈も無く、具現化させた槍を何の躊躇いも無くラルゴへと突き出す。

その一部始終を、最も近い場所でルークは見ていた。

初めての修羅場。

記憶にある中で初めて、自分の命が危険に晒された瞬間。

そうして・・・目の前で刺し貫かれる、男の姿。

その全てが恐怖を引き起こすには十分すぎるものだった。―――数々の不満はあれど、今まで穏やかな生活を送ってきたルークにとっては、衝撃的過ぎるもの。

「さ、イオン様はアニスに任せて。我々は艦橋を奪還しましょう」

ふと我に返ると、開放された自分の体は冷たい床に座り込んでいた。

まるで何事も無かったかのような態度を見せるジェイドを、信じられないものでも見たかのような眼差しで見上げる。

「でも、大佐とは譜術を封じられたんじゃ・・・」

「ええ、これを解くには数ヶ月以上は掛かるでしょう。でも貴女の譜歌とルークの剣術があれば、タルタロス奪還も可能です」

淡々と交わされる会話をどこか遠くで聞きながら、ルークはぼんやりとした意識の中、声にならない思いを胸の中で繰り返す。

どうしてこいつらは、平気そうな顔してるんだよ。

「・・・どうした、ルーク」

不意に声を掛けられハッと我に返ると、変わらない無表情でが顔を覗き込んでいた。

「・・・べ、別に」

「そうか」

しかし心の内を話す事など出来ずに誤魔化すと、はそれ以上追及しようともせず、納得したのかそうでないのか解らない頷きを返す。

ジェイドやティアの普段通りは落ち着かないのに、の普段通りに何となく安心して、ルークはホッと息を吐いた。

 

 

「・・・アホ面して寝てやがる」

まるで糸の切れた人形のように崩れ落ちた兵士たちを見下ろして、ルークは深い寝息を立てる男を呆れたように見下ろした。

「ティアさん、すごいですの!」

ミュウが飛び上がる勢いで賛辞の言葉を向けると、ティアはほんの少しだけ表情を緩める。

「タルタロスを取り返しましょう。ティア、手伝ってください」

「はい」

しかしすぐさま次の行動を促すジェイドに、ティアもまた緩んだ表情を引き締めた。

「俺は何をするんだ?」

「そこで見張りをしていて」

さっさと行動を開始する2人に慌てて続こうとしたルークだが、振り返ったティアににべもなく厳しい口調でそう言われ、思わず眉間に皺を寄せる。

明確な言葉にはしないものの、その言葉の裏に『邪魔をするな』という意味合いが含まれている事に、いくら世間知らずなルークといえど気付かない筈も無い。

確かに先ほど人質に取られてしまった事は誉められた事ではないけれど、何もそんな風に邪魔者扱いしなくとも良いのではないかと、ルークは不貞腐れたようにそっぽを向いた。

。貴女もここでルークと一緒に見張りをしていてください」

「・・・わかった」

慌ただしく去る間際、ジェイドからそう命じられ、は控えめに小さく頷く。

タルタロスの事に関して言えばティアよりもの方が断然詳しいにも関わらず、あえてこの人選にしたのは多少なりともジェイドの配慮があったからだろう。

確かにティアは冷静で理知的なタイプではあるが、若さ故か・・・それとも性格故か、カッとなる事も少なくない。

ルークの言動に納得できない部分や譲れないモノがあれば、真面目な彼女はそれを見過ごす事が出来ないようだ。―――万が一こんな所で言い合いでもされ敵に発見されれば、動き難くなる事は想像に難くない。

しかしそんなルークを1人放っておくのも心配といえば心配である。

その点で言えば、は最適な人物であると言えた。

の素直な返事を聞いたジェイドは、任せましたよと言葉を残し、ティアと共に姿を消す。

後に残された2人と1匹は、水を打ったような静けさの中、する事もなくただぼんやりとその場に立ち尽くしていた。

「・・・ったく、邪魔者扱いしやがって」

する事も無く静かな寝息を立てる兵士を覗き見ながら、ルークは誰に向けるでもなくそう1人ごちる。

それにしても・・・よくもまぁ、あんな歌を聴いただけで寝ちまうものだと不思議に思いながらも兵士を見詰めるルークに対し、ミュウがティアの譜歌について説明を始めた。

お世辞にも知識が豊富とは言えないルークは、その説明に興味を引かれるでもなく、彼にとっては少々耳障りなその高い声を適当に聞き流す。

なんだか酷くつまらない。

経緯はどうであれ、ずっと軟禁されていた邸から出る事が出来たというのに。

気が付けばどう贔屓目に見ても厄介事に巻き込まれ、その上こうして命の危険すら感じさせられているのだ。―――それだけならばともかく、誰も彼もが自分を厄介者扱いしている。

世界の情勢を知らないのも、こうして厄介事に巻き込まれているのも、自分のせいではないのに。

「・・・ったく、これからどうなるんだっつーの」

思わずそう呟きを零すと、ぼんやりと宙を見詰めていたがゆっくりとルークへ視線を向けた。

「・・・心配しなくても、ルークはちゃんとバチカルに帰れる」

抑揚の無い声で言われても説得力など皆無だが、いやに断定的な言葉にルークは軽く眉を上げる。

「なんでそう言い切れるんだよ」

「ジェイドがそう言った。ジェイドは言った事は実現させる」

「・・・またあのおっさんかよ。お前もジェイドジェイドってうるせーなぁ」

との会話の中に必ず出てくる名前に、ルークは苛立たしげに舌打ちした。

は勿論の事、あのティアでさえ彼を信用しているようだ。―――確かに実力はあるのかもしれないが、腹の底で何を考えているか解らないような人物をよく信用出来るもんだとルークは心の中でそう愚痴る。

いつでも遥か上から見下ろしているような余裕に溢れた彼の言動は、なんだか酷く馬鹿にされているような気がして、ルークにとっては気持ちの良いものではない。

「ルークはジェイドが嫌いか?」

部屋での彼との遣り取りを思い出し、ふつふつと吹き出てくる怒りを持て余していたルークは、のそんな問いに勢い良く顔を上げた。

嫌いに決まってるだろ、と言い返そうとして・・・けれど真っ直ぐ自分を見詰めるの瞳を見てしまうと、喉元まで出掛かった言葉を咄嗟に飲み込んでしまう。

ドロンとした・・・まるで魚が死んだような目をした少女の眼差しは、しかしルークにとっては不愉快なものではない。

それはの瞳に負の感情が見えないからかもしれない。―――先ほどから向けられて来た、世間知らずなルークを呆れたり馬鹿にしたような色が無かったからかもしれない。

「大丈夫。ジェイドはちょっと意地悪だけど、でもちゃんと優しいから」

「・・・あっそ」

「だからきっと、ルークもジェイドを好きになる」

「絶対ならねぇ!」

淡々とした調子で紡がれるの言葉に否定を返して、ルークはの視線から逃れるようにそっぽを向いた。

あの虚ろな・・・けれど時折鋭い光を宿す彼女の瞳は、何故か心の奥底を見透かされているような気がして、少しだけ居心地が悪かったから。

そっぽを向いたルークにそれ以上声を掛ける事無く、はまた何も無い宙に視線を戻してぼんやりと立ち尽くす。

再び訪れた静寂の中、ルークが無意識にため息を吐いたその時、ふと相変わらずの無表情のまま立ち尽くしていたが視線を巡らせ、訝しげに眉を寄せた。

それに気付いたルークは、ほんの少し興味を引かれて視線をへと向ける。

「・・・なんだよ、どうした?」

「・・・・・・なにか」

投げかけた疑問は、要領を得ないポツリとした単語によって打ち消される。

それに不機嫌そうにルークが眉を顰めたのにも気にした様子は無く、は完全にルークへと背中を向けて、おもむろにキョロキョロと辺りを窺った。

「だからどうしたんだよ!」

苛立ちを隠す事無く、ルークがそう声を上げる。―――お前まで俺を無視してんじゃねーよという非難の色が混じった声に、は促されるように口を開いた。

「・・・なにか、音がした」

「はぁ!?」

あまりにも漠然とした言葉に呆気に取られる。

そりゃこの陸艦には自分たち以外の人間もいるのだから、物音くらいしても可笑しくはないだろう。―――それが言葉になる前に、先ほどまでほとんど動く事無く立ち尽くしていたが、唐突に駆け出した。

「・・・お、おいっ!!」

一瞬何がなんだか解らず咄嗟に声を上げたルークは、しかし己の背後で呻き声を上げた兵士に気付き慌てて口を閉じる。

そーっと背後を伺い、強制的に眠りへとつかされた兵士に起きる気配が無い事を確認して。

そうして我に返ったルークが視線を向けたその先には、もうの姿は無かった。

「・・・なんだってんだよ、あいつ」

ジェイドにここの見張りを頼まれた筈だというのに、一体どこへ行ったのか。

突然姿を消したを思い浮かべ、同じく訳が解らずおろおろと足元を動き回るミュウに鬱陶しげな視線を投げかけたルークは、吐き捨てるようにそう呟いた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

めちゃくちゃ中途半端なところで終わってみたり。

さて、ジェイドの言い付けを破って、主人公はどこへ行ったのでしょう。

それにしても無口な主人公というのは、大変動かし難いものだと改めて実感。

無口という設定上、キャラたちが真剣に話し合っていても、なかなか会話に入れません。

これじゃいてもいなくても一緒じゃん!みたいな。(最悪)

作成日 2006.6.2

更新日 2007.9.27

 

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