漆黒の翼の暴挙でローテルロー橋が落とされ、その上自然災害でアクゼリュスへの橋も落ちてしまい、仕方なく最後の手段としてフーブラス川を渡ってカイツールへ向かった一行。

途中でアリエッタの襲撃を受けたり、瘴気が噴出したりと危険はあったものの、無事にカイツールに辿り着く事が出来た一行は、国境が設置されてある検問所が騒がしい事に気付き、揃ってそちらに視線を向けた。

「だから〜、旅券はなくしちゃったんです〜!」

「だったら通すわけにはいかん。ほら、帰った帰った!!」

背中に奇妙なぬいぐるみを背負った少女が言い募るも、警備の兵士は一向に取り合う様子がないらしく、野良犬を追い払うような手振りで少女を追い払う。

その仕草に漸く少女も諦めたのか、小さくため息を吐いた後、クルリと踵を返して。

「・・・月夜ばかりと思うなよ」

つい先ほどまで愛らしい素振りを見せていた少女と同一人物とは思えないほど低い低い呟きに、一部の者以外を除いて呆気に取られる面々を他所に、ジェイドは楽しげな声色でその少女に声を掛けた。

「アニス〜、ルークに聞こえちゃいますよ〜」

その声に、漸く一行に気付いた少女の行動は早かった。

「きゃわわわん!ルークさまぁ!!」

撒き散らしかけた黒いオーラをピンク色のそれへと変えて、アニスは呆然と立ち尽くすルークへと駆け寄り、彼の袖をちょっぴりつまんで見た目通りの可愛らしさでにっこりと微笑んだ。

「ガイ、あれがアニス。―――ね、とっても面白い」

ルークとアニスを遠巻きに眺めていたが、同意を求めるように小さく首を傾げてガイを見上げる。

「面白いっていうか・・・女って怖ぇ」

女の本性を垣間見た。

心の中でそう呟きつつ・・・今のガイに出来たのは、頬を引き攣らせつつも無邪気に自分を見上げるに微笑みを返す事だけだった。

 

思わぬ再会

 

「ところで、大佐。この人は誰なんですか?」

漸くルークとの再会を堪能し終えたアニスの第一声は、まさにそれだった。

勿論その疑問ももっともだと思う。―――タルタロスにいた時にはいなかった人間がそこにいれば、気になるのも当然だろう。

もっとも、その質問はかなり遅かったような気がするが・・・。

「彼はルークの下僕のガイですよ」

「誰が下僕だ!使用人だよ、使用人」

ジェイドのあんまりな発言に、ガイはすぐさま否定と訂正の声を上げる。

どちらもあまり変わりない気がするのは気のせいなのか。―――それでもそこはガイにとっても譲れないところなのかもしれない。

しかしアニスにとって、そこは問題ではなかった。

「ちっ、ただの使用人か」

「え、何か言ったか?」

「ううん、なんにも」

小さく呟かれた声に不思議そうに首を傾げたガイに、アニスはにっこりと可愛らしく微笑んで首を横に振る。

たとえ相手が『ただの使用人』でも、愛想はタダなのだから振りまいておいて損はない。―――それが世の中を上手く渡っていくコツなのだ。

「それにしても大丈夫なのか、アニス。タルタロスから落ちたって聞いたけど・・・」

そんな2人の会話を何気なく聞いていたルークが、ふと思いついたようにアニスにそう問いかけた。―――傍若無人な態度を見せるわがまま坊ちゃんに見えても、ルークは悪い人間ではない。

そんなルークの何気ない・・・そして素直な問い掛けに、アニスはキラリと瞳を輝かせ、直後うるうると瞳を潤ませながら自分よりも背の高いルークを見上げて口を開いた。

「そうなんですぅ!・・・アニス、ちょっと怖かったです」

「ヤローテメーぶっ殺す!・・・って悲鳴上げてましたもんね」

「イオン様は黙っててください」

心持ち声色を怯えたそれへと変えて、更に震えて見せたアニスだったが、ニコニコと笑顔を浮かべながら隣で頷いていたイオンの言葉に思わず頬を引き攣らせる。

「アニス、月夜ばかりと思うなよってどういう意味?」

も黙ってて!」

便乗して問い掛けるをもぴしゃりと跳ね除けて、アニスはルークからは見えないように顔を背けて小さく舌打ちをした。

折角の演技も、2人のせいで台無しだ。―――勿論2人ともワザとしているわけではないので、責めるに責められないところが更に痛い。

そんなアニスを放置して、一通りの自己紹介と再会は終わっただろうと勝手に判断したジェイドが、改めて現状を思い小さく息を吐き出した。

「しかし・・・困りましたねぇ」

旅券がなければ、検問所を通過する事は出来ないようだ。

生憎とジェイドもも旅券を持ってはいない。―――勿論アニスもイオンも持ってはいないだろう。

超振動で国境を越えてきたルークやティアに期待できそうもない。

急ぐ旅だというのに、こんなところでいつまでも足止めされるわけにもいかない。

「アニスちゃんのお色気攻撃もきかなかったし・・・」

至極真面目な顔をしてそう呟くアニスを横目に、ジェイドはやれやれとばかりに肩を竦めて見せて。

「こうなれば・・・一か八か・・・」

「何か名案でもあるんですか、大佐?」

「ここは一つ、にお色気攻撃をしてもらうというのはどうでしょう?」

真剣な面持ちでそう言い放つジェイドに、一同は呆気に取られて思わず絶句してしまう。

それでも少なからずジェイドと関わりを持っていたアニスがいち早く我を取り戻し、頬を盛大に引き攣らせながら恨めしげにジェイドを睨み付けた。

「どうでしょうって、大佐!何考えて・・・」

それほど付き合いが長くはないとは言っても、アニスにはジェイドが・・・そしてがどういう人間なのは少なからず理解している。

そうして、それがどれほど馬鹿げた言動であっても、がジェイドの言葉に反論などしないだろう事も。

ジェイドもそれを解っていないはずはないというのに・・・―――だというのに、かなり危険な冗談を言うジェイドに、一つ文句を言ってやろうとアニスが口を開きかけたその時。

「解った」

「ちょっと、ー!!待って、ほんとお願いだから!!」

コクリと頷き、今にも検問所へと向かおうとするを背中から羽交い絞めにして、アニスは心の底からそう叫ぶ。

にお色気作戦が出来るかどうかは、この際関係ない。―――ただジェイドがやれというのなら、はそれをするだろう。

ちょっと見てみたい気もするが、の場合冗談にならないから後が怖い。

小さい身体で必死にを止めようとするアニスの側で、ガイはどうしたら良いのやら解らずおろおろとしながら現状を見つめていた。

女性恐怖症で女性と名の付くものには触れられないガイに、を止める術はない。

そんな大騒ぎする3人を見つめていたティアは、ふと考え込むように空を仰ぎ、そうしてジェイドへと視線を戻すと、何事もなかったかのように口を開いた。

「私とルークも旅券を持っていません。一体どうすれば・・・」

どうやら見なかった事にするらしい。

それが賢明だと心の中で呟きながら、ジェイドは冗談抜きでこれからどうするかと思案を始めるが・・・。

「ここで死ぬ奴にそんなものいらねーよ!!」

突然響いた怒声に視界を巡らせれば、検問所の上から一つの影が降ってきた。

それはあっという間に地面に降り立ち、ちょうどその場所に立っていたルークへと抜いた剣を振り切る。―――突然のその攻撃を何とか紙一重で避けたルークは、しかし不安定な体勢のまま地面へと尻餅をつき、呆気に取られながらも反射的に声を張り上げた。

「な、なんなんだよお前は!!」

「あれは・・・鮮血のアッシュ!!」

ぎゃあぎゃあと大騒ぎしていた3人もまた、突然の襲撃者に視線をそちらへと向ける。―――その襲撃者の姿を目にしたガイが、咄嗟に剣を構えながら驚きに満ちた眼差しでその人物の名を呼んだ。

鮮血のアッシュ。

それは神託の盾騎士団の中でも幹部の6神将の内の1人の通り名である。

リグレットにラルゴ、アリエッタに続いて彼までもがイオン捜索隊に加わっていたようだ。

どうやら神託の盾騎士団は本気でイオンを捕獲するつもりらしい。

何の前触れもないあまりに突然のアッシュの登場に、の身体を拘束していたアニスの手が緩み、今度は縋るようにの軍服の裾を握り締める。

アニスは自分の実力を知っている。

確かにイオンの道士守護役としてそれなりの力量はあるつもりだけれど、流石に六神将を相手に出来るほど命知らずではない。

しかしには同じく六神将のラルゴを撃退したという功績があるのだ。―――ただし、それは彼女が封印術(アンチフォンスロット)に掛けられていなければの話だけれど。

「・・・

どうすればいいかと緊張感漲る空気の中アニスがを見上げると、しかしは不思議そうな顔をして、アッシュと剣を突きつけられたまま尻餅をついているルークを見つめている。

そうして何を思ったか、何の躊躇いもなく足を踏み出すと、そのまま武器を構えるでもなく歩調を速めるでもなく2人の方へと歩み寄って行った。

「・・・どうかしましたか、。―――!!」

ジェイドの横をも通り過ぎて・・・―――彼の呼ぶ声も聞こえていないのか、そのままアッシュの前に立つと、ぼんやりとした瞳を彼へと向けて・・・そうして徐にガシリとアッシュの服の裾を握り締めたは、そのまま無遠慮な視線を彼へと注いだ。

「なっ!何だ貴様・・・」

戦意も敵意も何もないの様子に毒気を抜かれたのか、アッシュは戸惑った様子でを睨み付ける。―――がにはそんなものさえも通じないのか、しばらく無言でじっとアッシュの顔を見つめた後、ふと小さく首を傾げて眉を寄せた。

「私、貴方に会った事ある」

「あぁ!?何言って・・・お前は・・・っ!!」

突然のの言葉に訝しげな声を上げたアッシュは、しかし何か思い当たるところがあるのか、目を見開いてじっとを見返す。

お互いがお互いをじっと見詰め合うという微妙かつ緊迫感漲る雰囲気に、大量の疑問符を頭の上に浮かべたアニスが躊躇いがちに口を開いた。

「え、え?なに?、アッシュと知り合いなの?」

アニスの問い掛けに、は小さく首を傾げる。

知り合いかと問われれば、その可能性は限りなく低い。

何しろは仕事以外ではほとんどグランコクマを出た事はないのだ。―――仕事でダアトに行った事などないし、おまけに六神将と知り合うような接点などどこにも見当たりはしないのだけれど・・・。

しかしじっと考え込んでいたは、ふと何かに思い至ったのか、パッと顔を上げてもう一度アッシュの顔を凝視し、そうして納得したようにコクリと一つ頷いた。

「・・・思い出した。私、貴方に会った事ある。―――ダアトで」

「ダアトで?、ダアトに行った事あるの?そこでアッシュに会ったわけ?なんで?どうして?」

「迷子になってた」

の言葉少ない発言で、しかし彼女に関する情報のほとんどを知っているジェイドはなるほどと納得したように小さく頷く。

しかしそんなものはジェイド以外に理解できるはずもなく、更に疑問符を浮かべたアニスの質問へさらりと返ってきたの予想外の答えに、アニスだけではなくその場に居た全員が思わず目を見開いた。

「えぇ!アッシュが迷子!?」

アニスの叫び声と共に、全員の視線がアッシュへと集まる。

それを感じ取ったアッシュは思い切り表情を引き攣らせながら・・・―――今にも切りかかりそうなほど凶悪な眼差しで、今もまだ自分の服の裾を握り締めるを盛大に睨み付けた。

「テメェ・・・適当な事言ってんじゃねーぞ!!」

「私、嘘言ってない。迷子になってた・・・私が」

「ああ、なるほど」

アッシュの凄みにも一切動じる様子なく、またもやさらりとそう言ってのけたに、静かに場を見守っていたガイが心なしか遠い目をしながらしみじみと呟く。

の方向音痴は、タルタロス内徘徊で嫌というほどその身で味わっている。

寧ろ素直に納得できるから不思議だと、幾度となくモンスターに襲われながらも何とかタルタロス脱出を果たしたガイはそう思う。

そんな驚きや回想に包まれた面々をそっちのけに、はアッシュを見上げて無表情のまま小さく頭を下げた。

「あの時はありがとう」

「つーか、暢気に礼なんて言ってんじゃねーよ!!」

この時になって、漸く今まで済し崩しに存在を忘れ去られていたルークが抗議の声を上げる。

今もまだ彼の喉元には剣が突きつけられているのだが、先ほどまであった緊張感はもはやどこにもない。

「なんかもう、めちゃくちゃだな」

さて、この事態の収拾は一体誰がどうやってつけるんだと、半ば投げやりにガイがため息を漏らしたその時。

「何をしている!」

またもや降ってきた大きな影と共に、そんな怒声が辺りに響き渡った。

「アッシュ!私はこんな命令を出した覚えはないぞ!」

「・・・ちっ!」

その人物は現れるなり鋭い眼差しでアッシュを睨みつけ、威圧的な雰囲気でそう一喝する。

するとアッシュは気まずそうな表情で邪魔が入ったとばかりに舌打ちをし、これ以上の深入りは得策ではないと判断したのか、あっさりとルークに突きつけていた剣を収め、苦々しい表情のまま現れた時と同じように唐突のその場を後にする。

一体さっきのはなんだったんだと全員が訝しく思う中、しかし突きつけられていた剣が引かれ一心地ついたルークが喜びの色に表情を染めて、現れた男へと駆け寄った。

「先生!」

「ルーク。さっきの避け方は無様だったな」

「ちぇ、会って早々それかよ。相変わらず先生は厳しいぜ」

アッシュに向けていたのとは違う優しげな表情に、口で言うほど嫌そうな顔をしていないルークは拗ねたように顔を背ける。

それもそうだろう。―――超振動で見知らぬ地へ飛ばされ、敵国の軍人に拘束されて不慣れな旅をしていたルークにとって、ヴァンは今一番会いたかった人物なのだから。

「ヴァン!!」

しかしそれとはまた違った意味で、ティアにとっても会いたかった人物のようだった。

ルークとは違い敵意と殺意をあらわにヴァンを睨み付けるティアに、は不思議そうに首を傾げる。

そんなティアとは正反対に落ち着き払った様子のヴァンは、諭すようにティアへと優しく声を掛ける。―――そんな2人の温度差が、妙な違和感を醸し出していた。

「ティア、落ち着きなさい。お前は何か勘違いをしている」

はティアをよく知らない。

しかし普段は冷静な彼女の激昂した様子から、目の前の男が彼女にとって重要な人物だという事は理解できた。

ただ、それが良い意味で・・・というわけではないようだとも思えたけれど。

どうしてティアは神託の盾騎士団の重要人物であるヴァンを敵視しているのだろうと、が不思議に思っていたその時・・・―――ふと自分に向けられた視線を感じ取って顔を上げると、渦中の当人であるヴァンがこちらを見ているような気がした。

そして、その表情が驚きと・・・そしてなんとも表現しがたい感情に彩られている事を。

しかしその理由を問いかける事は出来なかった。

何故ならばそれはほんの一瞬の事で、今はもう彼の表情は本来のそれへと戻っていたからだ。

もしかすると見間違いだったのかもしれないとさえ思えるほど、彼の態度からは何も窺えない。

それでも何か引っかかるものを感じたは、あの感情は何と言うのだろうとぼんやりと考える。―――そう、あの感情は・・・。

「私は宿屋にいる。落ち着いたら来なさい」

ぼんやりとした思考に陥っていたの耳に、ヴァンのそんな声が届く。

その直後、再び自分へと向けられた視線に、自然と自分の身体が強張るのをは敏感に感じ取った。

「・・・貴公らは?」

ルークとティアとガイ、そして同じ神託の盾騎士団の者であるイオンとアニスは知っていても、流石のヴァンもパッと見ただけではジェイドの事もの事も解らないらしい。

もっとも解っていて自己紹介を促したのかもしれないと思いつつも、ジェイドは殊更にっこりと笑顔を浮かべて。

「マルクト帝国軍・第三師団師団長、ジェイド=カーティス大佐です」

「同じく、マルクト帝国軍、第三師団所属、中佐です」

ヴァンの問い掛けに差しさわりのない笑顔を浮かべて自己紹介をしたジェイドに習い、もまた自己紹介を続ける。

そうして2人もヴァンの丁寧な自己紹介を受けた後、先に宿屋に向かうヴァンの背中を見送って・・・―――完全にヴァンの姿が見えなくなった頃、ジェイドが静かに口を開いた。

。―――ヴァン謡将とお知り合いですか?」

どうやらジェイドも、ヴァンの不自然な様子を目にしていたらしい。―――やはり見間違いではなかったのかと思いつつ、視線を宿屋へと向けたまま掛けられたジェイドの問いに、はフルフルと小さく首を横に振る。

「知らない、会った事ない」

「ですが、あちらは貴女に何か感じていたようですが・・・」

しかしそう言われても、にはまったく身に覚えがない。

もしかするとアッシュ同様、ダアトで会った事があるのかもしれないが・・・―――それでも会っているのなら、確かに記憶に残っているはずだ。

少なくともは、今まで一度会った人間の顔を忘れた事はない。

「解らない。見覚えがない」

やはりそう言って首を振るを横目に、ジェイドは少しだけ考え込んだ後「そうですか」と簡単な返事を返して小さくため息を吐き出す。

が知らないというのならば、きっと本当に知らないのだろう。

けれど間違いなく、ヴァンのあの瞬間の眼差しには何か特別な意味があったはずだ。

に覚えがないというのなら、可能性としてあげるとすれば、それは・・・。

そこまで考えて、ジェイドは埒のない考えを振り払うように小さく首を振る。―――不確かな事を考え込んでいても何の意味もないと解っていたからだ。

それよりも考えなければならない事は他にもある。

たとえば・・・今もまだ敵意を消し去る事が出来ずにいる、あの大人びた少女の事とか。

「・・・ジェイド」

ともかく旅券もなく検問所を超えられない以上、ヴァンの話を聞くしかないと結論を下したジェイドに、の小さく呼ぶ声が届く。

どうしたのかと視線を向ければ、は今もまだ宿屋をじっと見つめたまま。

「私、あの人の事知らない」

「それは先ほど聞きましたよ」

「でも・・・」

いつもはっきりと物を言うにしては珍しく濁された言葉に、ジェイドの眉が僅かに上がる。

「・・・でも?」

静かな促しに、かつてのようにジェイドの軍服の裾を握り締めて・・・―――そうして眉間に皴を寄せたまま、は躊躇いがちに口を開いた。

「あの人・・・なんか変な感じがする。優しそうなのに、そうじゃない感じ。なんか・・・」

上手く説明できないのだろう。

言い淀むを見下ろして、ジェイドも改めて宿屋へと視線を戻すと、困ったように僅かに笑みを浮かべて。

「・・・同感ですよ」

ため息混じりにそう吐き出して、先ほど会ったばかりのヴァンの顔を思い出す。

どうにも一筋縄ではいかない相手だろうと思いながら。

極秘任務を最優先しなければならない今、これ以上厄介事に巻き込まれなければいいですけどねと心の中で独りごちて、葛藤を続ける少女とその少女を責める少年の説得に向かうべく、ジェイドは今日何度目かのため息と共に踵を返した。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

思いがけなく、アッシュがえらい扱いになってますが。

ストーリーを重視しようとすると、どうしても恋愛色が薄くなってしまいます。

とりあえず、この辺りはあまりお話としても面白味がないので、さくさく行きたいものですが・・・。

しかしそんな思いとは裏腹に、実は一度保存の際にエラーが出てしまい、また一から書き直しを余儀なくされたといういわく付の話だったり。

  作成日 2007.6.7

更新日 2007.10.28

 

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