が正式な手続きを経て、マルクト軍基地本部に出入りするようになってから、半年近くの時が流れていた。

その間、彼女の譜術士としての素質を見抜いたゼーゼマン参謀総長の指導の元、一から譜術を学んだり、武器を扱った武術の稽古など忙しい日々を送っている。

譜術に関して言えば、カーティス家のジェイドの私室にあった大量の譜術に関する本をが読んでいたので知識の部分では基礎が出来ており、訓練については順調に進んでいるようだ。

武術の方も元々運動神経が良かったのか、なかなかの成績を修めている。

ジェイドの研究室にも通うようになり、初めは研究内容など理解していないだろうと思われたは、しかし読んでいたバルフォア博士の著書の内容をしっかりと理解していたらしく、ジェイドの研究にも関わるようになって来た。

幼い子供にしてはやけに賢く、他の分野はともかくフォミクリーの研究に関しては意外と使えると、ジェイドは彼女にも研究に参加させた。

全てが順調に進んでいた。

ジェイドはそう思っていた。

彼の人が、あんな事を言い出すまでは。

 

皇太子殿下の巧妙な罠

 

に会わせろ。これは皇太子命令だ、いいな?」

ジェイドの執務室に姿を見せるなりそう言い放ったピオニーに、ジェイドは呆れた眼差しを返した。

そんな真剣な表情で言う台詞かと突っ込みたかったが、余計に厄介事を引き寄せるだけだと賢明なジェイドは悟る。

ピオニーがこんな顔をする時は、大抵ろくでもない事が多いのだ。―――そうでなくとも、彼は確信犯で厄介事を引き起こす事が好きだというのに。

ちなみにピオニー直々に指名を受けたは、現在ゼーゼマンのところで譜術の勉強中である。

おそらくはそちらに行って、勉強の邪魔になるからとゼーゼマンに遠回しに追い返されたのだろう。

この国の軍人は皆ピオニーに敬愛を示しているが、扱いに関しては軍人としてあまり褒められたものではないかもしれない。

それこそピオニー自身がそれに頓着しないので、大した問題には成りはしないのだけれど。

「一体なんですか、突然。会いたいのなら勝手に会えば良いでしょうに・・・」

「それが出来ないから、こうやってお前に頼んでるんだろ?」

「・・・その態度のどこが頼んでいるのか、甚だ疑問ですが」

「んな事はどうだって良いんだよ」

あっさりとそう言い捨てられ、ジェイドはハイハイと小馬鹿にしたように笑む。

ピオニーがそう言い出す気持ちも、解らないでもなかった。

今日のように何度も何度もに会うべく足を運んでいるというのに、まだ一度も会えていないのだから。

が譜術の勉強や武術の稽古を始めた事により、更にそれは酷くなった。

ジェイドとて、が勉強を始める前まではほぼ一日一緒にいる事も少なくなかったが、今では半日一緒にいれば良い方で、酷い時など家から軍本部に向かう時と帰る時ぐらいしか顔を合わさない。

その事には寂しそうな顔を見せたりもするが、自分の勉強がいつかジェイドの役に立つかもしれないと考え、何とか我慢しているようだ。

子供にでも出来る事だというのに・・・と、ジェイドはため息を漏らす。

ピオニーにも少しは見習って欲しいものだと密かに思う。―――勿論声に出すような愚かな真似はしない。

以上の事を踏まえて、そろそろピオニーがそんな事を言い出すのではないかとジェイドは予測していた。

だがいくら予測していたとはいえ、いざそれに巻き込まれるとなると歓迎は出来ないが。

そして、だけをピオニーに会いに行かせるなどという選択肢をジェイドが選ばない限り、巻き込まれてしまうのも仕方がない事なのかもしれない。

「解ったな?ちょうど明日は俺も時間が空いている。明日、ちゃ〜んとを連れて来いよ」

言いたいだけ言って、ピオニーは満足げに執務室を後にする。

嵐の去った室内で、ジェイドは1人。

「空いているのではなく、空けた・・・の間違いでしょうに」

とは言っても、以前自分も同じような言い回しを屋敷のメイド頭に使った事を思い出し、なんともいえない複雑な心境になる。

「明日は確か、武術の稽古がありましたか」

誰に言うでもなくポツリと呟いて、ジェイドは椅子から立ち上がった。

ノルドハイム将軍に、明日のの稽古をキャンセルしておかなければならない。

何故自分がこんなマネージャーのような事をしなければならないのかと、ほんの少しの理不尽さを感じつつ、しかしそれをに任せる訳にも行かず、保護者としてジェイドは仕方がないとまたもやため息を吐き出した。

 

 

翌日、重い足を引きずるようにして、ジェイドはを伴いピオニーの私室に向かっていた。

「今日は、稽古しないの?」

隣を歩くが、不思議そうに首を傾げる。

それも当然だろう。―――本来ならば、今日はノルドハイム将軍の元、武術の稽古をする予定だったのだから。

それが急に稽古には行かなくても良いと言われ、その上こうして連れ出されれば、疑問を抱かない筈もない。

迷子にならないようにとジェイドの軍服の裾を握っていたは、真っ直ぐ前を見据えるジェイドの気を引くように微かにそれを引っ張った。

「・・・今日の稽古は中止です」

「どうして?」

無遠慮に見上げるの瞳に、ジェイドは微かに頬を引きつらせながらも微笑む。

「少し・・・そうですね。厄介な用事が入ってしまったんですよ」

「厄介な用事」

「そうです」

「私も行くの?」

「・・・というよりも、寧ろ貴女が主役ですよ」

「・・・?」

ジェイドの言葉に、はまたもや首を傾げる。

ちゃんとした説明を受けていないのだから、理解できないのも仕方がない。

元々マルクトの軍人ではないが、軍関係の用事で呼ばれる事自体有り得ないのだ。

そして現在は狭く深く人間関係を築いているにとって、わざわざ稽古を休んでまで自分を呼び出す人物に心当たりはない。

ジェイドとしてもちゃんと説明してやれば疑問が解消する事は解っていても、なかなかに説明しづらい問題でもあった。

どうせ説明しても説明しなくとも、ピオニーの元へ行かなければならない事に変わりはないのだ。―――ならば余計な手間を取る必要もない。

「ジェイドも一緒?」

「ええ、そうですよ。貴女1人で行かせる等、猛獣の檻の中に兎を放り込むようなものですからね」

酷い言われ様である。

しかしは一向に気にしていないのか、ほんの少しだけ頬を緩めて。

「ジェイドと一緒、久しぶり」

そうポツリと呟く。

その言葉に、確かにそうだと思い出したジェイドは、隣を歩く小さな存在へと手を伸ばし、小さな頭を軽く叩くように撫でた。

確かには常に無表情だが、全く感情がないわけではないのだ。

解り辛くはあるが、こうして2年近くも一緒にいれば、少しくらいは感情を読み取れるようにもなってくる。

言葉通り喜んでいるだろうを見下ろし、ジェイドもまた柔らかい笑みを浮かべた。

もしジェイドをよく知る人物が見れば、思わず目を疑うような光景だ。

そんな他愛ない会話を交わしつつ、ジェイドとは軍本部を出て橋を隔てた先に立つ宮殿へと足を向ける。

軍本部にはよく出入りするだが、実を言えば宮殿にはあまり足を踏み入れた事がない。

たまに資料室へ調べ物をしに行く時か、誰かに頼まれて資料を取りに行くぐらい。

しかし譜術などに関する資料はジェイドの執務室や屋敷へと帰れば膨大な著書があり、また軍本部にある資料室の内容も充実している為、宮殿の資料室を利用する事は滅多にない。

何をどうしたのかはには解らないが、どこへでも大抵の場所へは足を踏み入れる事が出来る彼女が、それでも滅多に入った事のない場所だった。

そのまま宮殿へと入り、警備する兵士たちに挨拶をされながらもその足は止まる事無く。

暫く歩き続けた末、漸くジェイドが足を止めたのは、立派な細工の施された扉の前だった。

「良いですか、。何が起きても対応できるよう、身構えておいてください」

「怪物でも出るの?」

「・・・まぁ、ある意味似たようなものですか」

自国の皇太子に対する言葉ではないが、それを突っ込む者はこの場にはいなかった。

ため息混じりに呟いたジェイドの言葉を真に受けて、は至極真面目な表情でコクリと頷く。

それを確認したジェイドは、もう一度ため息を零しつつ、その扉をノックした。

「おう、入って良いぞ」

扉の向こうから聞こえて来たのは、普通の男性の声。

どんな怪物が扉の向こうにいるのだろうと思っていたは、軽く目を瞬かせる。

そうして了承の声と共に開かれた扉の先にいたのは、悠然と微笑む男性の姿。

「待ってたぜ、ジェイド・・・それから、

ニヤリと口角を上げた男性を見詰め、は困ったように隣に立つジェイドに視線を移す。

どうやら相手の男性は、の事を知っているようだ。

しかしにはどうしても、その男性が誰なのか解らない。

会った事はない筈だ。―――確かに方向音痴ではあるが、記憶力が悪いわけではないのだから、自分の人間関係を考えても一度会えば忘れる事はないだろう。

「お〜。初めて見た時から綺麗な顔してると思ってたが、まさかこんな風に成長するとはな。・・・これは本当に将来が楽しみだなぁ、ジェイド」

「・・・あなた、誰?」

どうしてもその男性に心当たりがなかったは、心なしかジェイドの後ろに隠れつつそう尋ねる。

どちらかといえば人見知りはあまりしない方なのだけれど・・・―――もしかすると、部屋に入る前のジェイドの脅しのような言葉に、思うところがあったのかもしれない。

「おいおい、そりゃねーだろう。俺はお前の事、ちゃ〜んと知ってるぜ」

「・・・ごめんなさい。でも私、あなたの事知らない」

無表情でジェイドの影から自分を見詰めるを眺めて、ピオニーは満足げに口角を上げる。

知らないと言われているのにも関わらず、全くショックを受けている様子はない。

。自己紹介を・・・」

「・・・。初めまして」

ジェイドに促され、簡潔な言葉で自分の名と挨拶を告げる。

そんなに、ピオニーは意地悪な笑みを向けた。

「だから、初めましてじゃないって言ってるだろ?」

「・・・じゃあ、久しぶり」

「じゃあって。くっ・・・はっはっは!」

ピオニーの言い分に少しだけ訝しげな表情を浮かべつつも、はそう挨拶をしなおす。―――警戒しているにも関わらず、彼女の大きな瞳が自分を真っ直ぐ見据えている事に、の好奇心の強さを思い、ピオニーは溜まらずに噴出した。

目の前で腹を抱えて笑うピオニーを見て、は不思議そうに首を傾げる。

「彼女をからかうのはそれくらいにしておいてください。会った事があると言っても、眠っている彼女の顔を見た・・・というだけでしょう?」

訳の解らない状況に疑問符を浮かべているを見かねて、ジェイドが漸く助け舟を出した。

確かにピオニーがを見たのは、彼女がジェイドに保護されて仮眠室の住人となっていたあの時だ。―――眠っているに、ピオニーの記憶がないのも当然だ。

「悪い悪い。どういう反応するかと思ってな」

「趣味が悪すぎますよ」

「悪かったって。―――それじゃ、改めて。初めまして、。俺はピオニー。この国の皇太子だ」

漸く笑みを収めて穏やかな表情を浮かべたピオニーは、改めてと向かい合う。

「・・・皇太子」

「そうだ。まぁ、俺の事はピオニーって気楽に呼んでくれ。丁寧な言葉も必要ない。お前はそういうの、苦手そうだからな」

「そうか」

気楽な口調でそう言うピオニーに、は素直に頷いた。

まだ幼いからなのか、それともそれが彼女の本質なのか。―――素直なは、言われた事に疑いを持たない。

それは自分が信用した相手に限定されるのだけれど。

皇太子、という言葉の意味を、が理解していないわけがない。

けれどジェイドととても仲が良さそうなピオニーを見ていると、不思議とから警戒心が薄れていくのが解る。

相手がとても偉い人物なのだという事を理解しても、その本人がそう言うのだから構わないのだろうとは判断した。―――ピオニーの言う通り、敬語を使うのがまだ得意ではないという理由もある。

「・・・これで満足ですか、殿下。でしたら我々は仕事に戻らせていただきますが・・・」

「おう、お前は帰ってもいいぞ。俺はがいれば十分だからな」

用は済んだと言わんばかりに戻ろうとするジェイドに向かい、ピオニーはあっさりとそういい捨てる。

そういえばジェイドが帰れない事を十分に理解しているのだ。

「ご冗談を。も一緒に連れて帰りますよ」

「何言ってんだ。別にには仕事なんてねーんだから、構わんだろう」

「貴方とを2人にするなんて、そんな恐ろしい事出来ません」

「そうだ、。実はお前にとっておきのプレゼントを用意してあるんだ」

サラリとジェイドの言葉を流して、ピオニーは何事もなかったかのように話を進める。

無視された形となったジェイドは大して怒るでもなく、これもいつもの事だと諦めたように首を横に振った。

「・・・プレゼント?」

「そうだ。きっとお前も気に入るぞ」

そう満足げに笑い、メイドに命じて何かを運び込ませる。

それは大きな箱だった。

大人の人間が楽々入れるような大きな箱が、ピオニーの広い部屋の中で存在を主張している。

「・・・なんですか、これは」

「だからプレゼントだって言ってるだろ?」

何言ってるんだと馬鹿にしたような視線を受けて、ジェイドのこめかみがピクリと痙攣する。―――そういう事を聞いているのではないと思いつつも、何とかそれを堪えた。

「さあ、。開けてみろ」

「・・・とてつもなく嫌な予感がするのですが・・・」

「ジェイド、大丈夫?」

「残念ながら。今すぐこの場から去りたい気分ですよ」

勿論それは叶えられないのだろうが・・・。

少し様子が可笑しいジェイドを心配しつつも、はピオニーに急かされ、その大きな箱に手をかけた。

よもや中から魔物が飛び出してくるなどという事はないだろうと思いつつ、ジェイドの言っていた通り、いつ何が起きても対応できるよう身構えながらゆっくりと箱を開ける。

「・・・・・・?」

しかし当然だが、中から何かが飛び出してくるような気配はない。

では中には一体何が入っているのだろうかと恐る恐る箱を覗き込んだは、そこにびっしりと詰められている物に思わず目を丸くした。

余すところなく詰め込まれているのは、色とりどりの布。

いや、布ではなく、それは大量の服だった。

「・・・服」

「どうだ?それは全て俺がの為だけに作らせた一点物だ」

自慢気に笑むピオニーは、じっと箱の中身を凝視するに誇らしげに告げる。

それを傍で見ていたジェイドは、呆れたような視線を余す事無くピオニーへと送って。

「また国家予算でこんなものを作ったのですか?」

「何言ってんだ。ちゃ〜んと議会の承認は得たぞ?」

返って来た台詞に、思わず額を押さえる。

何を考えているんだ、議会は。

こんな事の為に国民から得た税金を使う等と・・・と思いつつも、おそらくは幼少時代ピオニーを軟禁していた事もあり、大目に見ているのだろうと判断する。

勿論、彼自身の王族としての資質を認められているからだという理由もあるだろうが。

「ほら、。黙って見てないで、とりあえず早く着替えてみろって」

「・・・着替えるの?」

「おう。折角作ったんだ。着てるとこだって見たいだろう?」

「そうなのか?」

「そういうもんだ。ってことで、さっさと着替えて来い」

ピオニーに強引に促され、呼ばれたメイドと共に数枚の服を持って部屋を追い出された

戸惑いつつもそれに従うを見送って、ジェイドは疲れを吐き出すように息を吐く。

「全く・・・貴方はこんな事の為に彼女を呼んだのですか?」

「なんだよ、ジェイド。こんな事って言うが、服装は大切な事だろう?ちなみにが今着てるあの服、どうやって手に入れたんだ?」

「どう、とは?カーティス家のメイドが購入したものだと思いますが・・・」

「あ〜あ。駄目だな、お前」

「・・・は?」

あからさまにため息を吐いたピオニーに、ジェイドは間の抜けた声を上げる。

フルフルと首を横に振り肩を落とすと、ピオニーは哀れむような視線をジェイドに送った。

「あれだけいい素材が傍にいるってのに、何やってんだお前は。あんなありきたりな服装じゃ、の魅力が半減しちまうだろうが」

「・・・はあ」

「いいか?は女の子なんだぞ?一般常識や譜術を教えるのも結構だが、ちゃんと年頃の女の子らしい事も教えてやれよ」

ピオニーの口から語られる言葉に、ジェイドはふむと小さく唸る。

確かにに世情や一般常識などは教えているが、ファッションについて何かを言った事はない。

勿論生活していく為に必要な事柄を優先的に教えて来た結果なのだけれど・・・―――も女の子なのだから、確かにピオニーの言う事にも一理ある・・・かもしれない。

様のお着替えが終わりました」

思わぬピオニーの反論に丸め込まれそうになっていたジェイドの耳に、メイドの静かな声が届く。

それに引かれるように振り返ったジェイドの瞳に映ったのは、思わず気も遠くなりそうな光景だった。

「お〜!よく似合ってるぞ、!!」

「そうか」

手放しで賞賛するピオニーに対し、褒められている筈のは無表情のまま。

着せられた服を見下ろし、納得するように頷く。

その有り得ない光景に・・・―――子供仕様で作られた機能性など全くないだろうメイド服姿のを見詰め、ジェイドは思わず固まってしまった。

「でもこれ、ふりふりしてて動き辛い」

「それが良いんだろうが。うんうん、お前は将来いい女になるぞ〜」

明らかに趣旨が違っているのではないかという突っ込みも、この際どうでも良い。

瞬時に硬直状態から抜け出したジェイドは、未だ部屋を占拠する巨大な箱を覗き込んで。

そこに詰められてある数多の特殊な服の数々に、耐え切れないとばかりに額を押さえる。

まともな服が全くないわけではないが、圧倒的にまともな服の方が少ないのも確か。

「ああ、その服は後でちゃんとお前の屋敷に届けといてやるから」

「結構です。必要ありません」

「んな事言うなよ、ジェイド。きっと似合うぜ〜。なぁ、

「そうか」

のりのりのピオニーと、おそらくは状況が理解できていない

そんな2人を他所に、ジェイドは現実逃避をするかの如く遠い目をして窓の外を見詰めていた。

 

 

「大丈夫、ジェイド?」

何とかピオニーの魔の手から逃れ、漸く執務室に戻って来たジェイドは、普段の彼らしからぬ様子でぐったりと椅子の背もたれに身体を預ける。

屋敷に帰れば、またあの服の数々を目にしなくてはならないのだろうと思うと、底知れず疲労が溢れてくる気がした。

への返事もそこそこにチラリと様子を窺えば、未だにあのメイド服のままのがちょこんとソファーに行儀良く腰掛けている。

「・・・、その服」

「可笑しい、ジェイド?」

「いえ、可笑しいと言うか何と言うか・・・」

小さく首を傾げてその大きな瞳を向けるから視線を逸らし、ジェイドはもう何度目か解らないため息を吐き出す。

毎回の事とはいえ、どうして彼はこんなにも厄介事を引き起こすのか。

考えても答えなど出る筈もないのだけれど、ジェイドは漠然とそんな事を思う。

ピオニーの趣味など、いい迷惑だ。

そうも、思うのだけれど・・・。

意外と似合っている。

そう思った事は、きっと永遠に彼の心の中に隠蔽され続けるのだろうが。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

どこらへんが巧妙な罠なのか。

タイトルと内容が一致していない事は珍しい事じゃありません。(威張って言うな)

ちなみに、ピオニーはいつ頃皇帝陛下になったのでしょうか?

いつまでも皇太子扱いは正直きついかと・・・(やっぱり陛下は陛下だし)

そして譜術の師匠にゼーゼマンと、武術の師匠にノルドハイム将軍をお迎えして。

なんて豪華な顔ぶれなのかと、思わず笑ってしまいました。(書いてるのお前だ)

ジェイドがどんどんジェイドから掛け離れていく・・・(汗)

作成日 2006.2.14

更新日 2008.2.2

 

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