「彼らの手助けをしてあげて欲しいのです」

北の洞窟から湖を挟んだ向こう側に見える古びた城を眺めて、サロメは言った。

半壊した船が突き刺さった見るも珍しいその城は今、ゼクセン評議会の思惑に巻き込まれ危機に瀕しているという。

ゼクセン騎士団が休戦協定を前にリザードクランに攻め込んだという身に覚えのない事実と、カラヤの村での暴走が誰かに仕組まれたものだと考えるサロメは、それにハルモニアが関わっているのだと推論した。―――そして。

「私はグラスランドと協力して、ハルモニアに対抗する体制を整えたいのです。このままではいずれ、ゼクセンもグラスランドも・・・ハルモニアに制圧されてしまうでしょう」

その為に、あの城を助けたいと。

あの城に何かあるわけではない。―――ただ、あの城を攻めている議員が、ハルモニア寄りの勢力であるからという理由だけだ。

それをハルモニアの傭兵であるゲドたちに頼むのはお門違いもいい所だとは思ったが、それでもゲドは何も言わずにそれを引き受けた。

再び浮上したゲドに対する謎。

リザードにカラヤにそしてゼクセン騎士団。―――あまりの顔の広さを感心するジョーカーに、ゲドはあっさりと軽く流した。

「・・・・・・長生きしているからな」

 

められた真実

 

ゼクセン騎士団の参謀・サロメに依頼されて、一行はビュッデヒュッケ城の反乱を助けるべく北に向かう。

洞窟の中とは違う見晴らしのいい草原を歩く。―――そんな中、時々視界に入るゼクセン騎士の姿に、は小さく首を傾げた。

サロメの話では、まだ本格的な戦いは起きていないということだったのだが、こうもゼクセン騎士たちの姿を見かけるとなると、もう戦いは始まっているとみた方が妥当だろう。

「ねぇ、もし戦いが始まってたとしてよ?」

足早に歩くゲドに向かい、あくまでも仮定として・・・と念を押して話し掛けると、ゲドは少しだけに歩調を合わせるように隣に並んだ。

「騎士団の戦い方って具体的には分からないけど・・・、あの城って結構孤立してるじゃない?騎士団は数に物を言わせて囲みに来ると思うのよ」

デュナン統一戦争時、まだが同盟軍に参加する前の事だが、同じような事があったのを思い出す。

ミューズを落とされ、サウスウィンドウも落とされ、成すすべもなく残った兵力で後の彼らの本拠地になった廃城に立てこもった同盟軍を、ハイランド軍は数に物を言わせて包囲した。

その時は優秀な軍師であるシュウの、湖を迂回して敵の背後から攻撃を仕掛けるという斬新な策で事を凌いだが、今回ばかりはそういうわけにもいかないだろう。

そういう策を練れる人材がいるとも思えないし、何よりそれをするには船が必要だ。

それ以前に、あの城に戦える兵がいるとは思えない。

「・・・・・・ああ」

「もしよ?もし、城の周りを包囲されてたとして・・・私たちどうやって中に入るの?」

こっそりと話を盗み聞きしていたエースが、しまった!とでも言いた気に頭を抑える。

騎士たちがどれほどの兵力でそれをするのかは分からないが、強行突破というわけにはいかないだろう。

ハルモニア派のゼクセン評議会議員の邪魔をしたとバレれば、始末書だけでは済まない。

そもそも、今回のゼクセン評議会議員の行動がハルモニア本国から命じられた『真の紋章狩り』に関する事ならば、ゲドたちのやっている事は反逆行為も同様で。

真の紋章を追いかけている彼らが、真の紋章狩りの邪魔をする。―――あまりに矛盾したその行動の裏に隠されているものはなんなのか、とは思う。

もし戦いが始まっていたとすれば、これからどうするのか?

目でそれを訴える一行に、しかしゲドは表情を変えずに一言。

「・・・その時になれば考えるさ」

案外、行き当たりばったりな性格をしているのかもしれないとは思った。

 

 

ともかくも、一刻も早くビュッデヒュッケ城に行こうと再び歩みを速めた一行。

しかしふとの目に思わぬモノが映り、思わず足を止めた。

「・・・どうかしたか?」

不思議そうな表情を浮かべながら、同じように立ち止まったエースに、はいつもとは違う焦りを含んだ表情で言った。

「先に行ってて!すぐに追いつくから!!」

「お、おい!ちょっと待て、どうしたんだよ!?」

エースの制止の声も聞かず、は今来た道を逆走し始めた。

少しづつ遠くなるエースの声を気にも止めず、はひたすら草原を駆け抜ける。

しばらく走った末に小規模な森を見つけ、その場所とあるモノとの距離を測り、ここでいいと判断を下してその内の一本の木に上り始めた。

生い茂る葉の隙間から、辺りの様子を窺う。―――と、少しの間を置いて、それはすぐ近くへとやってきた。

「ちょ、ちょっと待って!もう駄目・・・」

「何やってんだよ、アップルさん!早く!あいつらが追いついてくるって!!」

女性の声と、まだ少し幼さを含んだ少年の声。―――そしてその後に続く、男の怒声。

2人組を追ってくる男たちの姿を認めて、は左手に宿してある旋風の紋章に意識を集中させ呪文を唱え始めた。

「待てっ!!」

「きゃっ!!」

男の声と女性の悲鳴が聞こえた瞬間、唱えていた呪文を発動させる。―――鋭い風の刃が女性の脇をすり抜けて男へと直撃した。

「うわぁ!!」

短い悲鳴を上げて吹き飛ばされる男。―――もう1人いた男も同じように紋章で吹き飛ばし昏倒させた。

「・・・・・・何?」

突然の出来事に頭がついてこない女性を木の上から眺めて、安堵のため息を漏らす。

そして意識を失い倒れた男へ目を向けた。―――男の着ている鎧を見て、彼らがゼクセン騎士団だということを確認する。

何故、彼女たちがゼクセン騎士団に追われているのだろうか?

そもそも何故彼女たちがこの地にいるのだろう?

様々な疑問が浮かび上がる中、それでも女性たちがその場を去るのを静かに待った。

待った・・・のだけれど。

また追っ手がかかるかもしれないと、その場を急ぎ離れようとする少年に反して、女性は頑なにその場を動こうとしなかった。―――何かを探すように辺りをキョロキョロと見回して・・・そして焦れたように声を張り上げる。

さん、いるんでしょう!?今、私たちを助けてくれたのはさんでしょう!?どうして隠れているんですか?出てきてください!!」

必死な表情でそう叫ぶ女性・・・―――アップルに、は驚きに目を見開いた。

どうしてアップルには、自分がここにいるということが分かったのだろうか?

普通は考えつかない答えだ。―――なぜなら本当ならは今、閉ざされた森の奥で暮らしているハズなのだから。

それでもそう叫ぶアップルの声に、言葉に迷いはない。

本当に先ほど自分を助けたのがだと、疑いもなく思っているのだ。

様々な疑問が浮かび上がってくる中、しかしアップルがこの場から動く様子もなく、このままここでやり過ごす事など出来ないだろうとは思い、ため息と共に返事を搾り出した。

「・・・ここよ」

声と共に、木の上から飛び降りる。―――アップルのすぐ傍で着地したと同時に、思いっきり抱きつかれたが、何とか踏みとどまり倒れずに済んだ。

さん、お久しぶりです!!」

「あはは、見つかっちゃったか」

軽く笑みを零し、久方ぶりに会う友人の顔を見返した。

昔よりもいくつか歳を重ねた顔。―――出会った頃は自分よりも年下でずいぶんと幼い顔をしていたというのに、今ではもうその面影も微かに残るだけ。

「元気そうで何よりだよ、アップル」

少しだけ感じた寂しさを押し隠し、はやんわりと笑みを浮かべた。

 

 

「どうして、私の前にすんなり姿を現してくれなかったんですか?」

一通り再会の挨拶を済ませた後、少しだけ不機嫌そうにアップルが言った。

「もし私が気付かなければ、そのまま素通りするつもりだったんでしょう?」

まさにその通りだったから、も何も言えずにただ曖昧な笑みを返すのみ。

どうして姿を隠したのか?―――それは至極簡単で、つまりは会えば会ったで『どうしてここにいるのか?』の説明を求められると思ったからだ。

がここにいる理由を一から説明するには時間がない。―――少しでも早く、ゲドたちに追いつかなくてはいけないのだ。

それに・・・にはビクトールたちに意図的に話していない事がある。

ビクトールたちは気付いているのか、それとも気付いていないのか。―――どちらにせよ、彼らは何も聞いてこない。

もしかするとあまり深読みしていないのかもしれない、と半ばそうであればいいと希望を込めてそう思う。

しかしアップルは立派な軍師であり、彼女には彼女なりの情報網という物があるだろう。

そして少なからず、彼女はハルモニアに関わっている。―――どこからどのような情報がアップルの元に流れているのか分からない以上、余計な詮索は回避したかった。

なおも食い下がってくるアップルに、当り障りのない程度の説明をすると、渋々ながらも「まぁ、無理には聞きませんけど・・・」と一応は納得してくれた。

「それで?今さらだけど、この少年は?」

話を逸らす意味もあったが、純粋に気になりは赤い髪の少年に目を向けた。

するとアップルは少しだけ表情を明るくさせて。

「この子が昔話したシーザーです」

「ああ、彼の孫ね。確か・・・軍師なんだっけ?」

あっさりと自分の素性を見破るに、シーザーは驚いたように口をぽっかりと開いた。

「シーザー。こちらはさん。ほら、前に話したでしょう?貴方が留学していたトラン共和国の英雄よ」

こちらもあっさりとバラされ、は誤魔化すように笑みを浮かべた。

一応、彼女が『トランの英雄』であるということは秘密なのだ、一応は。

「・・・へぇ、この人が?ふ〜ん」

意味ありげに眺められ、かなり居心地が悪い。―――見世物じゃないと言いそうになるのをなんとか踏み止まった。

「それより、私の方も聞きたい事があるんだけど・・・?」

今までの話を強引に終了させて、は未だ興味深そうに自分を眺めるシーザーから逃れるようにアップルに視線を向けた。

「なんで、さっきの攻撃が私だってわかったの?」

そう、これはぜひとも聞いておかなければならない。

が先ほど使ったのは、旋風の紋章。―――風の紋章の上位紋章で、それなりに珍しい物ではあるが、決して手に入らない物ではない。

これがソウル・イーターでの攻撃ともなれば見破られて当然だが、旋風の紋章の攻撃で見破られるのはどうにも納得がいかない。

するとアップルは、たった今思い出した!とばかりに手をポンと叩く。

「そう、実は私たちはさっきまでビュッデヒュッケ城にいたんですけどね。そこでビクトールさんに会ったんですよ!!」

「ビクトールに!?」

思わぬ時に思わぬ名前が飛び出してきて、は思わず声を上げた。

情報を持ってきてくれているナギも仲間の消息までは分からないと報告してくるのに、案外あっさりと消息が判明したものだ。

アップルから先ほどあったビュッデヒュッケ城での戦いの一部始終を聞き、彼もまた厄介な事に巻き込まれているのだと、予想したとはいえ脱力する。

「ビクトールさんは今、カラヤ族の少年と一緒に旅をしていて・・・ええと、確かヒューゴくんとか・・・」

「ヒューゴ!?ヒューゴって、カラヤ族のヒューゴ!?」

「え、ええ・・・」

「ええと、15・6歳くらいの?」

「ええ、そうですけど・・・。知ってるんですか?」

逆に尋ね返され、はただコクリと頷いた。

ヒューゴという名前の15・6歳のカラヤ族。―――おそらくはその少年が、ルシアの息子なのだろう。

予想外の人物同士が旅を一緒しているという事実に、驚きを隠せない。

その上、ビクトールと一緒にいると思っていたグレミオとフリックの姿もなかったことに、さらに驚いた。―――自分とも、ビクトールとも一緒にいないとなれば、彼らは今どうしているのだろうか?

「あの・・・さん。ビクトールさん、さんのこと捜していましたよ?」

「ああ、うん。私だって捜してるんだけどね」

「ビクトールさん。大空洞に行くと言っていましたけど・・・」

遠慮がちに告げられた言葉に、は曖昧に返事を返した。

ようやく居場所がわかった、はぐれた仲間。

しかしは今、どうしてもゲドたちと離れるわけにはいかなかった。―――謎に包まれたゲドのことを、もっと知りたいと思ったからだ。

それが何かしらこの一件に関わっているのだと、確証はないが確信はしていた。

「まぁ、ビクトールとはいずれまた会えるよ。何と言ってもびっくりするくらい腐れ縁だし・・・」

まるで自分に言い聞かせるように呟きながら立ち上がると、服についた草を払い大きく伸びをした。

「それじゃあ、私はもう行くわね。少し急いでるから、ゆっくりと話は出来なかったけど」

「はい。でも・・・また近いうちに会えるような気がします」

いつもは遠慮がちなアップルが、しかしはっきりとそう言いきった。

もそれに反論しない。―――自身もそう感じていたから。

今のこの状況で、軍師である2人と再び出会うことがどういう状況での事なのか。―――予想がつくだけに素直には喜べなかったが、それでもはにっこりと笑顔を浮かべる。

「それじゃあ、またね」

再び会えるようにと希望を込めて、はその言葉を投げかけた。

 

 

既に陽も暮れかけた頃、はようやく目的のビュッデヒュッケ城に辿り着く事が出来た。

騎士たちの姿も決して少なくはなかったが、それでも何とか気付かれずに入れたことにホッとしながらも、既に城の中に入っているだろうゲドたちの姿を探すためにキョロキョロと辺りを見回した。

お世辞にも立派・・・とは言えないこの城は、どこもかしこもガタがきていて人の姿もまばらなのが余計に哀愁をそそる。

入り口のすぐ近くに広場のような場所があり、その真中にある噴水からは綺麗な水が噴出されていて、妙にミスマッチに見えた。

土地だけは広いのか、物置のような建物や空き地になっているところも多く、人が集まりそうな素質のある場所ではあるのに・・・と残念に思う。

どことなく懐かしさを感じるそこに、は無意識に笑みを浮かべていた。―――昔彼女が一時期暮らしていた城に、とても雰囲気が似ていると。

「あの〜・・・」

不意に背後から声を掛けられ慌てて振り返ると、そこには鎧を着たまだ幼い少女がいた。

パッと見、鎧と身体のサイズが合っていない。

あれでは身を守るどころか、余計に動きずらいのではないかと場違いにもそんな事を思っていたとき、再び少女が声をかけてきた。

「あの〜、もしかして・・・ここに店を出してくれるつもりで来てくださったんですか?」

「・・・え、店?」

何の事を言われているのかわからないは、申し訳なさそうに自分を見る少女に聞き返すが、少女の方は全くそれを聞いていないようで。

「申し訳ありませんけど、店は出せそうにないんです。トーマス様が・・・あ、トーマス様っていうのはこの城の城主様なんですけど・・・」

なんだか話が長くなりそうだ・・・と思いながらも、真剣な表情で語る少女の話をとりあえず真剣に聞いた。

少女の話によれば、どうやらここは店を募集しているということ。

そしてそれに反対したゼクセン評議会が攻めてきたということ。

そしてこの城の城主であるトーマスが、評議会に解任されるということ。

話を聞いていて、思ったよりも事の進行が早い気がした。

サロメがどんな策を練っているのか、には分からなかったが、それが形となる前にこの状況を何とかできるのだろうか?

そもそもゲドたちが影ながらこの城を助けると言っても、具体的に出来る事など限られているのだ。

たとえば、この城の人間たちがゼクセン評議会に逆らって戦いを始める・・・という状況にでもならない限り、どうしようもない。―――ゲドたちが表立って反論に出ても、それが評議会議員たちに取り合ってもらえるとも思えない。

「だから、本当にごめんなさい」

深く頭を下げる少女に、店を出しにきたわけではないはどう反応していいのか分からなかったが、とりあえず目の前にさらされた少女の頭を優しく撫でた。―――もちろん兜を被っているので、その感触はとても硬いものだったけれど。

驚きに顔を上げた少女に向かい、はやんわりと微笑む。

「謝る必要はないわ。貴女たちがそれを受け入れたのなら、謝る必要なんてない」

「・・・・・・はい」

「でもね。もし貴女がそれにどうしても納得できないなら、自分が思ったように動いてみればいい。ごく稀にだけど、それを見て助けてくれる人だっているのよ?」

そう・・・ごく稀に、手を貸してくれる人間もいる。

今の彼らには、ゼクセン騎士団のサロメや、辺境警備隊一の腕利きだってついているんだから・・・と心の中で思う。

「・・・はい!あたし、がんばってみます!!」

勢い良く頭を下げ、そのまま城の方へと走り去っていく少女の影を見送りながら、あの少女にどうか幸福があるようにとひっそりと祈った。

「・・・っと、こんな事してる場合じゃないか」

ここについた時にはまだ薄明るかったここ一帯も、既に完璧に陽が落ち暗闇に包まれている。―――髪の毛をびっくりするくらいたてまきにした男が、火の灯った松明をあたりに置いて回っているのを横目に、は暗闇にまぎれて城の中に侵入した。

城の中は街の宿屋に比べると薄暗いが、それでも外よりは断然明るい。―――所々灯された松明の火がチラチラと揺れて、人の気配の少ない広間に不気味な影を落としている。

は早速ゲドたちの姿を探して城内を歩き始めた。

おそらくはどこかに身を隠しているのだろう。―――彼らならばどこらへんに身を隠すだろうと思案しつつ、やはりあそこしかないか・・・と確信して酒場に向かった。

サロメから聞いた話だと、ここの城主はまだ幼い少年のようだし、先ほど会った少女同様、この城には成人している人間が限りなく少ないらしい。

成人している人間が少ないのならば、おそらくは酒場もほとんど使われていないだろう。

ゲドたちがそれを見越してそこに身を隠している可能性は、かなり高い。

大体の辺りをつけて、住人に見つからないよう薄暗い廊下を歩きつづけていると、どこからかぼそぼそと話し声が聞こえ、思わずそちらに足を向けた。

近づいていくと、その声がゲドのものだと分かり歩調を速めた。―――もう1つ聞こえる声は、おそらくジョーカーだろうか?

声が聞こえてくる部屋のドアに手をかけ、それをソッと静かにあけた。

中には当然光はなく、窓から差し込む淡い月の光だけ。―――その光に照らされて、ゲドはその衝撃とも言える言葉を呟いた。

「ああ、真の雷の紋章だ・・・」

言葉と共に軽く上げられた右手。―――いつもは手袋に阻まれているその手には、見覚えのない紋章。

何よりもまず最初に、やっぱり・・・という言葉がの頭の中に浮かんできた。

ゲドから感じる不思議な雰囲気。

それはのよく知る人たちから・・・―――たとえばそれは、レックナートだったり、シエラだったり、ヨシュアだったり。

それらはすべて、真の紋章を宿す者たちで。

通常人には感じる事のない、心の中の闇・・・とでも言おうか?

もちろんそれは、にとてある。

つい先ほどアップルを前に感じた、どうしようもない虚無感。

同じ時を生きることさえ出来ない、もどかしい気持ち。

それでも、それが分かっていても・・・それを手放せない諦めと。

ぼんやりとしていたのだろう。

フラリとよろめいたは、とっさに近くにあったテーブルに手をついた。―――その拍子にガタリとテーブルが鳴り、ゲドとジョーカーが慌てたようにの方へ振り返った。

「・・・・・・、か?」

「・・・遅かったな」

まるで何事もなかったかのように話し掛ける2人は・・・―――しかしのその表情を見て、今の話を聞かれてしまったのだということを知り、視線を泳がせる。

彼の・・・仮面の神官将の求めるモノは、確実にこの地に集まり始めている。

ゲドの謎が、の感じた通り・・・―――この一連の事柄に関係を持っていて。

本当に彼を止められるのだろうか?

そんな事を、月の光の中に浮かぶゲドの顔を眺めながら、はぼんやりと思った。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

アップルと再会させてみたり。

かなり展開に無理があるなと、自分でも思いますが。(笑)

勝手にトリニティ(勝手に命名)は、確実にゲームとは掛け離れて行きます。

作成日 2004.3.6

更新日 2010.8.29

 

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