突如、大空洞に攻め込んできたゼクセン騎士団。

その間、密かにリザードクランの長・ゼポンが殺害された。

今起きている事件は一体なんなのか?

何故この時期に、騎士団は大空洞に攻め込んできたのか?

様々な疑問が交差する中・・・―――炎の英雄の情報を求めて、ゲド一行はカラヤを目指す。

 

カラヤの

 

遮るものなど何もない、彼方まで広がる草原。

その向こうにかすかに見える小さな影に、は懐かしさに頬を緩ませた。

グラスランドに住む、戦闘に長けた民族・カラヤ。

今その族長をしているのは美しき女性・ルシアであり、とルシアは友人関係にある。

15年ほど前にお互いが参戦したデュナン統一戦争において2人は敵同士だったのだが、お互いがお互いの実力を認め合い、戦いが終わった後は良い関係を続けていた。

かなり昔にルシアから子供を産んだという連絡があり、その際にカラヤの村に行ったきりの再会になることを思い出して、小さく笑う。

「・・・なんだ?突然笑い出したりして・・・」

「別に、なんでもないよ」

それを目ざとく見ていたエースに怪訝そうな表情を浮かべられつつ、それでもは緩む頬を引き締められずにいた。

ルシアの子供も、もうかなり大きくなっているだろう。

確か名前は・・・・・・そう、ヒューゴと言ったか。

暗い事件が続く中で、久方ぶりの友との再会。

それはの心に、なんともいえない安堵感を与えた。

「もうそろそろだね・・・」

「・・・ああ」

村の影を見つけひたすら歩きつづけて半日。―――クイーンが呟き、ゲドが軽く返事を返した頃、ようやくカラヤの村の前へと辿り着いていた。

カラヤはそれほど広い村ではない。

もちろん狭いわけではないが、どちらかと言うと簡素で建物もこじんまりとした造りになっているものが多い。

少し小高い丘の上にあるその村に入るため、緩やかにウェーブした坂道を登っていく。

ようやく村の中が見える場所まで来た頃、村の出入り口付近に数人のカラヤの戦士が立っていることに気付き足を止めた。

その先頭にいるのは、まだ若い少女・・・―――手に弓を構えていて、その矢は先頭に立つゲドに向けられている。

「止まれ!お前たちは何者だっ!!」

少女の甲高い声が響く。―――それと同時に、少女の後ろに立っていた戦士たちも、自らの武器を構えてゲド一行に向き直った。

「おいおい、嬢ちゃん。いきなりなんだってんだよ・・・」

エースが宥めるように足を一歩踏み出すと、少女の矢がエースの行く手を阻むように彼の足元に突き刺さった。

「うおっ!?」

途端に足を引っ込めて歩みを止めるエース。

それを見ていたは、隣に立つジャックに視線を向けて小声で話し掛けた。

「どうしたんだろうね?」

「・・・・・・」

もちろん返事は返ってこない。―――それでもジャックは視線をの方へと向け、小さく首を傾げて『分からない』と言う意味合いのリアクションは返してくれる。

もそれを予想していたのか、特に何も言わずに再びカラヤの少女に視線を戻した。

そして、どうしたんだろうと、心の中でもう一度繰り返す。

これほどまでに見張りが厳重だということは、何かあったという事だろうか?

もちろん村に災いがないよう、見張りを立てるのはどこも同じだ。

ただ、旅人が村に入れない・・・とまでいくと、その疑問も当然だった。

以前カラヤの村に来た時は、これほど警備は厳重ではなかったのを思い出す。

確かに警備兵に名前を聞かれたりはしたものの、特に何の詮索もされることなく村の中に入れたというのに・・・。

「なんだとっ!!」

1人考えに没頭していたは、少女の怒鳴り声にハッと我に返った。

それと同時にカラヤの戦士たちに取り囲まれ、一斉に剣を突きつけられた。

何がどうなったのかと辺りを見回せば、エースが困ったような笑みを浮かべ、ゲドは小さくため息を零している。

先ほどのやり取りから見るに、どうやらエースが少女を怒らせてしまったようだ。

思わずの口からも、盛大なため息が零れた。

エースはわざとやっているのだろうか?

それとも計算してやっているのか?―――どちらにしても厄介な事に変わりはない。

少女の掛け声で一斉に襲い掛かってきたカラヤの戦士を一瞥し、仕方がないか・・・と腰の剣に手を伸ばしかけたその時、隣にいたジャックに勢いよく腕を引かれて思わず体勢を崩しつつも何とか踏みとどまった。

気がつけば、目の前にはジャックの水色のコート。

自分が庇われていると気がついたのは、ジャックが相手の牽制のために矢を射った後のことだった。

「ジャ、ジャック?」

「・・・・・・」

チラリとかすかに振り返ったジャックの目は、『大丈夫だ』と言っているようで。

今までこんな風に庇われた記憶のないは、それにどう反応していいのか分からずに思わずジャックのコートを握り締めた。

最初に言っておくならば、は人に庇われるほど弱くない。

寧ろこの一行の中で彼女と同等に戦えるとするならば、ゲドくらいのものだろう。

国でも『その人あり』と言われるほどの将軍の娘に生まれ、幼い頃からみっちりと武術を教え込まれてきた。

だからどれ程幼い頃でもモンスターが出れば自ら戦ったし、人に庇われる必要もなかった。

成長していくにつれてはどんどん強くなっていったし、大きな戦いに身をおくようになってからも、庇われるなんてもっての外だった。

それが今、(外見はともかく)自分にとっては若造と言っても過言ではない少年の背中に庇われているのだ。

まぁ、ジャックはがどれほどの実力を持っているか知らないので、それもおかしな事ではないのかもしれないが・・・。

見た目的に言えば、は決して強そうなイメージを持ってはいない。

「やめろ、アイラ!!」

ほとんど初めての経験に少しばかり混乱していたの耳に、強い響きを持つ声が響いた。

その声に、カラヤの少女・・・―――アイラは、構えていた弓を下ろし声の主に視線を向ける。

攻撃がやんだことに、一同はホッと胸を撫で下ろした。

「・・・大丈夫か?」

「え、ああ・・・うん。大丈夫・・・」

突然話し掛けられ、掴んでいたジャックのコートから勢いよく手を離すと、コクコクと何度も頷きながら返事を返す。

心なしか照れくさく、ジャックの顔を正面から見る事ができない。

こんな風にただ守られているのははっきり言って性に合わないし、それならば正面切って戦う方が何倍もいいが・・・―――普通の娘として扱ってもらえた事に、少しだけ嬉しさを感じるのも事実だった。

こんな経験、めったにできないだろうと思うから・・・。

そんな事を考えているうちに話はまとまったのだろう。―――先ほど声をかけてきた青年に促されてようやく村の中に入る事ができた。

青年の名はジンバ。

カラヤの族長であるルシアの片腕として働くほど優秀な戦士で、どうやらゲドと顔見知りのようだ。

昔ここに来た時にあんな人いたかな?とは首を傾げつつも、それほど長く滞在していたわけではないので会ってなくてもおかしくないかと思い直した。

ジンバの話によると、ゼクセンとの休戦協定に村の戦士のほとんどが出ており、その為村の人間たちはいつもよりも警戒を強くしているらしい。

族長であるルシアもここにはいないらしく、彼女との再会を楽しみにしていたはがっくりと肩を落とした。

ルシアの息子であるヒューゴも用事で今は村を空けているらしく、ことごとく期待が外れたとはぼんやりと思う。

同じくルシアに会いにここに来たゲドはというと、ジンバとなにやら話があるらしく、2人でどこかへと行ってしまった。

は、これからどうしようか・・・と話し合っているエース・ジョーカー・クイーンに視線を向けて、そこにジャックの姿がない事に気付き慌てて辺りを見回した。

視界の端に彼の青いコートの裾が映り、目的があったわけではないがは反射的にその後ろ姿を追いかけた。

村を出てすぐ彼に追いつき、どこへ行くのかを尋ねると一言。

「・・・ウサギを狩りに・・・」

という返答が返ってきたので、特にする事のなかったはそれに着いていくことにした。

ジャックは特に気にした様子もなく、それでも後ろを歩くにチラチラと視線を向けながら広い草原をひたすら歩く。

「ジャックってさ、ウサギ狩り好きだよね」

「・・・・・・」

「何でウサギなの?他の動物はあんまり興味ない?」

「・・・・・・」

「・・・・・・君、無口だねぇ」

一向に返ってこない返事に、は苦笑交じりに呟いた。

そういえば・・・と、は昔を思い出す。

そういえば、昔はよくテッドとウサギ狩りをしていたな・・・と。

まだまだ腕が未熟だった頃、彼と2人協力して一匹のウサギを追いかけた。

あの頃はまだ簡単にウサギを捕まえる事なんてできなくて、逃げられた事もしょっちゅう。

それでも楽しかった、あの頃。

今では捕まえようと思えば簡単にウサギを捕まえられるし、野宿にだって困らない。

それは旅をする者としてはとてもありがたいが、それと引き換えにあの時の楽しさも失ってしまったのかもしれない。

そう思うほど、自分は年を取ってしまったのか。

突然黙り込んだに気付き、ジャックは不思議そうに首を傾げた。

どことなく悲しそうな顔をしている事に気付き、声をかけようかと思案し始めたその時。

「ねぇ、釣りでもしない?」

先ほどとは打って変わって、楽しそうに笑顔を浮かべたはそう提案した。

「私、釣りが趣味なんだよね。結構やってみると面白いし・・・。ジャックは釣りやった事ある?」

の突然の質問に、ジャックはユルユルと首を横に振る。

「え〜、やった事ないの?よし、それじゃあ私が教えてあげるから!そういえばこの先に小さい川があったんだよね・・・」

話をどんどんと先に進めて、困惑するジャックを置き去りに歩き始めた

数歩先に進んで、ようやく彼が着いてきていないことに気付いたは、振り返り不思議そうに首を傾げた。

「来ないの?」

「・・・・・・・・・行く」

ポツリと返事を返し、ジャックは急ぎ足での後を追った。

 

 

の言葉通り、カラヤの村の近くの森に、その小さな川はあった。

「さぁてと、まずは道具を揃えないとね・・・」

背負っていたリュックを木の根元に放り出して、は楽しそうな表情を浮かべながら辺りを見回した。

当然のことながら、旅をしているたちは釣り道具なんて持ち歩いてはいない。

キョロキョロと視線をめぐらせ、落ちていた枝を物色し、ちょうどいい長さの棒を2本見つけると嬉々としてそれを手に取った。

それをぼんやりと眺めていたジャックは、傍らに流れる小さな川に視線を向けて小さく首を傾げる。

「・・・はここに来たことがあるのか?」

「どうして?」

「・・・・・・・・・よくここに川があることを知ってたな、と思って」

この小さな澄んだ川は、決してひと目につく場所にあるわけではない。

森の外から見える位置でもなく、わざわざ森の中に入らなければ見つけられないほど奥まったところにあり、だからといってこんな小さな森に旅人は足を踏み入れようとはしない。

ジャックの何気ない疑問に、は誤魔化すように軽く笑う。

「ちょっと前に、この辺を旅した事があってね」

それは決して嘘ではない。―――実際はちょっと前ではなく、15年ほど前の事だが。

「・・・いろんな所を旅してるんだな。まだ若いのに・・・」

「いや、ジャックだって若いでしょうが・・・」

軽く突っ込みをいれて、は拾った枝の一本をジャックに手渡した。

「・・・・・・」

これだけで釣りができない事は、ジャックにだって分かる。

ジャックは不思議そうに手元の枝との顔を交互に眺め、小さく首を傾げた。

それを気にした様子なく、は腰の小物入れから束になった糸を引っ張り出し、適当な長さに切ってからそれを枝に括りつけた。

最後にまたまたポーチから出した針をつけて―――釣竿の完成、である。

「・・・・・・こんなものまで用意しているのか?」

「まぁね。だってたまには新鮮な魚だって食べたいでしょう?」

ニコニコ笑顔を浮かべながら、自作の釣竿の針を川に投げ入れ、川辺に腰を下ろす。

それに習って、ジャックも同じように腰を下ろした。

なんとものんびりとした雰囲気である。

ジャックは無言で・・・―――そしても何も話さず、自然とその場に沈黙が落ちた。

サラサラと流れる水の音と、緩やかな風に揺れる木々。

時折聞こえてくる鳥の鳴き声は、戦いで荒立った心を癒してくれる。

「・・・・・・は」

その沈黙を破ったのは、意外なことに普段はほとんど喋らないジャック。

少し驚いて・・・それでも嬉しそうに笑みを浮かべたは、ジャックに視線を向けた。

「・・・は、どうして炎の英雄を追っている?」

「どうして、ねぇ・・・」

再び釣竿に視線を戻して、ため息混じりに呟く。

「それじゃあ聞くけど・・・・・・ジャックはどうして12小隊に入ったの?」

質問を質問で返され、ジャックはチラリとを見た。

予想に反して妙に真剣な表情のに、ジャックは何も答えずにただ俯く。

それに苦笑したは、小さく釣竿を揺らした。

「人にはね、答えたくない事や答えられない事があるもんなんだよ」

コクリと1つ頷いたジャックに、は再びクスクスと笑みを零した。

笑顔のを盗み見て、本当に珍しく小さく笑みを浮かべたジャックは、しかし次の瞬間真剣な表情に戻ったを見て不思議そうに首を傾げる。

「ねぇ、何か・・・変な匂いがしない?」

言われて辺りを窺えば、何となく変な匂いがする。

「なんか・・・・・・焦げ臭い」

風に煽られて、それはさらに増して行く。

思わず立ち上がって辺りを見回せば、高い木々の向こうから黒煙が上がっているのに気付いた。

「・・・・・・山火事か?」

「って、この辺に山なんてないじゃない。・・・・・・とまぁ、それはともかくとして。最近乾燥してたから、それでかな?」

しかしただ草が燃えただけで、あれほどの黒煙が上がるだろうか?

確かあっちの方には草原が広がっていただけだったし・・・・・・とそこまで考えて、は愕然と目を見開いた。

黒煙の上がる方角にあるのは、草原だけではないことを思い出す。

「・・・まさか」

その先は言葉にならない。―――言えば現実になってしまう気がして。

けれどもそれに思い当たってしまった以上、この場に留まっている事などできない。

手に持っていた釣竿を放り出し、置いてあったリュックを背負うと、黒煙が上る方角へ勢いよく駆け出した。

ジャックも同じように、の後に続く。

黒煙の上る先にある・・・―――カラヤの村を目指して。

 

 

の予想は、最悪の形で現実となっていた。

慌てて駆けつけた頃には既に村の半分ほどが全焼しており、風に煽られて炎の勢いはさらに増していた。―――こんな状態では、村のすべてを焼き尽くすまで消火は望めそうにない。

「・・・村の人たちは?」

ゲドたちのことも心配だったが、彼らなら大丈夫だろうと根拠のない事を思う。

それよりも、村人だ。

村に住んでいるのは、何も戦士だけではない。

女性や老人、はては子供までいる。―――この炎の中で、どれだけの人が逃げられたか。

成すすべもなくただ燃える村を見ていたは、隣でジャックがボーガンを構えたのに気付き顔を上げた。

視線を辿っていけば、そこにはゲドとクイーンの姿が。

2人の前には、数人の騎乗した騎士。

「・・・ゼクセン騎士団?どうして・・・」

ポツリと呟いたその時、騎士の1人がゲドたちに剣を向けるのが目に映る。

その騎士の姿に見覚えがあり、は知らずに拳を握り締めた。

少し前に寄ったブラス城で会った、誉れ高いと言われる騎士の1人。

「・・・・・・ボルス」

彼は以前に会った時とは違い、怒りをあらわにゲドたちを睨みつけている。

最初に会った時に、お世辞にも冷静そうとは思えなかった彼だが、それでも今の姿は想像以上で・・・。

ボルスがゲドに向かい剣を振り上げたその時、ジャックはボーガンを射った。

それはボルスの乗る馬の足元へと突き刺さり、突然の攻撃に怯えた馬がボルスなどお構いなしに暴れだす。

その瞬間を狙ってゲドとクイーンは騎士たちの横を走り抜け、村の外へと駆け抜けていった。

「俺たちも行くぞ」

ゲドたちが上手く戦線離脱したのを見送って、立ち尽くすなどお構いなしにジャックは腕を掴み走り出した。

半ば引きずられるように走り、それでもはチラリと背後に目をやった。

轟々と燃えるカラヤの村。

真っ赤に染まった空を見上げ、再び拳を握り締める。―――と、炎の音に混じって馬の足音が耳に届き立ち止まった。

しかしその時にはすでに遅く、目の前に飛び出してきた数人の騎士に行く手を塞がれる形となり、2人は騎士たちに鋭い視線を向ける。

今一番見たくない人物が、の目に映った。

「・・・・・・クリス」

「・・・・・・か?」

返された言葉に、唇を強く噛む。

無言のまま正面から見つめてくるから、クリスは視線を逸らした。

「何者だっ!!」

騎士の1人がそう叫ぶや早く、腰の剣を抜く。

「待ってください!彼女は・・・」

クリスの傍にいたサロメが、慌てたように声を上げた。

「彼女は関係ない」

きっぱりと言い切るクリスに、渋々といった風に剣を戻す騎士を見やり、は自分の腕を掴んでいるジャックの腕を自ら握り返した。

「貴女とは、こんな風に再会したくなかった」

「・・・・・・私もだ」

苦々しげに言葉を返してくるクリスに背中を向けて、今度はがジャックを引きずるように走り出した。

腕を引かれるジャックは、何を言うでもなくただについて走る。

いくらゼクセンとグラスランドが険悪だからといって、クリスが何の理由もなくカラヤを焼くとは思えない。

それをするからにはそれだけの理由があり・・・―――それがどれほど悲惨な光景でも、それが戦争なのだと言ってしまえれば簡単だ。

とて戦争に身を置いた事は幾度とあり、その度に多くの人を手にかけてきた。

そんな自分がこんな事を思うなど、偽善もいいところだけれど。

やるせなかった。

自分が好意を持った相手が、自分の友人の村を焼くという事実。

クリスが悪いわけではない。

じゃあ、カラヤが悪いのか?―――そうじゃないだろう。

それならば、一体悪いのは誰なのか。

そもそも、『悪い奴』なんて存在するのかもあやふやで。

分からないから、苛立った。―――悲しくて、切なくて。

行き場のない思いを、全力で走る事で紛らわそうとする。

強く握ったジャックの手が、軽く握り返してくれるのを嬉しく思い、は前を向いたまま小さく笑った。

その目に浮かんだ涙を乱暴に拭い・・・―――2人はひたすら走る。

 

 

「これからどうする・・・?」

カラヤの村から少し離れた森の中に集まった12小隊の面々は、みんな一様に厳しい表情で村を眺めるゲドを見る。

そこから少し離れた場所に腰を下ろしていたは、ぼんやりと先ほど聞いた話を思い出していた。

とジャックが2人で釣りをしていた時、村に現れた不思議な少女の話。

エースの話によると、淡い髪色を肩で切りそろえた美少女が、カラヤの村に突然現れこう言ったそうだ。

『早く、逃げなさい』、『生贄はこの村だけなのだ』と。

その少女を追った先にいた、赤い髪の男と黒ずくめの男。―――黒ずくめの男は、とんでもなくヤバイ気配がしたという事。

赤い髪の男と黒ずくめの男はともかくとして。

その不思議な気配の少女というのに、は心当たりがあった。

彼と一緒に姿を消し、おそらくは今も彼といるだろう少女。

その少女がカラヤの村に現れたという事は、今回のカラヤ襲撃に彼らが一枚噛んでいるということか。

「・・・・・・どうした?」

突然声をかけられ顔を上げると、いつの間にかゲドが傍に立っていた。

「別にどうもしないよ?それよりもこれからどうするの?」

なんでもないという風に笑顔を浮かべ逆に聞き返すと、ゲドが小さくため息を漏らした。

この不思議な雰囲気を持った男には、すべてお見通しなのではないかとは思う。

「これから一度カレリアに戻る。お前はどうする?」

「どうするって・・・もちろん行くよ、私も」

本音を言ってしまえば、できる限りハルモニアには近づきたくはなかったけれど、ここで彼らと別れるつもりはにはなかった。

少しの危険を冒してでも、彼らと共にいる方がいい。

それが、自分の求めるものに辿り着く近道だと・・・―――なぜかそんな予感がある。

「・・・行くぞ」

差し出された手を眺めて、思わず苦笑する。

こんな動作を彼がするとは、夢にも思わなかったので。

「どうも、ありがとう」

きちんと礼を言って、折角なのでゲドの手を借りて立ち上がる。

今のところ唯一安否が分かっているカラヤ族のアイラを12小隊に加えて、一向は再び旅を開始した。

次の目的地は、ハルモニア領・カレリア。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

ゲーム内容、微妙に無視で。

文章もかなり読みにくくなっていて、申し訳ありません。

私的に今回はかなり難しかった。―――いや、今回だけじゃないんですけども。

妙にジャックが出張り。

必要ないエピソードもあったりしましたが、ジャックと仲良くをテーマに。(オイ)。

次回は、あの人中心で。

更新日 2009.3.29

 

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