ゆっくりと意識が浮上していく感覚。

それに従いゆっくりと目を開ければ、目に飛び込むのは白い白い光。

それが夢に見たあの白い空間ではない事に気付いていたけれど、妙に安らいだ心境で一度瞬きした後ゆっくりと目を開けた。

!!」

直後耳に飛び込んできた声に僅かに口角を上げる。

寝起きざまに聞くような声ではないが、それは決して不愉快なものではない。

すぐさま駆け寄ってくる綾子の気配を感じながら身を起こしたは、寝起きで固まった身体をほぐすように伸びをしながら大きく欠伸をひとつ。

「綾子、おはよ〜。―――あー、よく寝た」

「よく寝たじゃないわよ!さんざん人の事心配させといて、何事もなかったかのようにあくびしてるんじゃない!」

不機嫌そうな声と共に頭を軽く叩かれ、は小さく笑い声を上げる。

いつも通りの朝。

ひとつ違うところがあるとすれば、それは寝不足が解消されているという事だろうか。

笑いながら「ごめんごめん」と謝罪すれば、ベットに腰を下ろした綾子は呆れ果てたようにため息をひとつ零して。

「その様子だと、もう大丈夫そうね」

「うん、そうだね。大丈夫そうだね」

「他人事みたいに言ってんじゃないわよ。昨日はほんとにびっくりしたんだから・・・」

そう言って表情を曇らせる綾子を認めて、は申し訳なさげに眉を寄せて笑う。

昨夜、どんな騒ぎになったのかは意識のなかったには解らないが、きっとものすごい騒ぎになったのだろう事は想像に難くない。

自分だけではなく麻衣もまた似たような悪夢を見たようだし、意識を失う間際に見たリンたちの様子を思えば、きっととても心配をかけてしまったのだろうという事も。

それを申し訳なく思いながらも、それほどまでに心配してもらえた事が嬉しくて、の顔には自然と笑みが浮かぶ。

それを見咎めた綾子は、またもや不機嫌そうに眉を寄せて。

「・・・アンタって、やっぱりむかつくわ」

「ありがとう」

照れくさそうに・・・バツが悪そうにそっぽを向く綾子に向かい、は輝くような笑顔を浮かべてそう答えた。

 

見えない

 

「なー。お前ら、ほんとに大丈夫か?―――ベースに戻ってもいいんだぞ?」

朝食を取った後、いつも通り測量に出た麻衣とに向かい、同じく測量に出ている滝川が戸惑ったようにそう声を掛けた。

その言葉に記録用のボードを抱えた麻衣と、メジャーを構えたは同時に振り返って。

「んーん、へーき。身体動かしてる方が気が楽だもん」

「そーそー。それに何もする事なくて、難しい顔してるナルとベースに詰めてる方がよっぽどキツイって」

想像して、はわざとらしくブルリと身を震わせる。

冗談交じりに言っているが、半分は本気だ。

昨夜の事がある為、ベースに留まっていてもナルはきっと文句など言わないだろうが、一日中難しい顔をして考え込むナルと、こちらも一日中モニターと向かい合っているリンと同じ部屋にいるよりはずっと気が楽だ。―――何も出来ないでその場にいるなど、居心地が悪い事この上ない。

「・・・そーか?なら、いいけど」

そんな麻衣との言葉に未だ納得できていない様子の滝川もそれ以上いうつもりはないらしく、心配そうな表情を浮かべながらもあっさりと身を引いた。

それを認めて、は軽く肩を竦めて。

「それに昨日たっぷり寝たから、ここ最近の睡眠不足もすっかり解消されたし。体調的には絶好調なんだよね。気分爽快、みたいな」

「・・・お前な」

すぐさま呆れた様子を見せる滝川に悪戯っぽく微笑みかけて、は手の中にあるメジャーを弄ぶ。

滝川に言った言葉に嘘はない。

原因はどうであれ、久しぶりにたっぷり睡眠がとれたのだ。―――肉体労働に悲鳴を上げていた身体は軽い。

ただ、精神的にまるっきり大丈夫だとは言えなかったけれど。

けれどそれを滝川に言うつもりはない。

言ったところで、余計な心配を掛けるだけだ。

あの夢の恐怖は、きっとどれほど話しても100%理解するのは難しいだろう。―――あの出来事は、体験するからこそ恐怖なのだ。

だからこそ話しても意味がない。

そうしては、その体験を誰かにさせるつもりもないし、理解してもらいたいとも思わない。

麻衣もそう思うからこそ何も言わないのだろう。

「さ、世間話はこれくらいにして、さっさと仕事に取り掛かりましょうか」

「そうだよ。データが揃えば、その分行方不明の人を捜しやすくなるかもってナルも言ってたじゃん」

今もまだ向けられる滝川の心配そうな表情から逃れるようにがそう声を上げると、麻衣も同じようにさっさと話題を切り替える。

心配してくれるのは嬉しいと思いながらも、余計な心配は掛けたくないとも思うのだから、人は勝手なものだ。

「それじゃ、さっさと取り掛かろう。―――あっちはまだ測ってなかったよね?」

「そうだけど・・・。お前、1人で行くなよ?」

部屋の外の長さを測りに行こうとしていたは、それを見咎めた滝川に止められ困ったように眉を寄せる。

そうして軽く肩を竦めて見せた後、ボードを持ってジョンの記録を記入していた麻衣へ向かい声を掛けた。

「行かないよ。行ったって1人じゃ測れないでしょーが。―――麻衣、手伝って〜」

「あ、うん!」

の呼びかけに応えるように振り返った麻衣は、そのままの後を追うように部屋の外へと飛び出していく。

そうして部屋の外へと出た2人は、お互い顔を見合わせて苦笑を浮かべた。

「ぼーさんって、結構心配性だよね」

「ねー。なんかお父さんみたい」

「お父さんって・・・!!」

それじゃ、ぼーさんが可哀想だよ。―――そう言って麻衣が笑い声を上げたその時、ふと背後で足音が響いて2人は揃って勢いよく振り返った。

まさかこんな真昼間から何かが出てくるとは思わないが、昨日の夢の事もある。

多少の事にも過敏になってしまうのは仕方のない事だった。

しかし勢いよく振り返った2人は、すぐさまホッと安堵の息を吐く。―――何故ならば、そこにいたのは知っていた顔だったからだ。

もっとも、に限っては若干肩に力が入っているようだったが・・・。

「やあ、こんにちは」

朝だというのに爽やかな笑顔を浮かべてこちらに歩いてくるのは、家代表としてこの調査に来た兄妹の兄、兵庫だった。

軽く手を上げて挨拶するその姿からは、この家の恐ろしさなど微塵も感じられない。

これが霊能者としての余裕の表れなのだろうかと、麻衣はいっそ感心した。―――それで言えば、も似たようなところがあると。

「昨夜は大変だったみたいだね。―――身体は大丈夫?」

「あ、はい。あたしはもう・・・」

「私も大丈夫だよ。たくさん寝たから気分も爽快だし」

先ほど滝川に言ったのと同じ言葉を口にして、は肩を竦めて笑って見せた。

それがどこか芝居じみて見えた気がしたのは、果たして麻衣の気のせいなのだろうか。

しかし兵庫はそれについて何を言うでもなく、ただ柔らかな笑みを浮かべてを見やった。

「そう、それは良かった。昨夜は妹がかなり失礼な事言っちゃったし、謝らなきゃいけないなと思ってたんだ」

申し訳なさそうに眉を寄せて笑う兵庫を認めて、声を掛けられたではなく麻衣の方が不愉快そうに眉を寄せた。

麻衣自身もあの時は混乱状態だったため正確な言葉は覚えていないが、それにしてもあの時の彼女の物言いは酷かったとそう思う。

あんな体験をした者に更に追い討ちを掛けるような事は、その体験をした麻衣にとっては軽く聞き流せる事ではない。―――それが自分の友人であるのだから、なおさら。

しかし当のは困ったように視線を泳がせて、そうして苦笑いを浮かべるとゆるゆると首を横に振った。

「あー・・・うん、綾子から聞いた。別に私は気にしてないし、心配しないで」

「・・・そう?そう言ってもらえるとありがたいよ。―――素直じゃなくて思った事すぐ口にしちゃう子だけど、俺にとっては大切な妹だからね」

申し訳なさそうにしつつもホッと安堵したような兵庫に、麻衣はますます眉を顰めた。

どうしては文句の1つも言わないのか。

いつものならば、ポンポンと反論しそうなものだというのに・・・―――そこまで思って、麻衣はふとある事に思いついた。

は彼らといる時、妙に控えめだという事。

そして、妙に他人行儀であるという事。

親類なのだから、もうちょっと親しげでもいいのではないだろうかとそう思うが、生憎と親戚のいない麻衣にはそこの辺りの事情は知りようがない。

もしかするとあまり親しくない親類なのだろうか?―――家は大規模な一族のようだし、あまり顔を合わせない親類がいたとしても不思議ではないが・・・。

兵庫と話をする中、しっかりと測量を進めるに習ってボードに記録を書き込んでいた麻衣は、しかし話が終わっても彼が立ち去らない事に訝しげに顔を上げた。

まだ何か話があるのだろうかとを見れば、も不思議そうな面持ちで兵庫を見つめている。

それでも何も言わない兵庫に焦れて、測り終わったメジャーを巻き取りながらは躊躇いがちに口を開いた。

「どうしたの、兵庫くん。悪いけど、私たちもう行かなきゃダメなの。兵庫くんも1人で出歩くのは止めた方がいいよ、ここ危険だし。あの子もいつまでも1人にしておかない方が・・・」

「・・・ねぇ、ちゃん」

この場の雰囲気に居心地が悪いのか、止まる事無くそう話しかけるの声を遮って、兵庫がの名前を呼ぶ。

それに引かれて顔を上げたと麻衣は、揃って僅かに身体を強張らせた。

先ほどまで微笑んでいた彼の表情は、今は真剣なそれに変わっている。

一体なんだと無意識に構える2人に構わず、兵庫は更に言葉を続けた。

ちゃん。妹には悪いけど、俺は君が月華である事に不満はないよ。君が一番適任だと思ってる。その能力も・・・、それから一清さまとの関係も。―――君にとっては幸せな事ではないかもしれないけどね」

「・・・何を」

「それじゃ、また・・・」

戸惑った表情を浮かべるをそのままに、兵庫はそれだけを告げると優しげに微笑む。

その微笑みに思わず口を噤んだを認めて、今度は困ったように眉を寄せてやんわりと笑んでから兵庫は踵を返した。

「・・・

去っていく兵庫の後姿を見つめたまま動かないの背中を見つめて、麻衣は戸惑いのままに声を掛ける。

一体どういう事なのか、彼が何を言っているのか、麻衣にはよく解らない。

けれどの様子がその重要性を物語っているような気がした。―――今までに感じた事のないの強張った身体が、それを示しているようで。

何か言って欲しくて、どうして良いのか解らなくて、麻衣はの名を呼ぶ。

そうしては麻衣のその願い通り振り返った。―――いつもの笑顔を浮かべて。

「ごめんね、麻衣。なんだか変なトコ見せちゃって」

「あ、ううん。そんな事・・・」

「戻ろっか。いつまでもこんなトコで油売ってたら、ぼーさんにもっと心配掛けちゃうもんね」

そう言ってなんでもない風に笑って踵を返すを、麻衣は呆然と見つめる。

何か言って欲しいと思っていた。

けれどそれは真実を語って欲しいと思っていたわけではない。―――そんなつもりはないけれど・・・。

それでも今確かに自分の前に張られた透明な壁を感じて、麻衣は思わず拳を握り締める。

たとえば・・・そう、たとえばリンのように目に見える形で壁を作っているのなら、麻衣もこれほど戸惑ったりはしない。

けれどは違う。

親しげに声を掛け、ふざけあったり、一緒に笑ったり・・・―――そんな風にすぐ近くに寄ってくるのに、肝心なところでは線を引く。

その心に踏み込んでもいい権利を与えられたと思ったその瞬間に、は音もなく身を引いて遠ざかっていくのだ。

完璧なまでの拒絶。

笑顔を浮かべるの心が見えない。―――見えたつもりになっていただけで。

「・・・なんで」

どうしてなんだろう。

どうして自分たちにその心を明かしてくれないのだろう。

心を許せる相手だと、そう思っていたのは自分だけなのだろうか。

「麻衣〜、行くよ〜」

数メートル離れたところで自分を呼ぶを見返して、麻衣はぎゅっと唇を噛み締める。

そうしていつもと変わらない綺麗な笑顔を浮かべるに挑むような眼差しを向けて、麻衣はいつか絶対に信頼させて見せると密かに決意を固めて一歩を踏み出した。

 

 

「遅かったな、2人とも」

部屋の外の長さを測り終えて部屋に戻ったと麻衣を出迎えたのは、やはり心配そうな表情を浮かべた滝川だった。

流石に部屋の長さを測るだけにしては時間が掛かりすぎていたらしい。―――もっとも、兵庫と話をしていたのだから仕方のない事なのだが。

「ごめんごめん、ちょっと時間食っちゃって」

しかしにそれを告げるつもりはないらしく、軽く笑って滝川の言葉をさらりと流す。

そんなの手前、麻衣に何かが言えるはずもなく、同じように誤魔化すために笑みを浮かべた。―――本当に彼を誤魔化せているかは解らなかったけれど。

そんな中、ジョンと共に室内の長さを測っていた安原が、少し気まずそうな様子を見せながら2人の下へと歩み寄った。

「あの・・・ちょっといいですか?や谷山さんには、嫌な夢を思い出させちゃうので申し訳ないんですけど・・・」

「い、いいよう。気を遣わなくて。―――どしたの?」

その言葉に、安原の聞きたい事が昨夜の夢にあるのだとすぐに察して、麻衣は平気な風を装って慌てて手を振った。―――確かに昨夜の夢は酷いものだったけれど、いつまでも腫れ物に触るように扱われたいわけではない。

そんな麻衣の心境を正しく汲み取って・・・―――けれどこれから話す内容を思い、安原は極力普通の表情を心がけながらも口を開いた。

「鈴木さんか、厚木さん・・・。もう生きてないって事はありえませんか?」

突然切り出された問い掛けに、3人は揃って目を見開く。

そんな3人の様子を認めながら、しかし安原は更に言葉を続けた。

「たとえば、2人の内どちらかが死んでいて、その死んだ時の経験をと谷山さんが自分の事のように感じ取った・・・―――なんて可能性はないですか?」

「そういうテレパシー夢の例がないわけじゃないが、そうなると・・・」

「『殺された』って事になりますよね」

『殺された』―――その言葉に、思わず背筋に悪寒が走る。

あんな殺され方をしたというのだろうか。―――行方不明になったあの2人は・・・。

出来ればあってほしくない可能性に思わず身体を強張らせると、しかしその雰囲気を掻き消すような滝川の言葉が耳に飛び込んできた。

「まさかとは思うが・・・ここの連中がなんかしてるんじゃないだろうな」

「・・・は?」

あまりといえばあんまりな推測に、と麻衣は揃って呆気に取られる。

「映画とかでありそうですよね。実は以前失踪した2人もここの職員が・・・とか」

「そうそう。大橋さんが殺人狂だったりしてな。マスコミに知られると困るなんて言ってここに閉じ込めて、1人ずつ消していく・・・」

しかしそんな2人など構う事無く、したり顔で話を進める滝川と安原をみやり、麻衣とは揃って頬を引き攣らせた。

「・・・本気?つか正気?」

「なにその非現実的な推測。っていうか、百歩譲ってその推測が成り立つとしても、わざわざ私たちを集めて消す理由が解らないんだけど。むしろ余計目立ちそうなんですけど」

呆れた面持ちで告げる麻衣とに漸く視線を向けた滝川は、流石に本気での発言ではないのか軽く肩を竦めて見せる。

しかしその発言のすべてが冗談ではないらしく、でも・・・と言葉を続けた。

「でも可笑しくねーか?俺たちがここに来てから4日かそこらで、2人の人間が消えてるんだぜ?職員連中が準備で1週間もいたのになにもねぇってあるかよ」

「そういえば、この家に直接関係のある人は消えてませんよね」

「だろ?」

安原の同意を得て、滝川が力強く頷く。

確かに言われてみればその通りである。

滝川の疑問も、あながち見当違いではない。―――しかし・・・。

「それで大橋さんが殺人狂?ナルが聞いたらどんな反応するかなぁ・・・」

「・・・うっ」

流石にナルには言えないらしい。―――麻衣の的確な突っ込みに思わず言葉を詰まらせる滝川と安原を見やって、は乾いた笑みを浮かべた。

もしそんな事を言おうものなら、冷笑どころか呪われるかもしれない。

しかし想像して冷や汗をかく滝川を他所に、今まで静かに話を聞いていたジョンが真剣な面持ちで口を開いた。

「・・・そやけど、確かに消えたのは外部の人間ばかりとちがいますか?」

「やだ!まさかジョンまで大橋さんたちが犯人なんて・・・」

「そんなんとちがいます!今までの様子を見ても、失踪事件に霊が関係してるのんはマチガイないと思いますし!」

呆れた様子で口を開いた麻衣に、ジョンは慌てて弁解する。

まさかそんな非現実的な事を考えているわけではない。―――ただ、滝川の言い分ももっともだと、そう思ったのだ。

「ただ、消えるのが外部の人間ばっかりやゆうのは、なんか意味があるのとちゃいますやろか?」

この家に忍び込んだ少年。

彼の捜索をしていた消防団の青年。

そして霊能者の2人。―――鈴木さんと厚木さん。

「たとえば・・・霊が消す人間を選んでるって事ですか?美山家の人間は犠牲にしないとか・・・」

「でも職員は美山家の血筋ってわけじゃねーだろ。なんで無事なんだよ」

「そうだよね。大橋さんも代理でここに来てるわけだし。雇われた人だって、別に美山家に関係するような人じゃないだろうし」

「せやったら・・・」

ふと、ジョンが言葉を切った。

これまで行方不明になった人たちと、大橋とを比べてみて。―――そうして導き出される結論は。

「もしかしてここの霊は、若いお人が好きなのかもしれません」

静かなジョンの声が、鋭い刃のように脳裏に響き渡った。

「職員のみなさんは年配の方ばかりですやろ?反対に、消えたんは20代以下の若い人ばかりとちがいますか?」

「・・・言えてる」

言われて見れば、その通りなのだ。

それならば、準備の為に長くこの家にいる大橋たちが無事なのも頷けた。―――『範囲外』であるから、彼らは無事なのだ。

「あ、あたし・・・ナルに話してくる!!」

ボードを胸に抱えて表情を強張らせた麻衣は、慌てたように踵を返した。

この事実を早く伝えなくてはならない。―――そう思い駆け出しかけた麻衣の肩を掴み、滝川は慌てて声を上げた。

「待った!1人で行くな。俺たちは全員30前だろーが。ジョンの意見が正しかったら全員が危険なんだぞ!!」

滝川の声に、麻衣は駆け出しかけた足を止めた。

確かに滝川の言う通りだ。―――ジョンの推測が正しければ、自分たち全員の身が危ないという事になる。

「ナルちゃんのいうとおりだ」

「・・・ぼーさん」

お互い顔を見合わせて、無意識にごくりと喉を鳴らす。

思わず呟いた己の声が掠れるほど小さい事に気付き、は拳を握り締める。

この家にいる霊が、あの夢で見た男たちだったとするならば。

行方不明になった人たちの末路も、きっとあの夢の通りに・・・。

「絶対に1人にはならない方がいい」

滝川の念を押すような強い声に、は思わず身を震わせた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

内容が内容のせいか、なかなか明るい雰囲気になりません。

むしろどんどん沈んでいく気がします。

こうなってくると、無理にでも明るくしたい気分になりますが。(おい)

作成日 2008.1.6

更新日 2008.9.22

 

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