測量をひとまず打ち切って、つい先ほど出た推論をナルに伝えるべくベースに戻ってきた5人は、その場の異様な雰囲気にお互い顔を見合わせた。

「・・・帰ってきた!!」

ゾロゾロと戻ってきた5人を見やり、それに気付いた綾子が声を上げる。

それに一体何ごとかと顔を見合わせながら首を傾げた滝川とは、どうしたの?の問い掛ける麻衣の向こうでホッと安堵する綾子を認めて訝しげに眉を寄せた。

この様子はただ事ではない。―――嫌な予感を更に煽るように、綾子が安堵交じりに口を開く。

「良かったわ、無事で。―――また人が消えたのよ」

告げられた言葉に思わず目を見開く。

人が、消えた?

「また!?」

「誰だっ!!」

思わず身を乗り出してそう声を上げる滝川と麻衣の後ろで、はビクリと身体を震わせる。

また人が消えた。―――先ほどの推論に当てはまる人間は限られている。

もしも・・・もしもそれが、自分の知る者だったら・・・?

そんなの恐怖を知って知らずか、問われるままに綾子がその名を告げた。

「福田さんですって」

「っていうと、南心霊調査会のあの若い姉ちゃんか・・・」

滝川の言葉に、自己紹介の時に見た福田の顔を思い出したは、思わずホッと息を吐き出した。

消えたのが家の兄妹でなかった事だけは幸いだ。―――彼らに何かあれば、一清になんて報告すればいいのか・・・。

もちろん、だからといって別の人間だから良かったと思えるわけではなかったが。

そんな中、難しい顔をして考え込んでいた滝川が恐る恐る問い掛ける。

「・・・いくつだ?」

見た目からいって、福田は大分若い方に入る。

先ほどの推論に当てはまる・・・と言ってもいい。

そんな5人の心境など知るはずも無く、訝しげな表情を浮かべた綾子が同じく福田を思い出しながら口を開いた。

「はぁ?知らないわよ。25かそこらじゃないの?―――それが?」

再度かけられた問いかけに、しかし5人がすぐに答えられるはずもなく・・・。

痛ましそうな・・・それでいて不安そうな表情を浮かべて、お互い顔を見合わせた。

 

渋谷さん家の家庭事情

 

「・・・なるほどな」

測量に向かった際、5人が出した推論を聞かされたナルは、考え込むような面持ちで1つ頷いた。

もしかすると、ここの霊は消す人間を選んでいるかもしれないという事。

そしてその対象となるのは、若い人物であるかもしれないという事。

それらを聞かされたナルは、確かにそうかもしれないと納得する。―――事実、これまで行方不明になった者たちは、全員がそれに当てはまるのだから。

「嘘でしょ・・・?」

静かに話を聞いていた綾子が、顔色悪くそう呟く。

その推論が正しければ、この場にいる全員の身が危険という事になる。

「安原さん、麻衣。2人とも、絶対に1人になるんじゃない」

ナルの指示に、安原と麻衣は揃って顔を強張らせる。

ナルがそう結論を出したという事は、その危険性が高いという事だ。

安原はもとより、麻衣にも自衛の手段はない。―――ナルの実験によってESPの能力がある事は証明されたものの、それはかえって彼女の身を危うくするものだとも言えた。

流石の安原も言葉がないのか、無言でナルを見返している。

それを受け流したナルは、次にその視線を綾子へと向けて・・・。

「松崎さん、どの程度信用してもいいですか?」

唐突に投げ掛けられた問い掛けに、思わず綾子は眉間に皺を寄せる。

問われた意味が理解できない。―――どの程度信用してもいいか、など。

「・・・なによ、それ」

それではまるで疑われているみたいではないか・・・と綾子が不機嫌そうにナルを見返すと、その視線を真正面から受けたナルは真剣な面持ちで口を開く。

「言葉の遊戯をやってる場合じゃない。麻衣も安原さんも必要なんです。しかしここは危険だ。―――あなたをどの程度、アテにしていいんですか?」

漸く問われた意味を理解し、綾子は気まずげに唇を噛む。

本来ならば侮辱だと声を上げるところではあるが、事態が事態だけにいつも通りというわけにはいかない。

反論がないわけではないが、現状において自分に何が出来るかと問われれば、悔しいが出来る事は限られていた。

「・・・退魔法程度なら・・・アテにしてくれてもいいわ」

綾子の口から零れた言葉に、黙って話を聞いていたは思わず目を丸くする。

あのプライドが無駄に高い綾子にしては、いやに謙虚な言葉だ。―――それほど事態は重いという事か。

綾子の返事を受けて、1つ頷いたナルは続いて真砂子へと視線を向けた。

「解りました。では松崎さんと原さんは絶対に離れないように。―――お互いフォロー出来ますね?」

「・・・松崎さんでは不安ですわ」

「ちょっと!!」

伏し目がちにそう言い放つ真砂子に、綾子が眉を顰めて声を上げる。

もっとも、綾子の怒りも当然の事のように思えた。―――彼女は精一杯、譲歩している。

途端に広がった険悪な雰囲気に、ナルは小さくため息を吐き出して。

そうして真砂子に視線を固定したまま、キッパリとした口調で言い放った。

「原さん。僕は基本的にこのメンバー以外を信用できない。アテに出来る人間は少ないんです。あなたも霊能者の端くれなら自分の身ぐらい守れますね?」

問い掛ける形ではあるものの、声色は反論を許さない。

勿論真砂子にそれが出来るはずもなく、目を伏せたまま小さく相槌を打った。

「・・・ええ」

「安原さんはまったく自分の防衛が出来ない。護衛には十分に信頼できる人間が必要なんです」

「・・・はい」

反論もせず静かに頷く真砂子を見やり、ナルは今度は滝川とジョンへと視線を向けて。

「では、ぼーさんとジョン。2人は安原さんを護衛してくれ。―――それから、

唐突に話を振られ、ぼんやりと話を聞いていたは思わずビクリと肩を震わせた。

「えっ!?・・・は、はい」

勿論話を聞いていなかったわけではない。―――ただ、この事をどうやってあの兄妹に伝えるかの手段を考えていただけなのだが。

そんなの様子を見咎めるようなナルの視線から目を逸らしつつ、は誤魔化すように乾いた笑みを浮かべた。

それを認めて、ナルは小さく息をつく。―――しかしそれ以上何かを言う事もなく、すぐにも言葉を続けた。

、お前はぼーさんとジョンと一緒にいろ」

「・・・それって、私も安原くんを守るって事?」

「そうは言っていない。2人の傍で、なるべく自衛できるよう努力しろ、と言っているんだ」

「・・・ああ、そうですか」

ナルから告げられた冷たい言葉に、はがっくりと肩を落とす。

自分に安原を守れるかどうかと問われれば微妙なところだとは思っていたけれど・・・―――まったくのお荷物扱いに、テンションが下がらないはずもない。

もっとも、にとっては自分の身を守る事さえも怪しいところではあったが。

がそう感想を抱いたその時、不意にガタンと椅子の音が室内に響いた。

何事かと視線を巡らせれば、モニターと向かい合っていたリンが訝しげな面持ちでこちらを見ている。

「ちょっと待ってください。それは谷山さんを私が護衛するという事ですか?」

「そうだが」

「ではあなたは誰が護衛するんです。あなたは退魔法を使えないはずです。違いますか?」

リンの言葉に、は思わず目を丸くする。

そうだった。

ずいぶんと態度がでかいからあまり意識していなかったが、ナルは霊能者ではないのだ。

もちろんリンがそう言うからには、ナルは退魔法を使えないのだろう。―――それならばむしろよりも自衛の手段がないと言っていい。

それに加えて、この組み合わせではナルは1人で行動する事になる。

あれほど1人で行動するなと言っていた人物の選択とは思えない。

「そ、そうだよ!どうすんの!?」

全員の心の声を、麻衣がそのまま言葉にする。

しかし当のナルは大して動じた様子もなく、腕を組んだままさらりと言い切った。

「何とかなる」

「そりゃまた、ずいぶんアバウトな・・・」

緊張漲る空気の中、思わずがそう漏らす。―――こんな状態でもマイペースを貫くのだから、意外と彼女の神経が図太いのかもしれない。

しかしリンがそんな言葉で納得するはずもなく、彼は更に言葉を続けた。

「冗談じゃない。何とかされては困ります。―――ナルの護衛は私がします」

キッパリとそう言い放ち、リンはフイと視線を滝川とジョンへと向ける。

「滝川さんは安原さんを。ブラウンさんは谷山さんをお願いします」

「では、はどうするつもりだ?」

反論を許さないとでも言いたげに言い放ったリンに向かい、ナルは静かにそう問い掛ける。

突然話が自分の方へとやってきた事に戸惑いつつチラリとリンを窺えば、彼は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。―――それに居心地が良いわけもなく、は困ったように視線を泳がせる。

「・・・では、は滝川さんかブラウンさんのどちらかに」

「彼ら1人ではきつい」

一拍の後、そう結論を出したリンに向かい、しかしナルはキッパリと告げる。

それに勿論反論がないわけもなく、途端に滝川が苦々しい表情を浮かべて口を挟んだ。

「おいおい、ナルちゃん」

「見損なって言ってるんじゃない。ここはそれだけ危険である可能性があると言ってるんだ」

そんな滝川の声を遮って告げるナルに、事の中心にいながらも蚊帳の外に追い出されていたは難しい顔をして口を開く。

「それだけ危険なら、ナルが1人ってのは危ないんじゃないの?私たちだけ安全じゃ意味ないじゃない」

「彼女の言う通りです」

すかさず入ったリンの同意に背中を押されるように、は更に言葉を続ける。

「ナルは私の事、完全にお荷物扱いだけど・・・っていうかそこは微妙に反論できないけど、むしろ私よりナルの方が自衛手段ないでしょ。少なくとも、私は退魔法程度なら出来るし、一応はいろいろ一清・・・当主に仕込まれてるし、自分の身を守るくらいは出来るよ」

「・・・・・・」

「ぼーさんやジョン1人できついなら、綾子と真砂子の班に回るよ。お互いフォローして自衛するなら、3人もいれば十分でしょ?」

「ダメだ」

ナルが何も言わないのをいい事に言葉を並べ立てるが、しかしそれはナルの一言であっさりと却下された。

取り付く島もないとはまさにこの事か。

とて、現状に不安がないわけではない。

だけではなく、それはこの場にいる全員がそうだろう。―――そんな中で一生懸命考えて出した結論を何の説明もなく切り捨てられれば、流石のだとてムッとする。

「なんでよ!」

その勢いのままにそう声を上げれば、ナルから冷たい視線が送られた。―――まるで刺すようなそれに、先ほどの勢いも忘れて思わず怯む。

「・・・な、なんでですか?」

「ちょっと!負けてんじゃないわよ!」

思わず身を引けば、背後から綾子の叱咤激励が飛ぶ。

それに「なら、変わってよ!」と心の中で反論しながら、それでも何とかじっとナルの目を見返せば、彼は疲れたようにため息を吐き出した。

「お前に実力がない、と言っているわけじゃない」

「・・・なら、どういう」

「お前は、昨日の二の舞になるつもりか?」

言葉少なに告げられ、は思わず目を見開く。―――同じように、その場にいた全員が絶句した。

「『霊に対する抵抗力が弱い』、『霊に憑依されやすい』と言っていたのはお前だろう。確かに普通の状態のままならば問題はないかもしれない。だが・・・もしも霊に憑依されたら?危険を前にしてお前がそんな状態になれば、松崎さんと原さんではきつい」

「・・・・・・」

「それはぼーさんやジョンも同じだ。安原さんや麻衣を守りつつ、そんな状態のお前をどうする?もちろん放って置く事も出来ないし、だからといってお前を優先すれば今度は2人が危ない。―――どちらか1人では無理だ」

「・・・それは、でも」

「昨日、自分が死にかけた事を忘れるな」

キッパリと言い放たれ、今度こそ反論できずには口を噤んだ。

ナルの言う通りだと、そう思う。

霊に憑依されないまでも、霊の気に当てられて倒れでもすれば自分ではどうしようもない。―――そしてその可能性が自分にはある。

森下家での事件や、緑稜高校での事件の時の失態があるだけに、それ以上は何も言えない。

それを思い知らされ、は眉を寄せつつギュッと拳を握り締めた。

やっぱり、そうだ。

いつだって自分は、こうやって人の重荷になってばかり。

1人で立って歩いているつもりでも、結局は何も出来ない。―――自分の身を守る事さえ。

自分がいなければ、もしかするともう少し話はスムーズに進んでいたかもしれないとそう思えて、強く唇を噛み締める。

誰かの負担になるような事だけは、絶対にしたくなかったのに・・・。

「ですが、あなたを1人にする事は出来ません。誰か1人を返してください」

悔しさと情けなさに耐えるように俯いていたの耳に、リンの静かな声が届く。

「さっきも言っただろう。安原さんや麻衣もそうだが、にも十分な守りが必要だ」

「それは解っています。彼女についてもちゃんと考えます。しかしあなたを1人にする事は出来ません。あなたに万が一の事があったら、教授になんて言ってお詫びすればいいんですか」

リンの強い口調に、その場にいた全員が目を丸くした。

教授?―――教授って、一体誰の・・・。

そんな全員の心の声に答えるように・・・―――そして周りの目さえ忘れてしまったかのようにじっとナルを見据えていたリンはさらに言葉を続けた。

「少しはご両親の気持ちも考えてあげなさい」

「・・・リン」

「あなたは、自分が17の子供だという事を忘れてはいませんか?」

ナルの咎めるような声にも構わず、リンはそう言ってナルを見下ろす。

「両親って・・・ナルの両親、教授なの?」

「俺が知るかよ」

こそこそとナルとリンには聞こえないように話しかけたは、返ってきた滝川の言葉に「そりゃ、そうか」と納得したように頷く。―――この突然始まったお家騒動で、先ほどまで感じていた不安や無力感はどこかへ吹き飛んでしまった。

それにしたって、ナルの背後関係が明確に見えたのは出会ってから初めてだ。

彼が明らかにしない部分の一部は把握しているとはいえ、もともとそういった事にあまり興味のないは、殊更ナルの背後関係を探ろうとはしなかった。―――それがこんな形で飛び出してくるとは・・・。

しかしナルも負けてはいなかった。

まっすぐに自分を見下ろすリンを睨み上げて、いつもよりも冷たい口調で言い放つ。

「僕に不満があるんだったら、帰ってもらってもいいんだが」

ますます険悪になる部屋の雰囲気に、は呆れと困惑が入り混じったため息を吐き出す。

ここでリンに帰られては、ナル自身が困るだろうに・・・。―――まぁ、リンがすべてを投げ出して帰るとはも思ってはいなかったが。

「説教されて突き放す、なんて。―――ああいうところを見ると、ナルもまだまだ子供なんだって思うよね」

「おいおい、ナルちゃんに聞かれたらどうすんだよ」

相も変わらずこそこそと会話を続ける滝川とを他所に、冷たくあしらわれたリンはしかし表情1つ変えずに。

むしろ余裕さえ感じられる様子でナルを見下ろし、ゆっくりと口を開いた。

「何か勘違いしていませんか?無論、私は帰ってもいいのですよ。忘れていただいては困ります。私はあなたの付き添いではありません。―――あなたを監視するためにいるのですからね」

そうして言い含めるような口調で告げられたリンの言葉に、驚いたのはナルではなく周りに居た者たちの方だった。

思いもよらない発言に、全員が目を丸くする。―――それはナルの両親が教授だと知った時の比ではない。

「・・・うわ。また物騒な単語が出てき」

!」

思わず漏れた言葉は、滝川に口を押さえられる事によって遮られた。

それに思わず苦笑いを零しつつ、チラリと2人を見やる。

先ほどまではあんなにも落ち込んでいたというのに、こういう場面になれば突っ込みを入れたくなる自分にいっそ感心した。

リンは言った。

自分は、ナルを監視するためにいるのだと。

その意味するところはなんなのか、先ほどの会話を聞いただけで理解は難しいだろう。

ただひとつ、解っている事は・・・―――今この場において、ナルとリンの立場が逆転しているという事か。

いつもは傍若無人なナルの指示に従順に従っているように見えるリンが、今はナルを押さえ込んでいる。

珍しいといえば珍しいその光景に、思わず全員が息を飲んだ。

そうしてどれほどの沈黙が流れただろうか。―――口を挟む事も出来ずにただ状況を見守っていた面々の中で、それを感じさせない様子で安原がスッと手を上げた。

「僕が外れます」

さらりと告げられたその言葉に、全員が安原を見やる。

「おい、少年」

「そうすれば問題はないはずです。所長が調査員に後を任せてリタイアしても支障はないでしょう?僕は諏訪市内で森さんをアシストします」

戸惑ったように声を掛けた滝川ににっこりと微笑みかけながら、安原はそう続ける。

そう、安原か麻衣か。―――守られるべき者の誰かが1人減れば、問題は解決する。

それでも麻衣もも、今回の調査には必要な人材だろう。

そう考えた末の結論だった。―――これ以上、仲違いを起こさせない為でもあったけれど。

「・・・安原くん」

「別にのせいじゃないよ。それに森さんのアシストをする方が、僕には適任だと思うんだけど・・・?」

「そりゃ、そうだけど・・・」

安原の優秀さは、他のメンバーよりも長く付き合いのあるが一番よく知っている。

確かにそういう分野においては、安原以上の適任者はいない。

「それよりも、君の方こそ気をつけて。―――渋谷さんの言葉じゃないけど、昨日は本当に危なかったんだから」

「・・・うん」

諭されるように言われ、いつもの勢いはどこへやら・・・は素直に頷く。

それを満足そうに見つめて・・・―――そうして安原は大橋にリタイアする旨を告げ、朗らかな笑みを残して屋敷から去って行った。

屋敷の外まで見送りに来たと麻衣と滝川は、少しづつ遠くなっていく車を見送る。

結局はこういう結果になってしまった事に自分の無力感を悔やみつつも、これはこれでよかったのかもしれないと気持ちを切り替えた。

少なくとも、これで安原を危険から遠ざけられたのだ。

ナルの要望とはいえ、まったくの一般人をこれ以上危険に巻き込むのは本位ではない。―――それが友人であるのなら、なおさら。

そんな3人を横目に、偶然なのかそれとも意図的になのか・・・その場を通りかかった井村が、遠くなる車を見やり冷笑と共に呟いた。

「結局逃げ出したか。無責任な所長だな。―――所詮、子供の遊びか」

「・・・!!」

初日に安原にしてやられたのを相当根に持っているらしい。

そんな井村の言葉に麻衣が黙っているはずもなく、反射的に言い返そうと口を開くが、それは滝川の制止によって阻まれた。

「言わせとけよ。―――とにかく、まず福田さんを捜しに行こう」

顔を歪める麻衣の頭に手を置いて、滝川は諭すようにそう呟く。

もしかするとそれが大人の余裕なのかもしれない。

いつものだったら、きっと滝川と同じようにしていただろう。

しかし今回安原がこの家から去ったのは、自分の無力さが原因なのだ。―――そのせいで安原が侮辱されるのは、たとえ本人が許しても自身が許せない。

「・・・いい度胸じゃないか。黙って聞いてれば好き勝手に。いつまでも大人しく聞き流してくれると思ったら大間違いだぞ、この」

「はいはい、ストップ。ちゃん、言葉遣いが乱れてますよ」

「うるさーい!もう、一清と同じ事言わないでよ!!」

うっすらと笑みを浮かべつつも井村に向かい突進していきそうなをがっちりとホールドした滝川に、は非難の声を上げる。

しかしそれにすら動じた様子なく、軽く宥めながらもの身体を引きずってその場から去っていく滝川の後を、麻衣は慌てて追いかけた。

、ちょっと落ち着いてよ」

先ほど同じように頭に血を上らせた麻衣も、今のの様子を見てすっかり我に返ったらしい。―――そういう面で言えば、のこの行動もあながち無駄ではなかったのかもしれないが。

「・・・って、たまにものすごく子供っぽいよね」

「なにおう!私のどこが子供っぽいっていうのよ!!」

「そういうとこだよ、そういうとこ」

はいはい、暴れるのは止めてね〜と続く滝川の軽い声に、は更にムッと表情を顰めて。

ああ、もう、むしゃくしゃするー!というの絶叫が屋敷内に響いたのは、数秒後の事。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

相変わらず、話を終わらせるのが下手ですいません。

もう、どこで切っていいのやら・・・。

もう13話目だというのに、未だに終わりが見えません。(本気でどうしよう)

作成日 2008.1.9

更新日 2008.10.6

 

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