状況は確実に変化を見せていた。

時間が経ったことにより恐怖が和らいだのか、生徒たちは顔を合わせればシリウスの噂話をしている。

在学中も彼の噂を聞かない日はなかった。―――良い噂もあれば悪い噂もあったけれど。

またホグワーツで彼の噂を聞く事になるとは、あの頃は思ってもいなかった。

しかもこんな最悪な噂を。

シリウス侵入以来変わった事は生徒たちの噂話の内容だけではない。

いつも変わらずグリフィンドール寮の門番をしていたレディの肖像画は取り外され、変わりにカドガン卿の絵が掛けられた。

教員たちはハリーを必要以上に目で追うようになり、パーシーがボディガードのように常にハリーの側にいる。

そして事態を重く見たミネルバは、ついにハリー本人に『シリウスが狙っているのは貴方だ』と告げた。―――それに対しハリーは、既にその話は承知していたようだ。

ホグワーツ特急の中での会話からそうだろうと思っていた私は大して驚かなかったが、ミネルバが話をそれだけで終わらせる筈もなく、数日後に迫ったクィデッチの試合に向けての練習を中止するようにと忠告した。

それに対して反論するハリーを前に、昔からクィデッチに力を入れていたミネルバが弱い事は私も知っている。

結局飛行術教諭のフーチ教授と、そして私が付き添う事で話は決着がついた。

これがシリウスがホグワーツに侵入してから、数日間の出来事。

 

の中の光景

 

今年初めてのクィデッチの試合が近づくにつれ、天候は着実に悪化していった。

ミネルバと約束した通り、私はハリーの練習を見学するという口実の元、クィデッチ競技場でグリフィンドールの練習風景を見守る。

ロンやハーマイオニーなどには、こんな雨の中わざわざ見学するなんてよっぽどのクィデッチ好きなんだねと呆れられたが、ハリーは私が練習を見に行くのを喜んでくれた。

いや、ハリーだけではない。―――何故かウィーズリーの双子が飛び上がる勢いで喜んでいたが、一体どうしてだろうか?

人の目があればあるほど、やる気が出るタイプなのだろうか。

そういえば昔ジェームズがそんな事を言っていたな、と思い出して苦笑した。

「「ー!!」」

「僕たちの勇士を見ていてくれたかい?」

「かっこよかっただろう!?」

練習が終わった後、全身ずぶぬれのまま双子が私の元へとやってきた。

声を揃えて笑顔を浮かべながら私にそう問い掛ける。―――それにやはり苦笑を浮かべながらではあるが頷いてやると、声を上げて喜んだ。

「もしかして僕らに惚れちゃったりとかしない?」

「いやぁ、モテる男は辛いなぁ・・・」

「馬鹿なことを言ってないでさっさと着替えて来い。風邪を引いても知らんぞ」

軽いノリで私の手を取る双子に呆れた視線を向けて、素っ気無くそう言い放つと強引に背中を押して更衣室へと促した。

こういう軽い冗談を言うタイプはあしらうに限る。―――ジェームズを相手に、私が学んだ事だ。

ちぇ・・・と小さく呟いて更衣室に向かう双子の後ろから、やはり全身ずぶぬれになったハリーが姿を現した。

ハリーは私を見てにっこりと微笑む。

その微笑みに笑みを返すと、着ていたローブの端でハリーの顔を濡らしていた雨水を軽く拭いてやる。

「いいよ、濡れるから・・・」

「濡れれば乾かせば良い。どうせ雨で濡れているのだから、今更少しぐらい変わらんよ」

そう言えばハリーは諦めたのか、大人しくされるがままになっている。

「どうだった、練習?」

落ちた沈黙が気恥ずかしいのか、ハリーが突然口を開いた。

私はその質問に一度手を止めてから、改めてハリーの顔を見る。

「お前はクィデッチがとても好きなのだな。それにとても箒捌きが上手い」

思ったままを告げると、ハリーははっきりと解るほど照れた様子を見せた。

「・・・そうかな?」

「ああ、素晴らしい腕前だ」

はっきりと返事を返すと、ハリーは嬉しそうに笑った。

リリーやジェームズが生きていれば、さぞかし自慢だろうと思う。

見せてやりたいと思う。―――そしてその自慢そうな笑顔を見たいとも。

それはとうに叶わないことなのだと、理解してはいたけれど。

「さぁ、帰ろうハリー。すぐに夕食の時間だ」

「うん。僕お腹ペコペコだよ」

笑顔を浮かべて隣を歩くハリーを見て、強く思う。

この子を守りたい、と。

それはもしかしたら償いなのかもしれない。―――大切な親友を守れなかった代わりに、ハリーを守りたいと思っているだけなのかも。

それでもこの気持ちに偽りはないから。

だから。

「早く出て来い」

「・・・?何か言った?」

「いや、何も」

不思議そうな表情を浮かべるハリーに向かい、首を横に振る。

早く出て来い、シリウス。

お前には、ハリーを幸せにする義務があるのだから。

 

 

「いい加減にしないか」

思わず口を挟んだ私を、その場にいた全員が驚いたように振り返る。

闇の魔術に対する防衛術の授業に、教授であるリーマスは姿を現さなかった。

その理由もしっかりと把握している。―――今ごろはが彼の側についていてくれているだろう。

代わりに教授として姿を現したのはセブルスだった。

リーマスの授業計画を無視して彼が行った授業内容は、狼人間について。

突然の授業変更に生徒たちは戸惑いを隠せないようだった。

どうしてセブルスが人狼についてを生徒たちに学ばせたいのか。―――考えたくはないが、誰かに気付かせたいのだろうと推測する。

そしてこれこそが、セブルス流の復讐なのかもしれない。

そこまで恨みを買うような事をしてきたリーマスたちにも原因があるのだし(と言っても主に恨みを買っていたのはシリウスとジェームズだろうが)それが解っている為、諌めるのも躊躇われた。

しかし授業が進むにつれ、どんどんと嫌な感情が積もってくる。

質問に答えようと手を上げるハーマイオニーを無視し、尚且つ彼女に向かいセブルスは暴言を吐いた。

そしてそれに反論したロンには、罰則まで与える始末。

『答えて欲しくないなら、どうして質問したんですか!!』

ロンの言う通りだと思った。―――そう思うと、咄嗟に言葉が口をついて出ていたのだ。

「いい加減にしないか」と。

突き刺さるようなセブルスの視線と、生徒たちの視線。

教室に落ちた沈黙は、痛いほどの空気を漂わせている。

しまったと後悔してももう遅い。―――口から出てしまった言葉は、今更取り返しなど付かないのだ。

ホグワーツに来てから、私には『大人げ』という言葉が抜け落ちてしまったらしい。

。今なんと言った?」

怒りの為か震える声で、セブルスは私に問い掛ける。

・・・」

不安そうな面持ちで、隣に座るハリーとハーマイオニーが私の名前を呼んだ。

それに冷静さを取り戻して、私は1つ大きく息を吐き出すとセブルスを見据えて口を開いた。

「いえ、失言でした。申し訳ない」

素直に謝った私から、しかしセブルスは視線を逸らさない。

ハラハラと私とセブルスを交互に見る生徒たちを視界の端に映したまま彼の反応を待っていると、セブルスは微かに溜息を吐いて一言私に告げた。

「グリフィンドールから、5点減点」

それにハリーたちが驚いた表情を見せる。―――たった5点で済んだと、そう思っているのだろうか?

私はジッとセブルスの顔を見返して、そうして微かに口角を上げた。

いい度胸だ、セブルス。

この借りは必ず返させてもらおう。

そう、何時か必ず。

冗談交じりにそう心の中で呟くと、私を見据えていたセブルスがブルリと身を震わせた。

目が合うと精一杯睨みつけてくるが、目の奥に戸惑いの色が浮かんでいるのを確認する。

悪いが全然怖くないよ、セブルス。

「・・・授業を続ける!」

振り切るように私から視線を逸らして教科書に目を落としたセブルスに、私は小さく苦笑した。

悪いとは思っている。

こんな風に関わってしまったこと。

本来ならば、私が干渉すべきことではないのだから。―――それでも・・・。

それでもお前流の復讐が、私にとっては不本意なものだったから。

リーマスの心の闇を、こんな形で暴露して欲しくはなかったから。

これは、リーマスのせいではないのだから。

「・・・すまなかったな、セブルス」

誰にも聞こえないよう小声で謝罪の言葉を口にして。

教室に響く彼の声に、私は静かに耳を傾けた。

 

 

クィデッチ初戦の朝、私はいつも通りの時間に起床すると顔を洗って談話室に降りた。

談話室にはまだ誰も人がいない。―――いつもの賑わいとは反対に静まり返ったその場には、ただ強い風の音が響いていた。

そのまま窓際に歩み寄り外を見る。

荒れ狂うような風と、轟く雷鳴。―――こんな中を飛ばなければいけない選手たちを思うと、同情が生まれた。

せめて日をずらすなど出来ないのだろうかと思うが、こんな天候の日に試合が行われるのは今に始まった事ではないので、それは望めないだろうと思う。

「・・・?」

不意に背後から声がかかり、その声に聞き覚えがあった私は慌てずゆっくりと振り返った。

「おはよう、ハリー」

「おはよう。・・・ずいぶんと早起きなんだね」

「そうでもないさ。毎朝この時間には起床しているからな」

箒を手に持ったハリーが驚いた表情を浮かべて私の側に近づいてくる。

「毎日こんなに朝早く起きてるの?確かに僕たちが談話室に降りてくる時には、いつも起きてるなぁと思ってたけど・・・」

「習慣でな」

簡単に言葉を返すと、何故だか感心したような返事を返された。

そんなに驚く事だろうか?

そう思ったけれど、昔も今も私以外にこの時間起き出して来る人物はいないのだから、みんな早起きは苦手なものなのかもしれないと思う。

それにもし寝坊でもして誰かが部屋に起こしに来ると困る。―――夜は縮み薬を飲んではいないのだし、万が一本来の姿を見られでもしたら事だ。

ここにいる以上、気は抜けない。

2人で暖炉の前に移動し、パチパチと音を立てる炎をぼんやりと見詰める。

チラリとハリーの様子を窺えば、緊張の為か強張った表情をしていた。

いくら箒捌きに自信があるとはいえ、こんな嵐の中を飛ぶのはやはり不安だろう。

何とかしてやりたいとは思うが、これに関して私が出来る事など何もない。

そんな事を考えていると、ハリーは急に立ち上がり男子寮へと続く階段の方へと歩み寄った。―――部屋に戻るのだろうかと思っていると、ハリーは何かを抱えて呆れたような視線を私に向ける。

「また、だよ」

言葉と同時に、ハリーは腕の中でもがいているクルックシャンクスを私に見せた。

「他にもねずみはたくさんいるのに・・・どうしてスキャバーズを狙うんだい?」

話し掛けるように未だ暴れるクルックシャンクスに声を掛けて、男子寮から離れたところで解放する。

「ロンがあの猫の事を色々言うのは、確かに当たってると思うよ」

「・・・そうだな。確かに、どこか妙だな」

疲れ果てた口調で呟くハリーに、曖昧な返事を返しておいた。

おそらくは日頃からクルックシャンクスについての愚痴を聞かされているのだろう。

それでもハーマイオニーには悪いが、ロンの気持ちも解らなくもないと思う。

どうしてロンのねずみばかりを狙うのだろうか?―――何か目的があって、彼のねずみを追っているように感じるのは、果たして気のせいか?

そう言えばまだしっかりとロンのねずみを見せてもらった事がないことに思い当たる。

クルックシャンクスが気がかりで、ロンがねずみを自室から出さないからだ。

一度見せてもらった方が良いかと考える。―――もしかしたら、クルックシャンクスがロンのねずみだけを狙う理由が解るかもしれないし、それが解ればロンもハーマイオニーもクルックシャンクスのことで喧嘩をする事もなくなるかもしれない。

・・・・・・悪化する可能性もあるが。

「そろそろ大広間に行くか。この時間ならば朝食を取れるだろう」

再び暖炉の前に戻ってきて落ち着かない様子を見せるハリーにそう声を掛けると、そうだねと微かに微笑んで立ち上がる。

肖像画の穴を通って廊下に出ると、背後からカドガン卿の喚き声が聞こえて来た。

レディとは違い、彼はずいぶんと騒がしい。

なるべく早くレディが戻ってきてくれると助かるのだが・・・。

大広間にはまだ誰もいなかった。―――閑散としたグリフィンドール席について朝食を取っていると、クィデッチの他のメンバーも次々と姿を現し始める。

「やあ。おはよう、

「ああ。おはよう、ウッド」

挨拶を交わして席についたウッドは、見るからに無理をした笑顔を浮かべてハリーを見る。

「今日はてこずるぞ」

「オリバー、心配するのはやめて。ちょっとぐらいの雨はへっちゃらよ」

ウッドの隣に座った少女が諭すように言うが、ウッドにはどうやらその言葉は聞こえていないらしい。

「何か食べた方が良い」

そう言ってパンを差し出すけれど、彼はそれを手に取る余裕さえないようだ。

こんな状態では試合にはならないのではないかと、そんな事を思う。―――ハリーの話だと、彼は優勝が最大の目標だというから、緊張して当たり前なのかもしれない。

私はウッドに差し出したパンを皿に戻して、ふと妙に静かな事に気付いて視線を巡らせた。

いつもならば無駄に騒がしい双子はいないのだろうか?

そう思って巡らせた視線の先に、テーブルについてはいるもののうつらうつらしている双子の姿があった。

「・・・流石だな」

彼らは大物になるだろう・・・。

そんな事を、思った。

 

 

試合は想像を絶するものだった。

風に煽られて叩き付けられた雨は痛いほど。―――観戦している私たちでさえそう思うのだから、箒に乗っている選手たちはそれ以上だろう。

雷鳴が轟き、何時落ちても可笑しくないほどだ。

こんな中で試合をするなど、自殺行為も良いところだと思う。

「ああ!がんばって、ハリー!!」

「危ない!!」

隣でハーマイオニーとロンが心配そうに声を上げる。

その声に導かれるように、私も上空のハリーを目で追った。

雨で視界が悪い中で、ハリーを見つけるのは容易いことではない。

漸く見つけたハリーを見失わないよう必死になっている私の目に、ハリーが一瞬動きを止めたように映った。

目を凝らすとどこか一点を見詰めているように見える。―――何があるのだろうかと視線を辿っていくと、タイミング良く辺りを照らした雷鳴にその光景が浮かび上がった。

クィデッチ競技場の端。

人気がないそこに、それはいた。

反射的にそちらに向かい駆け出す。―――ハーマイオニーの驚いた声が聞こえたけれど、立ち止まっている暇はなかった。

階段を駆け上り、最上階につくと慌てて辺りを見回す。

「待て!!」

私が来ている事に気付いたのだろう。―――その黒い大きな犬は、素早い動きで競技場の出口へと走っていく。

声を掛けても振り返らない。

名前を呼ぶ事は躊躇われた。

風の音が酷いとはいえ、誰にも聞きとがめられないとは限らないのだから。

「待てと言っている!!」

声を張り上げて再び駆け出そうとした私は、けれど風の音をも裂く悲鳴によって阻まれた。

足を止めて悲鳴のした方を見る。

生徒たちが見詰めている一点に、黒く蠢く生き物がいた。

「何故あいつらが!?」

反射的に杖を構えて身を翻し、私は今通ってきた通路を逆走する。―――黒犬を追いかけている場合じゃなかった。

そのままの勢いでフェンスを飛び越え、競技場のグラウンドで蠢いている影、吸魂鬼に杖先を向ける。

「何故ここにいる!ホグワーツ内には立ち入り禁止だと言っておいただろう!!」

声を張り上げるが、吸魂鬼は私の言葉を無視し頭上を見据えていた。

「きゃあああああ!!」

悲鳴が一際大きくなり、私は躊躇う事無く呪文を解き放った。

「エクスペクト・パトローナム!!」

杖先から銀色の気体が飛び出す。―――それは鋭い牙を持つ獣の形を取って、吸魂鬼に襲い掛かった。

蜘蛛の子を散らすように逃げていく吸魂鬼たちの姿を見送りながら、私は息を吐いて頭上を見上げる。

それと同時に黒い影が落ちてくるのが見えて、咄嗟に杖を構えていた。

「ハリー!!」

呪文で競技場に生える芝生を急成長させ、クッションを作り何とかハリーを受け止める。

慌てて駆け寄るが、ハリーに意識はない。

何もないところに落ちるよりはましだっただろうが、あれだけの高さから落下するには心もとないクッションでもある。

私は魔法でハリーの身体を浮かせると、慌ててこちらに駆け寄ってくる教授らに向かって声を張り上げた。

「早く、ハリーを医務室へ!!」

 

 

ハリーを医務室へ運んだ後、私は気付かれないようソッと外に出た。

私の行動については、何とか誤魔化せたと思う。―――使った魔法などについて質問をされたが、親に教えてもらったと言えば呆気なく納得してくれた。

大きく溜息をついて、濡れて顔に張り付いた髪を掻き上げる。

意識が戻った後、ハリーはグリフィンドールの敗北を聞かされる事になるのだろう。

そして彼の箒が、壊れてしまった事も。

慰めの言葉など思い浮かばない。―――ハリー自身がそれを望んでいるとも思えなかった。

どうして吸魂鬼があの場にいたのかは、容易に想像がつく。

おそらくは先日のシリウス侵入の件について。

捜索すら拒否された彼らは、当然怒っているだろうとは思っていた。―――止められなかったのは、私の責だ。

もっと強行に諌めておけば良かったのだ。

例えそれが私のやり方に反するものだとしても。

「後でアルバスに謝罪に行かねばな」

それで済む問題ではない事は、承知しているけれど。

そして・・・一番気がかりなのが、競技場で見たあの黒い犬。

ハリーが死神犬と間違えても仕方がないと思える、あの風貌。

遠目で視界が悪かったとはいえ、あれは確かに・・・。

「・・・シリウス」

溜息混じりに、奴の名前を呟いた。

お前は一体何を考えている?

何が目的で、ここに現れたんだ?

私を見て、何故逃げる?

追いかけられなかったことが悔やまれた。―――捕まえてすべてを吐かせたかったのだけれど。

!!」

突然名前を呼ばれ顔を上げると、廊下の向こうから必死の形相でこちらに駆けてくるロンとハーマイオニーの姿が見えた。

「ハリーは!?」

「中だ。今はまだ意識はないが、直に取り戻すだろう。側にいてやれ」

「・・・は?」

「私は少し用事を思い出したのでな。すぐに戻る」

困惑する2人に安心させるようにと微笑みかけて、私は静かに廊下を歩き出した。

ハリーの側にいてやりたいとは思うけれど、先に吸魂鬼の方を何とかしなければならない。

城の外に出て、打ち付ける雨に身を晒して小さく笑う。

私から逃げた事・・・存分に後悔すると良い、シリウス。

この借りは、12年分の想いを込めて返させてもらおう。

「覚悟しておくんだな」

小さくポツリと呟いて、その時になれば見れるだろうシリウスの強張った表情を思い浮かべる。

当然の報いだと思う傍ら、それとは違う会いたいという気持ちを抱きつつ、私は灰色の空を無言で見上げた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

最初無駄な話ばっかり入れてると思いきや、最後のメイン部分が凄い急展開。

かっこいいヒロインを目指しました。

そうなってるかは、別ですが。(笑)

作成日 2004.9.17

更新日 2009.3.22

 

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