潮風に身を晒しながら、はユラリユラリと揺れる船上から遠くへと視線を飛ばす。

つい先日、戦場で見た懐かしい顔は、彼女にとっては衝撃的なものだった。

もう二度と会う事はないと思っていた人物との再会。

それもまさか、戦場でそれが成されるとは思ってもいなかった。

「・・・異能者、かぁ」

最近可決されたという、異能者捕縛適応法。

きっと彼もそれが原因で捕まったのだろう。―――改めて思えば、彼の身体能力は常人のものとはかけ離れている。

そうして、自分もまた・・・。

自分は適応法が可決される前、いわば試験的に捕らえられたようなものだけれど。

「・・・スパーダ、無事に逃げられたかなぁ?」

特別要領が悪いわけではないが、何かと自分から騒動を引き起こす彼の事である。―――今も騒動に巻き込まれていないとは言い切れないが。

そこまで考えて、は小さく笑みを零す。

忘れたと思っていたけれど。

顔を見れば、次々と思い出す。

彼と過ごした、長くも短い日々を。

 

 

過去へ想いを馳せて

 


記憶の底に眠るもの。

作成日 2008.2.18

更新日 2008.6.6

 

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