支配人室で顔を揃えた、ラチェット・サニーサイド・サジータ・昴の4人は、これからのことについて話し合っていた。

ラチェットがに接触する事が計画の第一歩なのだけれど、予想外にそれを阻まれ身動きが取れない状態だ。

加山の言う通り、が任務で行方知れずなのかどうかは解らない。―――しかし加山のあの態度から推測するに、自分たちの思惑がバレているのは間違いないとラチェットは思う。

だから、彼を通してに会うのは難しいだろう。

「まずはを見つけるのが先決ね。彼女が紐育にいるのは間違いないのだから」

1つため息を吐き出して、ラチェットはそう提案する。

かくして、サジータと昴に捜索命令が下された。

 

サムライ捜索網

 

ROMANDOの倉庫で在庫整理をしていたは、動かしていた手を止めて深く一息吐き出した。

とりあえずこの間運んできたダンボールを端に寄せて、以前取り寄せた品の中身を確認しながらチラリとドアの方へ視線を向ける。

当分の間は店に出なくていい・・・―――そう加山に言われたのは、もう一週間も前の事。

その理由を聞いても答えてはくれず、もう諦めて問いただすつもりはにもなかったが、やはり気にはなる。

それ以来、加山の様子が少しだけ可笑しい事も気になる理由の1つだ。

休憩がてらダンボールの上に腰を下ろして、自分が何かしたのだろうかと思案する。

これといって何かをしたわけでもないのだけれど・・・―――そんなことを思いながら、加山の様子が変わった一週間前に思いを馳せて、そうしてふと閃く。

もしかすると、あの事が原因なのだろうか?

加山に頼まれ港に荷物を受け取りに行った際、やむなく悪念機と戦闘になったあの日。

時期的にもちょうど合う事だし、おそらくは間違いないだろう。

問題はその理由だ。

隠密部隊として影に身を潜めなければならない自分が、予想外に目立ってしまったことが原因なのか。

それとも、あの場で紐育華撃団・星組と遭遇してしまったのが原因なのか。

もし原因が前者ならば、今のように人の記憶が薄れるだろう少しの間表に出なければ事は済む。―――しかし後者ならば、また話は違ってくるだろう。

どういう理由で後者が原因になるのかは解らないが、もし後者が原因なら加山は今紐育華撃団と揉めている・・・とまではいかなくとも、何らかの諍いがあることは間違いない。

月組の隊長として、日本の外交官として、加山の立場が悪くなるのはにとっては不本意だ。

何らかの問題が生じているのなら、出来れば自分が赴き罰なり何なり受けたいところだけれど、現状がはっきりしない以上は勝手な行動は慎むべきだとは考える。

これ以上加山に負担を掛けたくはない。―――ただでさえ、今の自分は店番や在庫整理くらいしか役に立てていないのだから。

考えていてもあまり楽しくない事ばかりで、自然との口からはため息が漏れた。

「今日はこれくらいにしておこうかしら・・・」

誰に言うでもなくそう呟いて、チラリと壁に掛かっている時計に目をやる。

昼過ぎ夕方前という中途半端な時間だが、早すぎるということも無いだろうと自分自身に言い聞かせ、手についた埃を軽く払うと倉庫を出た。

そのまま店の方へと進み、店内に誰もいないことを確認してカウンターに座って暇そうにしている加山に声を掛ける。

「ずいぶんと退屈そうですね、加山さん」

「んあ?ああ、か。・・・そんなことないぞ。さっきまで客が1人いたしな」

声を掛けると、ちょうどあくびをしていた加山が驚いたようにを見上げる。

そうして誤魔化すように頭を掻く加山を見て、は小さく微笑んだ。

「大丈夫なんですか、このお店。あまり繁盛しているようには見えませんけど・・・」

「良いんだよ。一日平均3人はお客がいるんだから。ちょうど良いくらいだろ?」

ニヤリと口角を上げてそう言う加山を見返し、苦笑を浮かべる。

確かに月組本部のカモフラージュには最適な環境だ。―――ただし、加山の言葉は一経営者としては誉められたものではなかったが・・・。

そんな遣り取りを少しだけ楽しんでから、は加山に本題を切り出した。

「加山さん。私は今から出かけてきますけど、何か御用はおありですか?」

「・・・出かけるって、何処に?」

「夕飯の買出しです。ここ一週間の間、買物に行ってませんでしたし・・・もう今日辺りが限界かと」

元々冷蔵庫いっぱいにあった食材は、ここ一週間の間でと加山の2人で食べ尽くしてしまっていた。―――加山の部屋の冷蔵庫に何かあれば良いが、食事は全てのお世話になっている加山の冷蔵庫にはあまり期待は出来そうに無い。

「そうか・・・仕方ないな。頼む」

「了解しました」

返って来た了承の言葉に笑みを浮かべて、は1つ頷いて財布を取りに部屋に戻る。

その背中を見送って、加山は少しばかり感じる不安をため息と共に吐き出した。

出来れば自分が行きたいところなのだが、そうなると店番がいなくなる。―――まぁ客など滅多に来ないのだから店番は必要ないかもしれないが、月組の隊員が急ぎの報告を持ってこないとも限らない。

に店番を任せれば、それこそ再びラチェットが尋ねてきた時厄介だ。

買物に行かせるか、店番を任せるか。―――どちらかを選ぶのなら、まだラチェットに会う可能性が低い買物に行かせる方が無難だろう。

「・・・まいったな」

小さく呟いて、カウンターに頬杖を付く。

このままの状態を長く続けることなど出来ない事は、十分すぎるほど解っていた。

何時までもを閉じ込めておくわけにはいかない。―――ラチェットだって、このまま諦める気は毛頭無いだろう。

何とかしたいが・・・生憎とその良い方法が思い浮かばない。

「では、行って来ます」

「ああ、行ってらっしゃい。気をつけてな」

財布を取ってきたが、加山に挨拶をしてから店を出る。

視界から消えていくを見詰めて。

「・・・何も起こらなきゃ良いけど」

小さく呟いた願いが、聞き入れられるかは解らないけれど。

 

 

店を出たは、人の多い通りをブラブラと歩く。

まず何から買おうか・・・と考えて、目的の食材はどれもかさばり荷物になるものばかりだという事に気付き、とりあえず何処でも良いかと近くのパン屋を目指した。

日用品なども補充をしておきたいところだけれど、今日のところは諦めた方が良さそうだとそんなことを考えながら、手近にあったパン屋のウィンドウを覗く。

ここ紐育では、日本食に必要な食材などそう簡単に手には入らない。

そもそも主食の米さえそこらでは売っていないのだ。―――マリアたちが気を遣ってちょこちょこと定期的に送ってくれるので全く食べられないという事はないが、それでも日本で暮らしていた頃とは比べるべくもない。

なので自然と食卓に並ぶものは、欧米風になる。

無性に日本食が恋しくなる事も少なくは無いが、それは仕方がない事だと諦める他なかった。―――紐育に来てからの主食は米からパンになり、そうなれば出来るだけ美味しいパンを食べたいとそう思うのだけれど・・・。

初めて立ち寄る店を窓越しに見詰めて、は並ぶパンを見比べる。

どの店もそれなりには美味しいのだけれど、特別気に入るような店はまだ見つけることは出来ていない。

紐育に来てからそろそろ一月近く経つけれど、どの店も似たり寄ったりに思えてしまう。

「この店はどうかしら・・・?」

香ばしい香りを嗅ぎながら、無意識の内に漏れた言葉。

当然返事など返ってくる筈が無いというのに、それは彼女の背後から掛けられた。

「その店よりも、通りを1つ先に行った所にあるパン屋の方が美味しいよ」

少し低めの、落ち着いた声。

反射的に振り返ったの目に映ったのは、自分よりも幾分か背の低い・・・―――この街では当たり前だがそうは見かけない、日本人だった。

その人物は、と目が合うと悠然と笑みを浮かべる。

少年とも少女とも判断が付かないその人物を、はどこかで見たことがあるような気がして、表情には出さずに探るようにその人物を見詰めた。

「そう。・・・ありがとう」

「どう致しまして」

短く礼を告げれば、相手も短く返事を返す。

すぐにその場を立ち去れば良いのに、は何故だか動く事が出来なかった。

自分に向けられる眼差し。―――それは何かを語っているようで・・・。

「・・・君を探していたよ。

沈黙が2人の間を支配する中、その人物・・・―――九条昴はゆっくりと言葉を紡ぐ。

投げかけられた言葉と呼ばれた自分の名前に、は微かに眉を顰めた。

「・・・貴方は」

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は九条昴だ」

「九条・・・昴?」

聞き覚えのある名前に、は更に眉間に皺を寄せた。

その名前を何処で聞いたのかを思案し、そうして思い当たったそれに軽く目を見開く。

紐育に来て間もない頃、紐育華撃団の資料を読んでいた時にその名前はあった筈だ。

紐育星組の隊員であり、またかつての欧州星組にも在籍していた人物。

そして・・・―――は唐突に理解する。

一週間ほど前にウォール街で遭遇した際、自分に注がれていた視線の主は、目の前の人物なのだと。

そんなの考えを見透かしているかのように、昴は変わらず笑顔を浮かべたままゆっくりと口を開いた。

「先日も会ったね・・・、ウォール街で」

その言葉に、の心臓は微かに鼓動を早くする。―――しかしそれすらも押さえ込み、傍目からは何の変化もない様子でも微笑を浮かべた。

「そう?私は貴方に会うのは初めてだけれど・・・。誰かと間違っているのでは?」

「間違っていない。昴は君を探していた」

キッパリと言い切った昴に、は表情を崩さずに小さく首を傾げる。

「さっきも同じ事を言っていたわね。私に何か御用でも?」

「僕の上司が君を探している。一緒に来てはくれないか?」

単刀直入に切り出された話に、の眉がピクリと動いた。

ほんの少しの動揺。

やはり、加山が自分を表に出さなかったのは、紐育華撃団がらみだったのだと理解する。

その理由は気になったけれど、今ここで昴に付いて行けば加山の努力も無駄になる。

何よりも、現状が解らない状態でのことに、要求に応じるつもりはにはなかった。

「残念だけれど・・・知らない人に付いて行くほど幼くはないのよ、私は」

「・・・僕たちを知らない、と?」

「ええ。だって、私たちは初対面でしょう?」

お互い笑顔を浮かべながらも、腹を探り合う。

そんな中では、昴は一筋縄ではいかない相手だと直感する。―――そして昴も、ラチェットの言った『はそう簡単に思い通りになってくれる相手ではない』という言葉の意味を理解した。

「それじゃあ、用事があるので私はこれで。・・・パン屋さん、教えてくれてありがとう」

あまり長居するのは得策ではないと踏んで、は早々にその場を立ち去る事に決めた。

踵を返し、昴に背を向けて歩き出す。

遠ざかる背を見詰めていた昴は、に向けて声を掛けた。―――それは決して大きくは無い声だというのに、しっかりとの耳に届く。

無視するのも気が引けてゆっくりと振り返ると、昴は先ほどまで浮かべていた笑顔を消し、真剣な面持ちで同じように笑みを消したを見据えていた。

「昴は言った。君は僕が何者で、何故君を探しているのかを知っている筈だ、と。なぜならば君は、僕たち側に属する人間だからだ」

昴の決して大きくはないその声は、しかし強くの耳に響く。

その言葉に目を細めて、ただ強い眼差しで昴を見詰め返した。

何故、紐育華撃団が自分を探しているのか?―――心当たりはないとそう自分に言い聞かせてはいたけれど、本当はその理由に心当たりがないわけではなかった。

それは昴の態度と言葉で確信に変わる。

けれどそれは決しての望むことではなくて・・・―――だからも昴と同じく強い意志を込めて口を開いた。

「私は、何があってもそちら側には行かない。それだけの理由が、私にはあるから」

静かな声色に、昴も微かに眉を顰める。

ざわめく雑踏の中、立ち止まる2人を通り行く人たちが訝しげに眺めていく。

それを目の端に映しながら、昴はゆっくりとした足取りでに近づいた。

「昴は問う。何故そこまで拒むのか、と」

「・・・・・・」

「帝国華撃団・月組。―――それが理由か?」

こそりと間近で囁かれた言葉に、の身体がピクリと反応を示す。

昴が顔を上げると、予想以上に強い眼差しがそこにはあった。

数秒間見詰め合った後、は何も言わずに昴に背を向け歩き出す。

昴はため息を零したけれど、が立ち止まる気配は無かった。

 

 

昴と別れた後、は何事も無かったかのように買物を続けていた。

正直気分は重かったけれど、買物をしないことには今日の夕食とてままならない。―――それに何かをしていた方が気が紛れる。

もやもやとした気分のままで買物をしたせいか、予定よりも買いすぎてしまった食材を両手に抱えて、は深いため息を吐く。

向こうが何を望んでいるのかは、不本意ながら確信出来てしまった。

それに応える気は無いが、かつて米田に打診された時同様、簡単に断れる話ではないこともは理解している。

厄介な展開になったものだと、自分が撒いた種なのにも関わらず更にため息が漏れた。

その時僅かにバランスを崩してしまったのか、紙袋の一番上に不安定に乗っていた林檎が飛び出し、軽い音と共に地面を転がる。―――それを慌てるでもなく見詰めて、漸く動きが止まると面倒臭そうにそれに手を伸ばそうとして・・・。

しかしが林檎を拾い上げる前に、誰かの手が素早くそれを掴んだ。

伸びた手を視線で辿ると、目の前に背の高い綺麗な女性が1人。

「ずいぶんと重そうな荷物だね。手伝ってあげようか?」

唐突に申し出られた提案に、は訝しげに女性を見詰める。

その視線を受けて、女性はからかうように笑みを浮かべた。

「あんたに話があるんだ。ちょっと付き合ってくれないかい、さん」

昴と同じ申し出に、知らず知らずの内にはまたもやため息を吐く。

先ほどの昴との出会いのお陰か、女性が何者であるかはすぐに察しがついた。

かつて見た資料の中に、昴と並んで彼女の情報もあった筈だ。

またなの・・・と心の中で呟いて、威嚇するように女性。・・・―――サジータを見上げる。

「残念だけれど、話し合う事は何も無いわ。さっき貴女の仲間に伝えたけれど、私は貴女たちの元へ行く気は無いの」

キッパリと言い切って、素早く林檎を受け取るとサジータの横をすり抜け早足で歩き出す。

制止の声が掛かるけれど、今度は律儀に聞いてやるつもりはには無かった。

どれほど言葉を並べても、相手が納得するとは思えなかったからだ。

後ろを追いかけてくる気配を感じながら、ただひたすら歩みを進める。―――しかし荷物を持っている分の方が歩みが遅く、あっという間に追いつかれ腕を掴まれた。

「ちょっと待ちなって!あたしの話も聞きな」

「聞くだけなら構わないわ。ただ・・・私に応える気がないということを前提として、それでも話したいなら聞きます」

取り付く島もないの態度に、サジータも一瞬で頭に血が上る。

更に強い力での腕を掴み、しかし話の内容が内容だけに少し声を潜めて唸るようにの耳元で口を開いた。

「どうしてだ!?生身で悪念機に立ち向かう位だ。怖いわけじゃないだろう!?」

「・・・そういう問題ではないわ」

「なら、どういう問題なんだ!力があるのに、どうしてそれを使おうとしない!!」

耳元で響く声色を押さえた怒声に、の眼差しも少しだけ強いものに変わった。

自分よりも少し高いサジータを睨み上げるように見詰め、掴まれた腕を乱暴に払う。

「私には、何よりも大切なモノがある。それを失わない為に、貴女たちの申し出に応える訳にはいかない」

「・・・なんだよ、それ」

「貴女にだってあるでしょう?何を犠牲にしても失いたくないものが」

全てを見透かすようなその眼差しと言葉に、サジータは思わず口を噤んだ。

それを肯定だと判断して、はふとサジータから視線を逸らす。

「もう私に構わないで」

冷たく言い放ち、荷物を抱えなおしてその場を去った。

サジータが追ってくる気配は、もうなかった。

 

 

日の暮れた支配人室で。

昴とサジータの報告を聞いたラチェットは、落胆に肩を落とした。

一筋縄ではいかないとは思っていたが、まさかこれほどまでに拒絶されるとは思っていなかった。―――事実、2人から聞いたの話は、かつて自分が関わっていた時のとは別人のように思えた。

はぁ、と重いため息を吐き出して、テーブルの上の写真を見詰める。

昴が撮影したものとは違い、正式に書類として用意されたそれは、かつてのの姿をそのまま映し出している。

昴がの尾行を試みたらしいが、さすが隠密部隊の副隊長を務めるだけはある。―――いつの間にか撒かれてしまい、結局今もの所在は解らないまま。

このまま街を探し回り、見つけて説得という方法も考えるまでも無く無駄足に思えて、打つ手なしかとラチェットはお手上げとばかりに天井を見上げる。

けれどそう簡単に諦めることなど出来なかった。

これが最後であり、最善の方法なのだ。―――例えが拒絶していたとしても、なんとしてでも協力を得なければ。

そう思案していた時、支配人室のドアが控えめにノックされ、ラチェットは反射的に返事を返した。

それを待ってドアが開かれ、掃除道具を抱えたジェミニが姿を見せる。

「あの〜、支配人室の掃除に来たんですけど・・・」

ああ、もうそんな時間かとラチェットは時計を見る。

そろそろ公演の準備を始めなければならない時間だ。―――考えなければならない事は山ほどあるが、まずは舞台を済ませなければ。

「ご苦労様。ここお願いね、ジェミニ」

「はい」

努めてなんでもないかのように微笑み、ジェミニの横をすり抜けて部屋を出ようとする。

しかしちょうどドアを抜けようとしたラチェットの耳に、ジェミニの驚いた声が聞こえてラチェットは何気なく振り返った。

その先では、箒を片手に持ったジェミニが、驚いた様子でそのまま放置されていたの写真を見詰めている。

「・・・どうしたの?」

「え?あ、いえ・・・なんでさんの写真があるのかなと思って・・・」

問いかけたラチェットに対し、ジェミニは困ったように笑いながらそう答えた。

しかし何の躊躇いも無く出てきたの名前に、ラチェットは驚きに目を見開く。

のことを知っているの?」

「え?あの・・・」

「答えてちょうだい。どうして知っているの?」

いつものラチェットらしからぬ様子に戸惑いつつも、ジェミニは言われるがままにの事を話した。

ROMANDOという日本の品を売っている店で会った事。

そこで店員をしていると、店に通う内に親しくなったという事。

それらの話を聞き終えて、何事かを思案するラチェットを見上げたジェミニは、次の瞬間向けられた眼差しに言葉を飲み込んだ。

「ROMANDOでに会ったのね?そこで店員をしている、と?」

「はい。そうです」

「そう・・・」

思わぬ所から得られた情報に、見通しの悪かった道が照らされたような気分を抱く。

「ジェミニ。あとで・・・私に付き合ってくれないかしら?」

先ほどまでとは違う、いつもの優しい微笑みを向けられたジェミニは、訳が解らないままその申し出を承諾した。

一体なんなのだろうと思いつつも、暗い表情を一転させたラチェットにジェミニも思わず安堵の息を漏らす。

「これで言い逃れはさせないわ」

傍にいるジェミニにさえも聞こえないほど小さな声で呟いたラチェットは、公演の準備を整える為軽い足取りで支配人室を出る。

ともかく、全ては舞台を終えてから。

燃えるような闘志を胸に、ラチェットは楽屋へと向かった。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

とりあえず一通り出してみよう・・・と思ったら、サニーサイドが出てなかったり。

まぁ、彼は後々出番があるので良いかと開き直り。

昴の出番が一番多いのは、やはり愛ゆえ。

サジータが何げに扱い酷いのは、気にしない方向で。(いや、サジータ凄い好きですよ)

作成日 2005.8.19

更新日 2009.9.27

 

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