驚いたようなマーテルの声を背中に、クラトスは家を飛び出した。

胸に湧き上がる不安を抑える事が出来ず、自然と表情は強張っていく。

「あれ?どうしたの、クラトス?」

途中、今日の稽古を終えたミトスがただならぬ様子のクラトスを見て声を掛けるけれど、生憎とクラトスはそれに答えるだけの余裕は無い。

どうか、無事でいてくれ。

ただそれだけを願いながら、クラトスは深い森の中に駆け込んだ。

 

の唄にはまだ遠い

〜後編〜

 

森の中を疾走していたクラトスは、ふとあることに気付きその足を止めた。

彼の前に続くのは、人里へと向かう獣道。

しかしその獣道を遮るように生える草木に、人が通った後が無い事に気付いたのだ。

普段から半年に一度という頻度でしか使われないこの獣道は、当然必要もないので開拓されてなどいない。―――誰かが通れば、すぐにそれが解る。

「・・・街に行ったのではないのか?」

暫く呆然と立ち尽くし考え込んでいたクラトスは、漸くその結論に達する。

しかしだからといって、の居所が解った訳ではない。

クラトスは踵を返すと、再び森の中を今度は当ても無く歩き出した。

街に行ったのではないのなら、の身にそれほど危険性は感じない。―――このまま家に戻っても良いのだが、一度湧き上がった不安はそれほど簡単に消えてくれるものでもなく、こうなったからには無事な姿を一目でも見ない事には安心など出来なかった。

今度は頻繁に使われているお陰でしっかりと開拓された細い道を歩きつつ、クラトスは注意深く辺りの様子を窺いながら歩く。

マーテルが捜索した後なのだから、何時もの場所に行ってもいないのは確かだ。

ならば今日は一体何処にいるのだろう?

残念ながら、自分に問い掛けた言葉に明確な答えは無い。

仕方なく今いる場所から一番近い、この辺りでも一番大きな木へと向かう。

数分もしない内にその木の元まで辿り着くと、目を凝らして木を見上げた。

しかしたくさんの葉で覆い隠されたそこに、の姿はない。―――彼女の黒い上着の影さえも見えない。

そもそもマーテルでさえ見つけられないを、自分が見つける事が出来るわけが無いのだと、クラトスは重いため息を吐き出した。

見晴らしの良い崖の上。

近くを流れる綺麗な川のほとり。

そんなみんなが知っているような場所くらいしか、心当たりは無い。

最近では側に居る事が増えたとはいっても、まだまだ知らない事の方が多いのだ。

クラトスは再び大きくため息を吐き出して、ゆっくりと辺りを見回した。

広い広い森の中。

主に生活する家の周辺の外に広がる深い森の中に、クラトスは足を踏み入れたことが無い。

それほど広い森の中で、たった1人の者を見つける事など不可能だと思えた。

それに比例して、不安もどんどんと際限なく湧き上がってくる。

もうこのまま、二度と会えないのではないかという考えまで脳裏を過ぎって、クラトスは自嘲するように笑みを浮かべた。

いつだって辺りが闇に染まる頃、何食わぬ顔をして戻ってくるというのに・・・―――それを知っているにも関わらず、何故そんな考えに襲われるのだろうか。

を捜しに行く当ても無く、だからといって家に帰る気にもなれず。

ただその場に立ち、木に背中を預けてぼんやりと森の中を見詰める。

その時唐突に、どこかで葉が鳴った音が聞こえた。

 

 

ガサリと一際大きく草を掻き分ける音が聞こえ、反射的に振り返ったクラトスの目に映ったのは、不思議そうに軽く目を見開いたの姿だった。

突然の出来事に、クラトスの身体が瞬時に固まる。

これはなんだろうか?―――まさか白昼夢でも見ているのではないか?

つい先ほど見つける事など不可能だと思った相手が、唐突にあっさりと姿を現したのだ。

クラトスがそんな思いに襲われても、仕方が無いだろう。

「・・・クラトス?こんな所で何をしてるの?」

訝しげに小さく首を傾げてクラトスの前まで歩いてきたは、呆然と自分を見下ろすクラトスの顔を見上げる。

「・・・

「なに?」

「・・・・・・」

「呼びかけておいて、黙り込むのはやめてよ」

今度は呆れたような表情を浮かべて、未だ呆然とするクラトスの顔の前で手をヒラヒラと振った。―――それを咄嗟に掴んで、その存在を確かめるように強く握り締める。

「・・・クラトス?」

・・・・・・だな?」

「・・・私以外に、一体誰に見えるって言うの?」

相変わらず素直な受け答えをしないを凝視して、目の前の人物が確かに自分が捜していた者だということを確信したクラトスは、漸く安心したように息を吐く。

「・・・怪我は無いか?」

「怪我?」

「そうだ。どこか痛いところなどは・・・」

突然のクラトスの問い掛けに、は訝しげに眉を寄せて聞き返す。―――しかしどうやら聞き間違えではない事を知り、掴まれていない方の手でクラトスの額に触れる。

「・・・熱でもあるの?」

「熱など無い。何故そのような心配をするのだ」

「そう思われても仕方ないほど可笑しな質問してるって事に、どうして貴方は気付かないのかしらね」

呆れたように呟くクラトスに、も同じような口調で言葉を返す。

その時漸く・・・本当に漸くクラトスは冷静さを取り戻し、の身に危険が迫っていると思い込んでいた自分に気付いて、ばつが悪そうに視線を逸らした。

そんなクラトスの仕草を見詰めながら、はまたもや不思議そうな表情を浮かべる。

「一体どうしたのよ、クラトス。貴方今日、少し可笑しいわよ?」

「いや・・・」

の問い掛けに言葉を濁して、クラトスは視線を泳がせる。

明らかに何かがあったのだと解るその仕草に・・・―――しかし肝心の何があったのかが解らず、は諦めたようにため息を吐いた。

まぁ別に、何でも良いんだけど・・・と心の中でひっそりと呟く。

目の前のクラトスの様子を見る限り、それほど重大な何かがあったようには思えない。

ならば無理に聞き出す必要はないだろうと結論付けて、未だ掴まれたままの手に視線を向けた。

強く握り締められているせいで、少しだけ痛い。

しかしその手は少し汗ばんでいて、クラトスが何か焦っているのだろう事が解り、もしかしたらそれが自分に関係する事なのかもしれないと思えて、だからこそ手を離して欲しいとも言い出せない。

それに、こうして手を握られている事が嫌なわけでもないのだ。

どうしたものかとが小さく苦笑を浮かべた時、視線を彷徨わせていたクラトスが唐突にを見据えて口を開いた。

「今まで、一体何処にいたのだ?」

投げかけられた問いに、は意外に思って微かに目を丸くする。

今までそんな問い掛けをクラトスからされたことは一度も無い。―――今までが何処に居たとしても、彼がそれを気にするような素振りは見えなかった。

あくまでそれはが気付かなかっただけであり、クラトスにしてみればいつも気になっている事ではあるのだけれど・・・。

「何処って・・・どうして?」

「ど、どうし・・・―――マーテルがお前を捜していたみたいだからな」

反対に問い返されて、クラトスは一瞬口ごもった。―――が街に出て人間に暴行を加えられているのではないかと心配になったなどと、本人を前にしてクラトスに言えるはずもない。

少しだけ考え込み、すぐにマーテルのことを思い出して、それを口実に使わせてもらう事にした。

「マーテルが?」

「お前に料理を教える約束をしていたと言っていたが?」

不思議そうに問い返すに向かい、少しだけ平静を取り戻したクラトスが先ほどの出来事を思い出してそれを伝える。―――するとは、目に見えて表情を曇らせた。

そんな顔をするほど、料理をするのが嫌なのだろうか?

そういえば、確かに今までが料理どころか家事をしているところを見たことが無い事実を思い出す。―――マーテルの話ではは家事が得意ではないという事だったけれど、もしかしたらただ好きではないだけなのかもしれない。

「・・・マーテル、まだやる気だった?」

「ああ、気合十分だ」

「それじゃ・・・やっぱりこのまま帰るわけにもいかないか」

このまま帰れば料理の練習をさせられることは目に見えている。

それが嫌でこうして逃げてきているというのに、今帰ればそれまでの抵抗が水の泡だ。

ポツリと呟いた後、何事かを思案するを、クラトスは無言で見下ろした。

一体何を考えているのだろうかと考えていると、不意に俯いていたが顔を上げて悪戯っぽい笑みを浮かべると口を開く。

「クラトス。貴方さっき、今まで何処にいたのかって聞いたわよね?」

「ああ」

クラトスの短い返事に、はにっこりと微笑んで。

掴まれたままだった手で、反対にクラトスの手を握り返す。

その動作に思わず顔に血が上ってしまいそうで、クラトスは再びから視線を逸らした。

咄嗟のことでもあったし、自分から握るのは平気でも、こうしてから握り返されれば嫌でも意識してしまう。

しかしはそんなクラトスの様子に気付く事も無く、そのままクラトスの手を引いて森の中を歩き始めた。

「・・・?」

「良いから良いから」

一体何が良いのか・・・―――それを聞き返したかったけれど、しかしの楽しそうな笑顔を見ているとそんな気も失せてくる。

「何処に向かっているんだ?」

「それは着いてのお楽しみ」

あっさりとはぐらかされ、クラトスは困ったように微笑んだ。

自然と目は繋がれた手に移る。

そこから感じる温かい体温と、確かな存在感。

先ほどまでの不安が嘘のように晴れていくのを感じながら、クラトスはただ引かれるままにについて歩いた。

 

 

「はい、到着」

変わり映えのしない森の中を、他愛無い会話を楽しみつつ歩いていたクラトスは、のその声と同時に目の前に広がった景色に絶句した。

森の中とは思えないほど広い空間の中に咲き誇る、色とりどりの花。

噎せ返るような花の香りが、幻ではないのだと証明している。

思わずの方を振り返ると、当の本人は驚いた様子のクラトスを見上げてニコニコと嬉しそうに笑っていた。

「綺麗でしょう?」

誇らしげに問い掛けられ、クラトスは言葉もなくただ頷き返す。

今までこの森で生活をしてきて、こんな場所を見たのは初めてだった。

確かに花が咲いているような場所はあったけれど、ここまで見事な花畑は他に無い。

「ここはね、私が一番好きな場所なの」

にっこりと微笑みながら、は誰に言うとも無く呟く。

その笑顔は本当に嬉しそうで、思わずクラトスの表情も柔らかくなる。

「よくここに来ているのか?」

「ううん。あんまり」

「・・・?何故だ?一番好きな場所なのだろう?」

即座に返って来た予想外の返事に、クラトスは不思議そうに首を傾げた。

けれど確かに、がいつもいる場所は決まっている。―――その何処にもいないことは稀で、おそらくはその稀な時にここを訪れているのだろうと推測できる。

何故一番好きな場所なのに、頻繁にこの場に訪れないのか。

そんな疑問を抱き問い掛けると、は笑顔のままクラトスから視線を花畑へと移した。

「だって頻繁にここに来たら、みんなにバレちゃうでしょう?」

悪戯っぽく肩を竦めて呟くに、クラトスが意外そうに目を見開く。

「マーテルたちは、この場所を知らないのか?」

「うん、知らない。教えてないからね」

「・・・・・・」

「こんなに綺麗なんだから、教えてあげたいとは思うんだけどね。でも・・・」

「でも?」

中途半端に言葉を切ったを見下ろして、その先を促す。

は未だ色とりどりの花を見詰めたまま、ポツリと呟いた。

「マーテルたちに教えたら、私の居場所がすぐにバレちゃうから」

「・・・見つかるとマズイのか?」

「ここはね。私が1人になりたい時に来る場所なんだよ」

先ほどとは違う力ない笑みを浮かべて、は気まずそうに言う。

「みんなと一緒にいるのも楽しいけど・・・でも、1人になりたい時もあるんだよ」

そう言葉を続けて、繋いでいたクラトスの手を離すと数歩花畑に足を踏み入れる。

感じていた温もりが離れてしまった事に寂しさを感じながらも、それを表情には出さないよう意識しながら、その場に立ち尽くしたままの背中に声を掛けた。

「何故、私をここへ?」

1人になりたい時に訪れる場所。

だから誰にも教えないと言っていたというのに・・・―――では何故、自分をここに連れてきたのだろうかとクラトスは不思議に思う。

するとはクルリと振り返り、にっこりと微笑む。

「クラトスは口が堅いしね。マーテルたちには黙っててくれるでしょう?」

「それは・・・まあ」

「それにね」

出来る限りは・・・と、クラトスはマーテルたちを思い出し心の中で呟く。

曖昧に返事を返したクラトスを見詰めたまま、は今までよりも更に笑みを深くして楽しそうに笑う。

「クラトスにも、見せてあげたかったの。私の一番の場所を」

花畑を背に微笑むを見詰めて、クラトスの心臓が大きく跳ねた。

向けられた言葉を何度も何度も反芻して、途端に顔が熱くなってくるのを感じる。

マーテルたちでさえも知らない、の一番好きな場所。

それを自分だけが知っているという優越感。

自分に見せてあげたいと言ったの綺麗な笑顔に、言葉を返す事も出来ない。

そんなクラトスを見詰めていたは、ゆっくりとクラトスに近づき再びその手を取って花畑の中へと彼を誘導するように歩き出した。

「あそこで見ているよりもね。ここの方がもっと綺麗なのよ」

どんどんと歩みを進め、ほぼ中央の辺りまで来るとその場に腰を下ろす。

そして未だ立ったままのクラトスを見上げて、は隣に座れとばかりに地面をポンポンと軽く叩いた。

促されるままに無言での隣に腰を下ろし、先ほどよりも低くなった視界で花畑を見詰めると、まるで自分がその中に埋もれてしまったような気分になる。

花の香りが、一層強くなった気がした。

「クラトスは花は好き?」

「・・・嫌いではない」

「微妙な答えね。―――まぁ、クラトスが花が好きって即答した方が違和感あるけど」

「悪かったな。・・・・・・お前は花が好きなのか?」

「好きよ」

フワリとした笑顔で即答され、クラトスの心臓が無駄に跳ね上がる。

自分に向けられた言葉ではない事は解りきっているのに・・・―――ただ『好き』という言葉1つでこれほどまでに落ち着かない自分が可笑しくもあった。

「花だけじゃなくて、綺麗なものは何でもね。青々と茂る草木も、太陽から注がれる白い光も、森の中を駆け抜ける風も、全てを浄化する雨も」

「ああ」

「マーテルも、ミトスも、ユアンも・・・みんな優しくて温かくて凄く綺麗。だからとても好きで、何よりも大切。―――クラトスもね」

付け加えられた自分の名前に呆気に取られて、クラトスはを見た。

そこには悪戯っぽく微笑むの表情があって・・・クラトスは自分がからかわれているのだと察して僅かに眉間に皺を寄せる。

「ついでのように言われても、感動も何もありはしないな」

「あはは、ごめんごめん」

拗ねたようなクラトスの口調に、は堪えきれずに噴出する。

それに更に咎めるような視線を向けたクラトスを見返して、浮かべていた笑みを真面目な表情に摩り替えると、噛み締めるようにしっかりとした口調で告げた。

「でも、本当のことよ。クラトスは強くて大きくて温かい心を持ってる。とても綺麗で・・・」

不意に告げられた言葉に、軽く目を見開いてを見る。

途中で途切れた言葉。

けれど続く言葉の先は容易に想像がついて・・・―――それが自惚れではないのだということは、の少し赤味が差した顔を見れば確信できた。

以前自らがに向けた告白の答えは、『きっと』や『たぶん』といった曖昧なもので。

けれどそれはいつしか、の中にしっかりとした想いとなって宿っていたのだろう。

クラトスは無言でに手を伸ばした。

そっと静かに頬に手を当て、自分を見上げるの目を見詰める。

『恋人として、お前との仲は何処まで進展しているのかと聞いたんだ』

不意に先ほどのユアンの問い掛けが脳裏に甦った。

「・・・クラトス?」

一瞬意識が飛んでいたクラトスの耳に、の窺うような声が届く。

我に返ってを見ると、訝しげな表情を浮かべて自分を見上げていた。

「どうかしたの?」

突然のクラトスの行動に、は微かに首を傾げる。―――クラトスが何をしようとしていたのか、マーテルに言わせれば『恋愛経験皆無』であり『そちら方面には疎い』はきっと気付いていないのだろう。

「・・・いや」

「・・・・・・やっぱり、今日の貴方少し可笑しい」

戸惑いながらも言葉を濁したクラトスに、は心配げな声色で呟く。

そんなに苦笑を浮かべて、クラトスは頬に当てていた手をずらして彼女の頭を軽く叩いた。

「そうかもしれんな」

今までそういう事を考えた事が無いとは言わないけれど・・・―――それでも今日の自分はユアンの言葉に焦っていたのかもしれないとクラトスは思う。

まだまだ始まったばかりなのだ。

そんなに急ぐ必要はないと・・・―――こうして自分を大切だと思ってくれたことだけで、幸せを感じる事が出来るのだから。

「・・・大丈夫?」

先ほどから思いつめたような表情を浮かべたり、かと思えば穏やかに微笑んで見せたり。

百面相とまではいかなくとも、普段のクラトスからすればそれに近いほどの表情の変化に、は戸惑ったように声を掛ける。

それに簡単に大丈夫だと返して、おもむろに立ち上がったクラトスは座り込んだままのに手を差し出した。

「そろそろ帰ろう。いくらなんでもマーテルだって諦めた頃だろうからな」

花畑を照らす光は、真昼の白い光から少しだけ赤味を帯びたものに変わりつつある。

日が暮れるにはまだ早いが、そろそろ戻らなくては遅くなってしまうだろう。

は差し出されたクラトスの手を取って立ち上がると、服についた花びらを手で払って何か考え込むように繋がれた手を見詰めた。

そして1つ納得したように頷くと、どうしたのだろうかと訝しげな表情を浮かべ問おうとしたクラトスを見上げて、少しだけ背伸びをする。

フワリと鼻腔をくすぐる花の香りと、眼前に迫ったの顔。―――そして頬に感じた柔らかな感触に、一瞬何が起きたのか解らず呆然とするクラトスは、次の瞬間全てを察して身体を強張らせ顔を赤く染め上げた。

「なっ!?」

咄嗟に言葉にならない声を上げると、は満足そうに微笑む。

「マーテルが言ってたのよね」

「な、何をだ!?」

「クラトスに元気がなかったら、こうしてあげなさいって。きっと元気になるわよって」

ただ頬を押さえて赤くなった顔を晒すクラトスににっこりと綺麗な笑顔を浮かべて、は何も言えずに呆然と立ち尽くす彼に背中を向けて歩き出した。

数歩歩いて振り返る。

「ほら、何してるの?帰るんでしょう?」

何事もなかったかのような振る舞いに、ますますクラトスは混乱した。

解ってやっているのか、それとも解っていないのか。

確信犯のような気もするし、そうでないような気もする。

笑顔を浮かべるから、それを察する事はクラトスには難しかった。

それでもしっかりとこちらの心情は読み取られているような気がして、クラトスは大きくため息を吐き出し脱力する。

再び名前を呼ばれ、ため息と共に込み上げてきた笑みを何とか堪えて。

ここで起きたことを、マーテルやユアンに知られないよう気をつけなければならないなと心に堅く誓って、先を歩くの後を早足で追いかけた。

 

 

家を飛び出して行く前と違うクラトスの表情に、マーテルとユアンが気付かない筈もなく。

帰ればすぐにばれてしまう事など、今のクラトスには知る由もなかった。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

これは果たして甘いと言えるのだろうか?(聞くな)

なんかクラトスがヘタレてる気が・・・って何時ものことですか。

そしてやっぱり無駄話が多くて、だらだらと長くなってしまいました。

もうちょっと簡潔に纏めたいとは思っているんですが・・・。(思ってるだけじゃね)

ヒロインが確信犯かそうでないかは、好きに解釈してください。(笑)

作成日 2004.12.5

更新日 2009.1.28

 

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