「さてと・・・それじゃあ、サイバックに行くか」

「ちょっと待って」

コレットが正気を取り戻したばかりだという事もあり、フウジ山岳近くの救いの小屋で身体を休めた一行は、翌日漸くケイトとの約束を果たす為にとサイバック行きを決める。

しかしそんなロイドの言葉に待ったを掛けたのは、難しい顔をして何かを考え込んでいるだった。

「なんだよ。どうかしたのか?」

不思議そうに首を傾げるロイドに視線を向けて、は困ったように肩を竦める。

「そう簡単に、サイバックには行けそうも無いわよ」

ただ一言そう告げて、は救いの小屋の前に設置された掲示板を指差す。

それに引かれるようにして掲示板を見たロイド達は、同時に声を上げた。

「・・・あ」

 

指名手配犯の憂鬱

 

「それにしても、ずいぶんと凶悪に描かれたもんだね」

ともかく何時までもジッとしていても仕方がないと、一行は救いの小屋を出発しメルトキオ・サイバック方面へと歩みを進めていた。

その道すがら、が指差した掲示板に張られてあった一枚の紙を引っぺがして来たしいなが、その紙を眺めながら呆れたような声を吐き出す。

そんなしいなに、隣に並んで歩いていたがクスクスと笑みを零した。

「でも、私はいつかこうなるんじゃないかって思ってたわ」

もかい?実はあたしもずっとそう思ってたんだよ!」

「やっぱり?まぁ、私が予想してた原因とは大分違うけど・・・」

「あたしもだよ。あたしゃてっきり・・・」

「・・・お前らなぁ」

顔を見合わせて笑い、意味ありげに言葉を切って視線を投げかけるとしいなに向かい、ゼロスは恨めしげに声を上げた。

だってねぇ・・・と呟きながら、しいなは手に持っていた一枚の紙をゼロスの眼前に突きつける。

そこに描かれていたのは、鮮やかな赤い髪の青年。

テセアラでは知らぬものはいないだろうほど有名なゼロス=ワイルダーの、お世辞にも上手いとは言えない手配書だった。

「なんだよ!俺様はもっと美男子だっつーの!!」

突きつけられた手配書をくしゃくしゃに丸めると、不貞腐れたようにそっぽを向く。

そんな子供のような態度に、2人の笑みは止まる事がなかった。

「でもよ、これからどうするんだ?の予想じゃ、橋にも検問があるって・・・」

じゃれ合う3人の後ろから、ロイドが困り果てたと言わんばかりの声色で問い掛ける。

それに首だけで振り返って、は肯定を示した。

「ま、当然でしょうね。王宮騎士たちはともかく、教皇がこんな好機を逃すとは思えないもの。100%、橋には教皇騎士団の騎士たちが張っている筈よ」

断定的な言葉に、ロイドとジーニアスは顔を見合わせて溜息を吐き出す。

今回のことに関しては、ジーニアスも嫌味を言うのは憚られるようだ。―――何せゼロスが手配されるきっかけは自分たちにあるのだから。

それにしても・・・どうして手配書に描かれる人相は、あんなにも本人とは似ても似つかないものばかりなのだろう。

今回のゼロスの手配書に関しても、庇うわけではなかったが本人に似ているとは到底思えないほど酷い出来栄えだった。

それでもその手配書を見てちゃんと本人を見つけられるのだから、ある意味奇跡だ。

ロイドはかつて出回った自分の手配書を思い出し、遠い目をする。

そんなロイドの変化に気付いたコレットが、大丈夫〜?とロイドの顔の前で手を振っているのを横目に、リフィルが少し前を歩くの側まで早足で追いつき声を掛けた。

「ならば、どうするというの?この世界のことは貴女たちの方が詳しいのだから、何か良い案を思いついたりは・・・」

「・・・ない事もないケド」

リフィルの問いに答えたのは、ではなくしいなだった。

何気なく呟いた言葉はしっかりとリフィルに拾い上げられ、途端に視線が向けられた事にしいなは思わず身を引く。

「あるのね?どんな方法?」

「どんなって言われても・・・」

勢い良く身を乗り出すリフィルに、明らかに腰が引けているしいな。

しかし橋が封鎖されている以上他に良い案が思い当たらなかった為、しいなは意を決して恐る恐る口を開いた。

「メルトキオにある精霊研究所に行ってみれば、何とかなるかもしれない。あそこは色んな研究をしてるし、知り合いもいるからね」

「・・・メルトキオ」

しいなの話に出てきた地名を、リフィルは繰り返して呟く。

メルトキオは、今いる場所とグランテセアラブリッジとのほぼ中間にある。

向かっている方向も同じだし、何より今いる場所と同じ大陸だ。―――その場所へ行くための方法を考えなくとも良い。

なんとも好都合だと納得した後、しかしはたと我に返ってに視線を送る。

その視線の意味を正しく理解し、はまたもや肩を竦めてサラリと現実を告げた。

「もちろん、メルトキオにも入れないと思うわよ」

「・・・やっぱり」

「一応テセアラの首都なんだし、何処の街よりも警戒は厳重だからね」

のこのこと出て行けば速攻で捕まるわよと念を押されて、リフィルは重いため息を吐いた。

なんなら捕まってメルトキオの中に入ってから逃げれば・・・とまで考えたが、そんな危ない橋を渡るほどリフィルは冷静さを失ってはいない。

「まさに、八方塞ね」

溜息混じりに吐き出されたリフィルの言葉に、しかし今まで大人しく話を聞いていたゼロスは含み笑いを浮かべた。

「ふっふっふ、とうとう俺様の出番だな」

ニヤリと口角を上げて、更には顎に手を当てて自信有り気に呟く。

「なに言ってんの。一体誰が手配されてると思ってる訳?ああ、それともあんたが囮になってくれるとか?うわ〜、ありがたいわ〜」

「誰もんな事言ってねぇだろーが」

あからさまな棒読みで呟くに、横槍を入れられたゼロスが呆れたように返す。

そして再度気を取り直して、ゼロスはに向かい人差し指を立ててにんまりと笑った。

「ほら、あそこだよ、あそこ。あそこならぜってー、バレっこねぇし・・・」

「・・・あそこ?・・・・・・ああ、あそこか」

「あそこってどこだい?」

抽象的な言い回しではあるがしっかりとその意味が通じているに、しいなは小さく首を傾げて問い掛けた。

長く一緒にいるのに自分だけその意味が解らない事に少し不満ではあるけれど、それ以上にとゼロスはセットと言われても可笑しくないほど共にいたので、それも仕方ないのかもしれないと思う。

本人たちに言えば、護衛だから仕方がないと即座に反論されそうだが・・・。

しいなの問いに、ゼロスは足を止めクルリと振り返る。

その背中越しに、メルトキオの街が小さく見えた。

「ま、俺様に任せとけって!とっときの抜け道教えてやるからさ」

にんまりと笑ったゼロスに対して、の表情がどこか憂鬱そうに見えたのに一同は微かな不安を抱いたけれど、上機嫌なゼロスを前にただ頷く他なかった。

 

 

「・・・で、此処が貴方の言う『とっときの抜け道』?」

「そ!ここならぜってー、見張りはいないぜ〜」

「確かに見張りはいないだろうけどさ・・・」

セイジ姉弟に呆れたような視線を向けられているのも気にせず、ゼロスは得意げに笑って見せる。

メルトキオに着いてからゼロスによって案内されたのは、城門から離れた場所にある茂みの中。―――そしてそこにひっそりと存在する、下水通路。

一部分の鉄格子が壊されており、そこから中に入れそうだ。

確かにゼロスの言う通り、こんな所に教皇が見張りを置くとは思えなかった。―――そもそもこんな所から出入りしようなどと考える者が、メルトキオにいるとも思えない。

そして出来れば足を踏み入れたくはない場所でもあった。

何故が憂鬱そうな顔をしていたのかを今漸く察したロイド達は、お互い顔を見合わせて困ったように眉を寄せる。

出来れば足を踏み入れたくはないが、メルトキオに入る為にはこれしか方法がないだろうことも事実。

「ほらほら、さっさと行くぞ〜」

怯む事無く下水通路に入っていくゼロスと溜息を零しつつもそれに続くに、ロイド達も意を決して中へと足を踏み入れた。

その途端に鼻につく異臭。

思わず顔を顰めて手で口元を覆うが、そんな事で阻めるほど生易しい匂いではない。

「大丈夫か、コレット?」

「う、うん、なんとか〜」

心配かけまいと苦笑を浮かべるが、しかしその顔色は少し悪い。―――薄暗い地下通路でそれを確認されないだろう事だけは安堵した。

「それにしても・・・あんたたちいつの間にこんな所使ってたんだい?」

慣れた様子でさっさと先に進むゼロスとの背中に向かい、しいなも同じく口に手を当てながらそう問い掛ける。

その際、変わらずに手を引かれているプレセアの口元に、のハンカチが巻かれている事に気付いた。

「ああ?え〜っと、かなり前からだな。ほら、メルトキオの城門って安全の為っつって夕方には閉められるだろ?だからその時にちょっとな・・・」

もかい?」

「私は護衛だからって、無理矢理連れて行かれてたのよ」

向けられた問いに、は即座に返した。

「でひゃひゃ!ま、所謂臭い仲っつーの?」

「嫌な例え方しないでよ」

下品な笑い声を響かせるゼロスを、は半目で睨みつけた。

しいなはそんな2人を見比べて、思わず溜息を零す。

たったそれだけの為に、この凄まじい異臭を放つ下水通路を利用しようとするとは。

テセアラでもトップの貴族がする事とは思えない・・・としいなは呆れ混じりに思う。

道楽に手間は惜しまないというところに関しては、貴族らしいとは思ったけれど。

「ホント・・・夜遊びに付き合わされる私は、いい迷惑だわ」

「んな事言って、ちゃんだって楽しんでただろ〜?」

「・・・・・・」

漏らした愚痴にゼロスが楽しそうな声色で返す。―――それに対して黙り込んだから察して、意外に楽しんでいたのかもしれないとしいなは思い直した。

まぁ、夜遊び云々はともかくとして、この下水通路にはも辟易していただろう事は今の彼女の表情を見れば一目瞭然だ。

それでもはそんなゼロスのお願いを拒否出来ないほど、彼に甘いのだという事もしいなは知っていた。

どんな嫌味を口にしようとも、最後にはそのお願いを聞き入れてしまう。

にとってゼロスがどんな存在なのかはしいなにも解らないけれど、彼の為に異世界へと向かう程には大切な人だという事だ。

それはしいなにも当てはまるのだという事に、彼女自身は気付いていないが・・・。

「何処まで続くんだよ、この下水通路・・・」

「そのうち着くわよ。黙って歩かないと、匂いが口にまで入ってきちゃうわよ」

「・・・・・・うっ!!」

の忠告も既に遅く、口の中に広がった苦い匂いにロイドは気持ち悪そうに口元を押さえる。

ロイド、大丈夫〜?と騒ぐコレットを横目に、は重い溜息を零した。

 

 

暫く経てば、匂いにも大分慣れて来る。

その実嗅覚が麻痺しただけなのかもしれないけれど、少しでもこの異臭が治まるのならば好都合だ。

入り組んだ下水通路をひたすら歩き続け、上に続く長い階段が見え始めた頃ゼロスは漸く足を止めてロイド達を振り返った。

「この階段を上がれば、無事メルトキオだ」

「・・・やっと」

息も絶え絶えに呟くジーニアスに苦笑を漏らして、ゼロスは出口に向けて再び歩き出す。

しかしそれを遮るように、階段の上から数人の男たちが降って来た。

突然の登場に、一行は思わず足を止めて呆然とそちらを見やる。―――立ちはだかる男たちは、一様に鋭い眼差しでゼロスたちを見据えていた。

「神子暗殺の命を受けて来た」

「・・・神子暗殺?」

ゼロスの後ろから、は立ちはだかる男たちを見た。

ボロキレのような服と、それぞれの手を拘束している手枷。

一見しただけで解る。―――間違いなく何らかの罪を犯して捕らえられた囚人たちだ。

「神子ってどっちの?」

「どっちでも構わねぇだろ?どの道ここで全員あの世行きなんだからな」

見下したようにせせら笑う囚人たちに、は呆れた眼差しを向けた。

人数から見てもそうだが、このメンバーを相手にたかが囚人が勝てるとでも思っているのか。

ずいぶんとオメデタイ頭をしていると毒づきながらも、しかし情報を集めるために無言で男たちの会話に耳を傾ける。

どうやらこの囚人たちは、教皇の差し金のようだ。―――下水通路など気付かないだろうと思っていたのだが、どうやら向こうの方が一枚上手らしい。

詰めは甘いが。

御託を並べ終えた囚人たちは、呆れた視線を向けるたちに気付く様子もなく、自分たちの勝利に疑いなど感じず襲い掛かった。

しかし勝敗は戦う前から見えていたのだ。

数分も経たない内に囚人たちは全て返り討ちに遭い、情けなくも地べたに伏していた。

「おいおい、なんだよ。なさけねーなぁ」

あざ笑うかのようにゼロスは笑みを口元に浮かべ、倒れた囚人たちに近づく。

抜いていた剣を逆手で構えて、それを囚人の頭上で固定した。

「お、おい!ゼロス!!」

「なんだよ、ハニー。こいつらこのまま放っとく気?んなことしたら、俺らがメルトキオにいるのがバレちまうだろ?」

最もな言い分に、ロイドは思わず口を噤む。

何も殺さなくても・・・と言いたいが、メルトキオに侵入した事がバレれば仲間も自分も危ない。

それを悟り何も言えなくなったロイドを見てゼロスはニヤリと笑うと、構えた剣を囚人に向かい振り下ろ・・・そうとしたのだが、その行動は再び階段の上から飛び降りてきた1人の男によって遮られた。

「どわあっ!!」

背中に強い衝撃を感じ、地べたに倒れる囚人たちと同じように押さえつけられる。

何事だと顔を上げると、自分の上に屈強な肉体の男が圧し掛かっていた。

「な、なんだぁ!?」

「彼らに止めを刺すのは勘弁してもらいたい」

低い声色でそう告げる男は、更にゼロスに体重を乗せてロイド達を見据えた。

聞き入れられないのならば、ゼロスもただではすまないとその目が語っている。

「ゼロスのドジ!そんな簡単に背中取られて!!」

「うっせーな!いきなりだったんだから仕方ねーだろ!?」

弾かれたように声を上げるジーニアスに、ゼロスも即座に言い返す。

「というか、放っといても大丈夫なんじゃなくて?」

「まぁ、あのゼロスだからねぇ・・・」

「殺しても死にそうにないし」

「おいおいおい、お前ら!」

好き勝手なことを言う仲間たちに、ゼロスが悲痛な声を上げた。

しかし青い髪の囚人兵は警戒を怠る事無く、一行を見詰めている。―――ロイド達が口にする言葉に反して、気を緩めていない事を察していたからだ。

「・・・ねぇ、貴方」

そんな緊張感があるのかないのか解らない雰囲気が漂う場に、訝しげな声が響いた。

声を発したは警戒する様子もなく、一歩男とゼロスに近づく。

「近づくな。神子がどうなっても・・・」

「貴方、どこかで会った事ない?」

の問いに、男がピクリと反応を見せた。

男は窺うようにを凝視する。―――同じように男を凝視していたは、思い当たったのかポンと軽く手を叩いて驚きの声を上げる。

「ああ!貴方、前に闘技場で戦った・・・」

「闘技場?・・・・・・っ!!お前はあの時の・・・」

男の方も心当たりがあったのか、目を見開いてを見詰めた。

「・・・知り合いなの?」

「前に闘技場に無理矢理出場させられた事があったんだけど、その時の対戦相手が彼だったのよ」

まるで久しぶりに再会する友人を相手にするようなの態度に、ロイド達の緊張も少しだけ解れる。

「彼は強いわよ。あんまり気軽に相手にしたくない人物ではあるわね・・・」

しみじみと呟くにつられて、ロイド達も先ほどより幾分かは和らいだ眼差しで男を見詰めた。

ゼロスが人質に取られているというのに、そんな呑気な・・・と心の中で思いながらも、彼の護衛であるが大して慌てていない為戦意を殺がれる。

自身は、男がゼロスに危害を加えるつもりが無い事が解っていた。

かつて束の間ではあるけれど合い間見え、そして剣を合わせたのだ。―――それだけで相手がどういう人物なのかという事はおのずと見えてくる。

それでも素直に退いてくれるかどうかは解らない。

ゼロスには危害を加えなくとも、コレットにはどうかは解らなかった。

この状況をどうするかをが表情には出さずに考え出したその時、の隣にいたプレセアが唐突に前へと飛び出す。

そうして両手でしっかりと握った斧を、男に向かって横に薙いだ。

「・・・っ!!」

「うわ!あ、あぶねっ!!」

突然の攻撃に男はゼロスの上から飛びのき、そして間近で斧が振られるのを見たゼロスは思わず悲鳴を上げた。

すぐに身を起こして、ゼロスはたちの方へと戻ってくる。

「プレセアちゃん・・・助けてくれるのは嬉しいけど、ちょっと過激っつーか・・・」

冷や汗を流しながら控えめに抗議の声を上げるゼロスに、しかしプレセアは何も言わずに再び斧を構えて男に向き直る。

男も同じように構えてプレセアと向き合い・・・―――そして瞬時に固まった。

「・・・・・・」

「・・・まさか、そんな馬鹿な」

呆然とプレセアを見詰めて何事かを呟く男に、一同は揃って首を傾げる。

一体どうしたというのだろうかとお互い顔を見合わせたその時、今まで戦意を見せていた男が即座にそれを消してプレセアから一歩距離を取った。

「今日は、こちらが引かせてもらう」

それだけを告げ、怪我を負った囚人たちを引き連れて来た時と同じように唐突にその場から姿を消した。

「・・・なんだったんだ、一体?」

「・・・さあ?」

呆然としたまま呟くロイドに、ジーニアスも同じようにただ返事を返した。

 

 

その後は何事も無く、無事に下水通路を抜けメルトキオに辿り着いた。

数時間ぶりに吸う綺麗な空気に思わずホッとして、出て来たマンホールの側に脱力したように座り込む。

「何時までもここにいれば、すぐに見つかっちゃうわよ」

「・・・解ってるよ」

に促され、手を引かれて立ち上がったロイドは、そのまま視線をしいなに向ける。

「んで、精霊研究所ってのはどこにあるんだ?」

「街の外れだよ。あたしが案内する」

そう言い、しいなは辺りに気を配りつつ慎重に足を踏み出した。

そんな歩き方してれば却って怪しいと思うけど・・・とは思ったが、さすがみずほの里の忍だけあり、完璧に気配を殺している。

勿論ロイド達はそんな真似は出来ないので、普通について行っているが・・・。

賑やかな街の中を、一行は精霊研究所に向けて歩き出す。

指名手配犯だというのに、一向に気付かれる様子はない。―――やはり人を隠すのは人ごみの中、だ。

歩きながら、は隣にいるプレセアを見下ろす。

あの囚人兵の様子からして、彼がプレセアについて何かを知っているのは間違いないだろう。

プレセアに囚人兵の知り合いがいるとは、想像もつかなかったけれど。

の視線に気付いたのか、プレセアが顔を上げた。

ジッと注がれる感情の見えない眼差しに、はただ笑みを浮かべて。

「・・・ゼロスを助けてくれてありがとう、プレセア」

呟いた言葉に微かに首を振るプレセアに微笑んで、は感謝の気持ちを手に込めて優しくプレセアの頭を撫でた。

 

 

◆どうでもいい戯言◆

リーガル(微妙に)登場。

もうちょっと絡ませたいところだったんですが、予想以上に長くなったのであっさり風味で。(笑)

なんか最初に比べて断然人数が増えたので、それぞれに反応を返させようとするとえらい大変なことに・・・。(所詮は文章力の問題)

作成日 2004.11.18

更新日 2010.6.6

 

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